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2006年3月19日 (日)

イヴィツァ・オシム、W杯を語る

スポルツケ・ノヴォスティ紙が今週発売した「W杯ガイドブック」に、ジェフユナイテッド千葉のイヴィツァ・オシム監督のワールドカップ評が掲載されました(写真)。
スポーツ報知に一部が報道されましたが(http://www.yomiuri.co.jp/hochi/soccer/mar/o20060317_50.htm)、ここでは全文を紹介しようと思います。

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P1090684 サッカー選手はその昔、ワールドカップのために生きていた。地球上のサッカーの祭典は、世界が4年間に渡って準備した特別で力強い挑戦の場であった。しかし、今日ではサッカーライフは根本から変わってしまった。欧州そして世界のクラブの王冠というべきチャンピオンズ・リーグはワールドカップよりもレベルの高い大会となり、毎年開催される上にメディアがしっかり放映することによってビッグマネーが飛び交っている。ワールドカップにとっては大きな危険だ。

ワールドカップの年になると、どの代表監督も「どうやってレギュラー陣の問題を解決するか」という苦しみと共に生きることとなる。選手達の90%は(ワールドカップ出場が)明らかである。つまり11人のレギュラー陣のうち9人から9人半は計算できる。けれども選手達はクラブが生活の糧であり、代表が生活の糧ではない。どうやってワールドカップまでの時間を選手達が安全に過ごせるかが大きな問題だ。ワールドカップの大きな挑戦のために自らをセーブできるのか、それとも雇い主のためにプレーして全てのエネルギーを使い切るのか? 
そのような問題は2002年ワールドカップのフランスに起こった。彼らは搾取された状態でやってきた。その問題はダド・プルショにも起こっている。クロアチア代表以前にレンジャースが彼を搾取することを望んでいる。
バルセロナが年間の全ての目標を狙いに行った時、つまりチャンピオンズリーグ、クラブ世界選手権、リーガエスパニョーラを制覇しようとするならば、次のような問題が出てくるだろう。「選手達は更に代表のために力を出すことができるのか」ってね。

ワールドカップの現時点でのトレンドは人生と同じだ。トレンドは勝利であり、成功である。しかし、どのように成功まで至るかについては誰も聞かない。チームにプレーと知識とパワーを結びつけることに成功したものが勝利する。そのようなフォーマットのもと、次のようなサッカー選手がチームの土台となる。背が高く、パワーがあって、プレーと闘争、そして戦争の準備が出来ているサッカー選手だ。今日成功しているチームの多くの構成は非常に似ている。クラブと代表の多くがドログバやトニのような背の高いFWを一人置き、それを周囲に攻撃的なプレーを形成するというもの。唯一、バルセロナだけが現時点で異なる。

どのように勝利するかの方法を懸命に追求する監督達(=薬剤師)のトレンドは、できるかぎりリスクを少なくすることだ。リスクが0%になる可能性を求めている。魔法の処方まで辿り着くために努力が費やされたことは、全くもって理解できる。誰かがミスを犯す権利を持つためには、余りにも多くのお金がサッカー界で動いているからだ。しかし、もしリスクがないならば、どこにプレーがあるというんだね? もし全員がリスクの限界をゼロまで近づけたいのならば、サッカーには何があるというんだね? リスクのないサッカーは本当に退屈となるだろう。まるで野球のようにね。それは破滅的なことだ。

ワールドカップの本命はいつも同じだ。ブラジル、オランダ、イタリア、アルゼンチン、ドイツ.....。けれども、彼らも大きな注意を払わなければならないよ。なぜならクロアチア、チェコ、コートジボアール、メキシコ、エクアドルのようなチームが、一回だけ一流のセンセーショナルを起こせる準備をいつもしており、その力も充分に持っているからだ。

人々はアーティストを待ち焦がれてきたし、ロナウジーニョみたいな選手がもっと出てくることを望んでいる。ロナウジーニョは本当に輝いており、サッカーが数字や戦術に余りにも行き過ぎている時代で人々をリフレッシュさせる存在だ。しかし誰もライカールトへ彼について尋問しない。ロナウジーニョは代表とクラブで最高のカテゴリーに属し、自分が好きなようにプレーでき、誰からも口出しされない唯一の選手だ。このような選手がもっといれば良いんだろうけどね。けれどもロナウジーニョはパリ(PSJ)でも同じように才能があったのに、バルセロナのようなプレーはしなかった。彼は周囲の選手によるということは明らかだよ。

クロアチアが入ったグループは非常に興味深い。ブラジルはブラジル。しかしクロアチアはグループ2位の本命という立場からどうしても逃げることはできないだろう。それは良きにつけ悪しにつけね。クラニチャールのチームはどんな相手でも倒すことができる。本当にどんな相手もだ。彼らの最大の武器は鉄壁な守備陣にある。クロアチアから得点を奪うことは難しいし、ディフェンスはコンクリートのようだ。それが結果のベースとなっている。しかしその他の全てのベースはプルショとスルナの個人技によるもの。個々のボールキープは長すぎるし、プレーには流れがない。クロアチアで最もコレクティブな選手であるクラスニッチが苦しむ理由はまさにそこにある。しかし誰もクラスニッチに続こうとしない。

オーストラリア人に何をしなければならないか語る必要はないだろう。オーストラリアのサッカーをするのか本当のサッカーをするのかは判らないとはいえ、またプレーは無骨に見えるとはいえ、彼らは非常に危険な存在だ。多くはイングランドでプレーしているからね。日本には劣勢の立場の方が力を発揮するだろう。プレーに関していえばブラジルのスタイルにもっとも近い。それはブラジルのコーチ陣の大きな影響があった結果だ。とはいえ、最高の教師達がいるが一つのことだけを学ぶことができない。彼らのうち誰も責任を引き受けたがらないことだ。

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コメント

かあなちは

投稿: 学習 | 2006年8月 9日 (水) 23時46分

かあなちは

投稿: 学習 | 2006年8月 9日 (水) 23時46分

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(。・・)ノどもっ サポティスタから 数少ない日本語で旧ユーゴ方面の情報を伝えてくださっている やべっちFCでお馴染みの長束さんのブログより。 イヴィツァ・オシム、W杯を語る オシムのいつも通りの引きつけられる語り口です。 自分が気にな....... [続きを読む]

受信: 2006年3月20日 (月) 17時36分

» オシムさんの最近のインタビュー記事 [ミューズとソフィア]
★まずは長束恭行さんの『クロアチア・サッカーニュース』より イヴィツァ・オシム、W杯を語る クロアチア紙の刊行によるW杯ガイドブック誌に 掲載されたものだそうです。 こういうのをマメに紹介してくださるので、 ホント長束さんには頭が下がります。 今回のは結構長文ですが、ぜひ目を通してみてください。 ★もう1つはNumberの最新刊(649号)に、 ↑の著者の木村元彦さんによる緊急インタビューとして イビツァ・オシム「日本代表を語る」 が掲載されていま... [続きを読む]

受信: 2006年3月20日 (月) 23時23分

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