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2006年6月30日 (金)

ソルド、現役引退

Sold シュトゥットガルトで10年間プレーをし、契約切れと共に退団が決まっていた元代表MF/DFズボニミール・ソルド(38・写真)が現役引退することが決まりました。彼の元には1FCケルンとロサンゼルス・ギャラクシーからオファーがあったものの、最終的には8月からケルン体育大学でコーチライセンス取得の道に進むことに決めました。ソルドは代表で61キャップ、4得点。1996年欧州選手権、1998年フランス・ワールドカップ、2002年日韓ワールドカップにも出場。様々な守備的ポジションをこなすユーティリティプレイヤーとして重宝され、シュトゥットガルトではカリスマ性ある主将として活躍していました。

Didulicaドイツ・ワールドカップでも代表メンバーだったGKジョセフ・ディドゥリツァ(28・写真)が、オーストリア・ウィーンから移籍金150万ユーロでオランダのAZアルクマールに移籍することになりました。契約期間は4年です。ディドゥリツァは2000~2003年にアヤックスに在籍しており、3年ぶりにオランダ・リーグに戻ることになります。インタビューで彼は
「全ては合意に達し、この先4年間はオランダ・リーグでGKとして守るよ。私がヨーロッパにキャリアを始めた国に戻ることになるね。アヤックスのあとはオーストリア・ウィーンでプレーし、新たなクラブはアルクマールだ。私の最後の3つのクラブは全て"A"という文字で始まる(正確にはアヤックス時代にアントワープにレンタルされていたので4クラブ)。ABCDの最初の文字だし、私の価値を意味する文字かもね(笑)」
とコメントしています。ちなみにAZアルクマールの監督はルイス・ファンハール、今季から新スタジアム"DSB"に移転するなどオランダでは野心溢れたクラブとして知られています。
またオーストラリアの新聞で「クロアチア代表を選んだことは失敗だった」とコメントしたということに関しては全面否定しました。

元ガンバ大阪のFW/MFニーノ・ブーレ(30)が29日、リエカと2年契約を結びました。背番号は11です。昨季はオーストリアのアドミール・ワッカーでプレーし、25試合出場8得点とまずまずの活躍を見せたブーレですが、クロアチアの帰還に関して彼は
「外国人選手としてやることは楽ではないから、クロアチアに戻ることは本当に心地良いよ。意欲については? リエカは昨年のような成功を望んでいるチームだ。ヴグリネツ(→ディナモ)、ノヴァコヴィッチ(→トムスク[ロシア])といった昨季の牽引役はもういない。しかしリエカの最大の武器はコレクティブなプレーだ。信用に答えるために私はやってきたし、チームに従うつもりだ。」
と入団会見でコメントしています。

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2006年6月28日 (水)

反省の見られないクラニチャール監督

クロアチア代表監督のズラトコ・クラニチャールはまだドイツの合宿地バート・ブリュッケナウに残っておりますが、ワールドカップ決勝まで同地に滞在するジャーナリストに格好の取材ネタにされてしまっています。名物記者の一人、ユタルニ・リストのトミスラフ・ジダク氏が二日連続でインタビューし、批判対象となる発言を言わされております(ジャーナリストの悪意込みでしょうが)。

[写真はクラニチャール監督(右)とマルコヴィッチ会長(左)]

Kramar_1 -クロアチア国内では欧州選手権の予選突破は非常に難しいと言われているが。
「予選突破を希望する権利をクロアチアは持っているよ。我々は力があるし、クオリティもある。6度のうち5度の大きな大会(ワールドカップと欧州選手権)の予選を突破したならば、なぜ7度のうち6度目がないというのだね。
唯一の問題は決定力とスポーツ運の欠如だ。(オーストラリア戦で)ロベルト・コヴァチがいなかったことも埋め合わせのできないハンディキャップとなった。」

-選手の精神状況に関する細かい情報がないが。
「唯一、ダド・プルショが代表から去ると伝えてきた。しかし、エドゥアルド・ダ・シルヴァが入ることとなる。エドゥアルド以外にも間違いなくクネジェヴィッチ(リエカDF)も入るだろう。ゼニト(ロシア)のクリジェナッツ(DF)も追っているよ。ブリャト(ディナモMF/DF)も既に代表選手だ。」

