宮本のディナモ移籍話の真実とは?
日ごろニュースを追われている方は、日本の幾つかのスポーツ紙が「ディナモ・ザグレブが宮本獲りへ」と報道しているのをご存知でしょう。実はこれにはウラがあります。以前に"記事は一人歩きする"という話を書きましたが(その1、その2)、今回は新たなパターンでありますので真実をお伝えしましょう。
ことの発端は2月21日です。テレビの取材コーディネートの仕事で私はディナモ・ザグレブのスタジアム隣接の事務所を訪れました。ある選手のインタビューをするために事務所のカフェで待っていたところ、ディナモの実権を握るズドラヴコ・マミッチ副会長とスポルツケ・ノヴォスティ紙のオリヴァーリ記者が前節の疑惑のPKに関して話し合っていました。マミッチ氏とは4年前の取材から面識があり、私を見つけるやいなや笑顔で「宮本を獲得するとどうなるかい?」と聞いてきました。
2月7日にアンタルヤでジェフユナイテッド千葉とディナモ・ザグレブが練習試合で対戦した夜、マミッチ氏とイヴィツァ・オシムとヨシップ・クジェの両監督が同席。二人は日本代表のキャプテンである宮本の実力の高さを副会長に説明し、ディナモが関心を示したのは2月11日のブログでも紹介しています。
私はマミッチ氏に「きっと移籍金は高いですよ。でも宮本を獲得したらファンの日本女性がいっぱい来るだろうし、ユニフォームは売れるでしょうね」と返事をしておきました。マミッチ氏は「クロアチア語が判るお前も一緒に加わって、このビジネスを成功させようか」なんて冗談っぽい口調で肩を叩いて去っていきました。
この遣り取りを聞いていたオリヴァーリ記者は翌日の22日のスポルツケ・ノヴォスティ紙に「ディナモが宮本を狙っている」との記事(写真)を書きます。私たちが事務所を去った時に、マミッチ氏は記者に対して「宮本は私たちのヨシップ・クジェが開花させた。素晴らしいサッカー選手であると聞いている。移籍期間の夏に彼を獲得する可能性はある。ヨーロッパに行きたがっているからね」と語ったなんて記事が掲載されました。またその中では「日本のジャーナリストが"宮本獲得は素晴らしい考えだ。彼の選手のクオリティだけでなく、サッカー狂の日本人達が多くクロアチアを訪れ、マーケティング面でも観光面でもいいだろう"と言った」と膨らまされて書かれてしまいました....。その記事をある日本のスポーツ紙のクロアチア通信員が翻訳し、日本でも報道されることとなりました。
更に続きます。23日のスポルツケ・ノヴォスティ紙は宮本獲得に関して、ガンバの元チームメートのFWニーノ・ブーレのインタビューを掲載しました。
「日本人獲得に関してはいつもマーケティング面の話は出てくる。もちろんディナモでの宮本もそうだろう。日本人がスタジアムに訪れ、彼の名前の入ったユニフォームがたくさん売れるはずだ。しかし宮本はマーケティング・ブランドだけに終わらない。彼は本当に素晴らしいティフェンダーだ。何年間も日本代表のキャプテンを務めているのは偶然ではないからね。また彼は素晴らしい青年だし、本当の友人だ。ガンバで初起用したクゼ監督も彼のクオリティは良く知っている。」
とコメント。これも今度は別の日本のスポーツ紙のクロアチア通信員が記事だけ読んで翻訳し、また日本で報道されてしまいます。
ことは更にエスカレート。24日のスポルツケ・ノヴォスティ紙は宮本本人に英語で電話インタビューに成功します。ワールドカップ抽選会後に、ブーレから電話番号を聞いた同紙のダソヴィッチ記者が彼に質問をしました。
「インターネットでその記事(ディナモが獲得の意向)を読んだよ。驚いたかって? いや。誰がディナモの監督か知っているしね。ヨシップ・クジェは私のことを良く知っているから....。
私にとっては可能な話だよ。なぜならヨーロッパに行きたいからね。しかしガンバとはまだ一年の契約が残っているし、両クラブが話し合わなければならない。私に関していえば喜んでディナモに行くよ。ディナモについては少しか知らないが、クロアチアで最高のクラブだとみている。また私がディナモで最初の日本人でないことは知っている。なぜなら三浦知良選手がいたからね。」
との記事が掲載されました。これもどこかの通信員が事情を知らずに翻訳して日本で報道されるかは今日のスポーツ紙を開いて下さい。ガンバ側はインタビューの存在を否定したようですけど、クロアチアでは選手への電話インタビューはよくあることです。
ちなみに25日のスポルツケ・ノヴォスティ紙には宮本の記事は掲載されていませんでした。クロアチアでの記事の一人歩きはここでストップ。果たして宮本は本当にディナモに来るのでしょうか???
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