イヴィツァ・オシムのインタビュー記事
9月1日付けのSportske Novosti紙にジェフユナイテッド市原・千葉のイヴィツァ・オシム監督のインタビューがありました。今回はミルコの取材に訪れた当紙記者が現地で直接インタビューしたこともあって、駅で切符を買うオシムの姿(写真)が掲載されました。毎度のこと興味深いインタビューですので、翻訳紹介します。
-既に日本の生活は3年目になるわけだが。
「我々の国の人々はいつもお金を通して全てを見てしまう傾向がある。私は違う。日本に来たのは金銭面が動機になったのではない。私は意地から日本に来たわけであり、頑固さから日本に来たんだ。詳細を語るのは重要ではないが、私の内面にはある不安やプライベートな事柄が問題となった。だからまず自問自答した。"イヴィツァ、ここで何がしたいんだ? しかしもうここにいるんだから、ほら働けよ"。1年、そして1年が経ち、もうここで3年目だ。」
-日本には妻のアシムとコーチである息子のアマルがいるが、しかし...
「ここは遠い、余りにも遠い。祖国で何が起こっているかはインターネットを見ながら情報を追っている。しかし、我々が口にするような天国が私にはない。それが欠けている。人生は終わりに近づき、友人を少しずつ失っているところで、世界の果てにいたら力不足を感じるだろう。時々は電話を掛けてはみるが、それはもっと悪いことだ。声は聞こえるが姿は見れない、まるで私が盲目のように感じてしまう。妻は私以上に辛いだろう。アマルと私は働いており、トレーニングに行って帰って毎日150km移動している。そこで一日、一週間を費やしている。しかし彼女は一人寂しく過ごしているわけだからね。」
-故郷に戻ることをしばしば考えたりするか?
「ああ、私の戻る家がどこか判ったならばね....」
-オファーが数あるのに、決して旧ユーゴ諸国のチームを率いないという首尾一貫した姿勢を見せたわけだが。
「それに関してコメントはないよ。何も言わないことで十分だ。人々は全て理解することだろう。私は自分の内面に個人的な戦争を抱えている。祖国で起こったことは概して私を失望させた。人々が信じて傾倒する右翼にも左翼のどちらにも私は囚われることはない。」
-日本のサッカーは?
「日本はクロアチア、スロベニア、オーストリアより上のランクに位置している。サッカーを知っていると思っている人達には非常に不愉快だろうがね。全てのベースに走力があり、走力がなければ何もないと同じだ。君達に例えれば、ジャーナリストになりたいとしても書くことを学んでなかったようなもの。非常によく走る。規律については話す必要がないだろう。」
-ジェフユナイテッドは?
「組織されたクラブだ。選手は黙って働く。脱線することはない。誰かに怒鳴り声を上げたい衝動に思いっきり駆られるのだが、それが楽しみの一つであるにも関わらず、怒鳴り声を挙げる対象が無い。それが私には不愉快かな。
トレーニングで選手達は時速200kmの勢いで行い、少なくとも10枚のレッドカードが出るようなタックルをする。そこで抗議などなく、手を差し出してトレーニングは続く。祖国で同じことがあったとしたら選手間で何が起こるかなんて想像したくもないよ。私は選手をトレーニングから追い払わなくてならない。出場機会を得られずにアピールしたい選手だけに言えるのではなく、レギュラーの選手もそうだからね。私が慣れるのには時間が掛かったよ...。」
-日本の完全主義はストレスとなるでは?
「私にはプレッシャーが必要だ。でなければ私は働くことが出来ない。それに伴う症状を次第に感じて、心臓の辺りが痛む。でも検査に行けば問題は出ない。まるで一晩中歯が痛くて、朝に歯医者に行って診察室に入ると痛みが止まるようなものだよ。」
-日本のジャーナリストやサポーターとはどんな関係を築いている?
「新聞は読まないから判らない。サポーターは感じが良くて純真だ。得点を食らったときでさえ拍手をする。しかし信じがたいほど忠誠心があり、アウェーでも5000人ものサポーターが我々をサポートしてくれる。」
-クロアチアがワールドカップに出場する見込みは?
「クロアチアがドイツ大会に行けなくなるには、何が起こる必要があればいいか判らないほどだ。最悪のケースでも、グループリーグ2位のうちでも強い方の4ヶ国の一つとなるだろう。」
-他の旧ユーゴ諸国は?
「スロベニアはノルウェーに勝たねばならない。イタリアに勝てたんだったら、ノルウェーにも勝てるはずだ。セルビア・モンテネグロはスペインとの争いだ。ボスニア・ヘルツェゴビナ? ボスニアはあくまでボスニアだ。あそこでの全てと同じことが、サッカーでも言えよう。」
-願望、ビジョン、プランなどを。
「当の昔に私の願望など過ぎ去ってしまい、先のプランもない。しかしモチベーションはある。しばしば休暇について考える瞬間が増えているとはいえね。今なら喜んでアドリア海に行って、海水浴を楽しみ、イチジクを食べることだろう。しかしイチジクの季節が終わったらどうするんだね。秋が来て、また私は何か働きたくなるだろう。私はサッカーの奴隷だ。だから携帯電話を持つことはしない。携帯電話は私にとって更に別の奴隷状態になるだろうからね....」
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コメント
オシムの言葉がいつも深く感じるのはなぜだろう?
投稿: chabo | 2005年9月 2日 (金) 22時09分
多分、人間として普通の事しか語らないからじゃないかと思う。
詩人だとは思うけど。
投稿: | 2005年9月 2日 (金) 23時04分
大変興味深く読ませていただきました。いつもながらオシム監督の発言の一つ一つに深さと重さを感じます。TBしましたのでよろしくお願いします。
投稿: J.D. | 2005年9月 2日 (金) 23時46分
TBをしてくれた皆様、コメントをしてくれた皆様、どうも有難うございました。
7月のブログ開設以来、普段のヒット数が200~300/日ぐらいなのですが、この記事を載せた一日で1万件というのはビックリしました。
投稿: 長束恭行 | 2005年9月 4日 (日) 09時57分
オシムインタ記事訳ありがとうございました。
遅ればせながらTBさせていただきました。
記事を載せた1日だけで1万件のアクセスというのはすごいですね。
投稿: チコ ベルッチ | 2005年9月 6日 (火) 19時24分
クロアチアと日本が同じグループになってしましましたね。もう一度オシムのコメントが聞きたいものです。
投稿: JFK | 2005年12月11日 (日) 22時53分