選手以外にもクラニチャールは予選でシステムを変える。
「4-2-3-1でプレーする。ディフェンスラインを3人でやるのは上手くいかないからね。」

-どうやって決定力の問題を解決するのか?
「プルショ、クラスニッチ、オリッチも得点を欲していたが、ゴールゲッターとしての意味合いで彼らは能力がなかった。バビッチは足元に二度ボールがあったのに決められなかった。全員が(私を)満足させたけど、唯一トマスがサッカーではなくバスケットボールをやってしまった。彼は試合を決める選手になると確信していたのだが。しかし私は彼に罪を着せない。勝ちを決められるチャンスを失敗したトゥドールに罪を着せないようにね。この2年間、私たちは良い仕事と良い結果を残したと思う。」

-ヴラトコ・マルコヴィッチ会長は契約について連絡を寄越したか?
「連絡もないし、その必要もない。全てはちゃんと話し合ったからね。ショッキングな大転換が起こりようにも、私たち二人は手を差し伸べあい、長く理解し合っているからね。」

クラニチャールは27日にベルリンへと行き、30日にザグレブへと戻る。
「サッカーにおいて私は完全に空っぽ状態にあるとはいえ、決勝ではブラジルvs.アルゼンチンになることを願っているよ。ドイツは私をいい意味で驚かしてくれた。観客が彼らを乗せているよね。運もあるし。しかし、彼らがもし予選を戦ったとしたら突破できたかどうかは判らない。このように2年間でチーム安定化にささげることは出来たんだろうね。けれども次の試合ではアルゼンチンが勝ち抜けるよう応援するよ。」

-ニコ・クラニチャールがイングランドのヴィガンに移籍すると報じられているが。
「いや、聞いたことがない。私が知っている限りでは、スペインへの移籍が現実的だ(デポルティーボ・ラコルーニャ)。」

-息子のニコを優遇しているために、この先も叩かれることになるのか?
「彼はオーストラリア戦だけ悪いプレーをした。ブラジルとの試合はソリッドだったし、日本戦ではクロアチアで最もいいプレーヤーだった。
私が彼のコーチだったら、彼は世界最高の選手となるだろう。けれども私は代表監督であるだけだ!」

(公に監督の采配を批判した)ズボニミール・ボバンの意見はとりわけ彼には傷ついたようだ。
「なぜボバンはクロアチア・サッカー協会の仕事を引き受けなかったんだ? 彼には副会長のポストが差し出されたんだろう?」

-ボバンは肩書きだけ与えられ、マルコヴィッチ会長の影に生きるのを嫌がったのでは?
「マルコヴィッチにとって(会長のポストの)競争相手を見つけるのは最も難しいことだ。彼は史上最高の会長だから....。」

クラニチャールはイタリアvs.オーストラリア戦をテレビで見ながらイタリアを応援していた。ヒディンクがカラッツではなくGKにシュウォーツァーを戻したのを見て、このように思い出して語った。
「私はビドゥカになぜカラッツがゴールを守ったのか聞いたんだ。カラッツが激しくヒディンクを攻撃したために、試合で起用するよう彼に約束したそうだ。彼をゴールに置いたわけだが、それは天に昇るほどの失敗だった....。」

-クロアチアは既に帰国し、オーストラリアもイタリアに敗れた。オーストラリア代表から誰かクロアチアに入れるとしたら?
「ビドゥカだけだ。」

また彼はあるフォワードを思い出した。
「もし私たちにシューケルがいたならば、決勝まで行けたのにね!」

私はこれまでクラニチャール監督には10回近くインタビューしてきましたが、彼のポジティブでフレンドリーな性格は承知しております。またジャーナリストとの接し方も、前任者とは違ってオープンに語る人間です。ただ今回はそれが仇となり、"反省しない人物"として吊し上げられてしまっているのが現状。"親馬鹿"ぶりにはつける薬もないわけですが.....。

もう2年間、彼は監督を続けるべきだと思いますし、現時点で代わりを務められる人物も見つけられません(敢えて挙げるのならブランコ・イヴァンコヴィッチ氏)。ただ、このままの雰囲気では空中分解しそうです。選手達はチームの問題は何か知りつつも、コメントを避けるか奥歯にモノが挟まった発言をしております。シムニッチは「チームに抱える幾つかの問題点を解決しないのならば、私は去るつもりだ」と答えております。

走らず守備もできないニコが問題だとは誰もが解っているわけですけど....。

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2006年6月27日 (火)

移籍情報

ワールドカップでの失敗を受けて、クロアチア選手への関心は低くなっております。
ボバンやヤルニなどの代理人を務めたことで知られるマルコ・ナレティリッチ氏は
「移籍に関する価格はいつも話し合えるが、問題なのは市場が選手を求めるか否かだ。サッカー市場はクロアチア人に背を向けてしまった。クロアチアのワールドカップ敗退後、ケースにはよるが30~70%の価格が下がったと言えるだろう。」
と語っているほどです。そんな状況下でのクロアチア選手の移籍話をまとめてみました。

Niko MFニコ・クラニチャール(21・写真)はワールドカップで評価と市場価値を下げた一人。一時期はリヨンだのバイエルンだのと騒がれていましたが、常に関心を持っていたオランダのヘーレンフェーンまでオファーを取り下げる始末。最近ではナポリの移籍金280万ユーロの移籍を拒否し、続いてプレミアシップのヴィガンがオファーを出していると言われているものの、ニコの代理人を務めるジュグル弁護士は具体的なオファーは一つも届いていないと明言しています。

ワールドカップ直前にMFニコ・コヴァチ(34)が「オーストリアのチェルシー」ことレッドブル・ザルツブルクと年俸50万ユーロでサイン。コヴァチはヘルタ・ベルリンから契約延長が提示されず、自由契約選手として移籍します。
またバイヤー・レバークーゼンのMFマルコ・バビッチ(25)もレッドブル・ザルツブルクが獲得寸前まで来ており、年俸70万ユーロでサインすると言われています。
同じく大会直前にディナモ・ザグレブのFWイヴァン・ボシュニャク(26)がベルギーのヘンクと3年+1年オプションで契約。移籍金は150万ユーロ、年俸は40万ユーロとされています。

ボシュニャクを放出したディナモですが、昨季にリエカで復活を遂げた元代表FW/MFダヴォール・ヴグリネツ(31)を獲得しています。ヴグリネツは国外から良いオファーがあったものの敢えてディナモを選びました。
またハイドゥクからはU-21代表MFマリオ・グルグロヴィッチ(21)を獲得。元々、ディナモ副会長ズドラヴコ・マミッチの経営する代理人企業がマネージメントしている選手ということもあって、ライバルチームへの移籍もすんなりと行きました。契約は5年間です。

Ninobule1 ヴグリネツに続き、元ドイツ代表MFフレディ・ボビッチも退団したリエカは、元ガンバ大阪のFWニーノ・ブーレ(30・写真)の獲得が秒読みとされています。またカイザースラウテルン所属のMFミハエル・ミキッチ(26)やハイドゥク所属のFWドラガン・ブラトニャク(25)もリエカ移籍の可能性が出ています。
ドイツ3部アーヘンに所属する元代表FWマリヨ・マリッチ(29)にもオファーを出していましたが、アーヘンのFWに怪我人続出したためにチームに残って2部昇格争いを目指すことを口にしています。

ハイドゥク・スプリトはオシエクと契約が切れたMFヨシップ・バラティナッツ(27)を2年契約で獲得。今年2月のカールスバーグカップで代表初キャップとなったバラティナッツですが、今年の冬にオシエク→ハイドゥクの移籍が80万クーナ(約1600万円)で一度は合意。しかし、韓国からのオファーにバラティナッツが揺れたために御破算となり、その後オシエクとの契約延長を拒否したためにチームで半年間干されるはめになっていました。

スペイン2部のレイダ所属のFWマテ・ビリッチ(25)がラピッド・ウィーンに移籍することになりました。ハイドゥク育ちの彼は2002年に200万ユーロでサラゴサに移籍し、以後はアルメリア、スポルティング・ヒホン、コルドバ、レイダとスペイン二部を渡り歩いていました。

監督の動きとしてはハイドゥク・スプリトがゾラン・ヴリッチを2年契約で招聘。昨季にチームを建て直したルカ・ボナチッチが継続して仕事をするものと思われましたが、シーズンが準備が始まる直前に辞任を発表。ヴリッチはハイドゥクのユース校長の仕事をする予定だったものの、またして監督として迎えられることになりました。

また1998年ワールドカップ3位の代表監督として知られるミロスラフ・ブラジェヴィッチ氏は、今季からNKザグレブの監督に就任します。

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2006年6月26日 (月)

クラニチャール監督を擁護するサッカー協会長

ワールドカップ後のクロアチア国内の状況をお伝えしましょう。

Markovic クロアチアのグループリーグ敗退を受け、クラニチャール監督とサッカー協会に批判が集中しております。そんな中、クロアチア・サッカー協会長のヴラトコ・マルコヴィッチ(写真)がクロアチア・メディアに口を開きました。いかにメディアがクラニチャール監督辞任にこだわっているか解ると思います(それに対して、日本のメディアは川淵会長に手ぬるいこと.......)。

-我々が決勝トーナメントに進めなかった最大の犯人はクラニチャール監督なのか?
「絶対に私たちは決勝トーナメントに進む知識と可能性を持っていたのに、ゴールと運に恵まれなかったのは明らかだ。けれども、ワールドカップ出場が大きな成功なんだ。」

-しかしワールドカップ出場では何も残せなかった。少し質問の形を変えよう。監督はドイツにおける完全な不成功の後に去る必要はあると思うか?
「私たちは先へと進まねばならなかった。決勝トーナメントに進めなかったことは大きな失敗だと捉えている。しかし、監督への指令はチームをワールドカップへと導くことだった。就任以前からクラニチャールを最も支持していた人達の中にジャーナリストもいたと私は思う。けれども今はジャーナリストが彼を否定している。
私は一晩で考えを変えるような人間ではないよ。誰にするかと決定したならば、私はそれを守り続ける。しかし、(継続は)私だけが決めることではない。監督は詳細な大会レポートを報告しなければならないし、最高委員会にも通らなくてはならない。今の状況はそんなところだが、クラニチャールは私の大きな支持を得ているし、この先も監督だ。」

もしクラニチャールが欧州選手権予選の最初の二試合で敗れるようなことがあったとしても、貴方の支持を得られることになるのか? 致命的な状況になっても彼を信じるというのか?
「予選では強いチームと対戦するし、誰が相手となって楽に勝てないのは間違いない。けれどもクラニチャールはワールドカップ予選で素晴らしい結果を残した。次の予選も最後に結果を残せるようにしなくてはならない。私たちはその試練を乗り越え、欧州選手権に行けるものだと確信している。」

ミルコ・ヨジッチは日韓ワールドカップの失敗の後に去り、オットー・バリッチも欧州選手権ポルトガル大会の失敗のあとに去った。なぜクラニチャールはドイツでの失敗後に去らないのか?
「彼ら全員が大会後に自ら辞表を出していった。君たちが辞任を謳い上げ、世論のプレッシャーが唯一の原因となったんだ。ヨジッチに関しては、監督に就任した時からワールドカップ後に去ると言っていたけどね。
私は君たちの質問に完全に答えることはできない。でもクラニチャールはプレッシャーと上手く付き合っていけるだろう。彼が何を思っているかは判らないが、正確でしっかりした人間だ。私にとっては全員が同様に美点と欠点を持っているものだよ。」

それは失敗の後でも去らないということか? それも美点や欠点であると貴方は考えているのか?
「私は彼が何を考えているか知らないと君たちに言ったはずだ。」

私たちは監督のことを思っているのではない。むしろ、ワールドカップでどこにも勝てなかった後に去らないことも美点であると貴方が考えているのかどうかと聞いているのだ。グループリーグではブラジルと一緒に決勝トーナメントに行くと考えていたわけでしょう?
「ワールドカップで起こったことはもちろん、私たちが到達すべき結果ではなかった。私たちもトーナメントにおける場所があったはずだ。
クラニチャールからは違うアプローチを私を求めるし、もっと彼をコントロールするつもりである。もしかしたら今までベンチ脇に私が立ってなかったことも間違いだったかもしれない。彼の辞任について繰り返して私に聞いたところでも、この先も彼であると言わねばならないよ。なぜ辞表を出さねばならないんだね? 私のサポートは続くし、欧州選手権にも進められると信じている。」

Cico 一方でクラニチャール監督(写真)はドイツに残り、25日にイングランドvs.エクアドル戦を視察しました。9月から始まる欧州選手権予選でイングランドが同組であることが理由です。

欧州選手権予選について聞かれたクラニチャール監督は
「予選グループは難しい、非常に難しいよ。けれども新たなサイクルにおいても多くが私たちを信じているものと見ている。イングランドとロシアはとりわけ危険だが、イスラエルも忘れてはならない。どのチームも強いが、予選を突破できるものと私は断言する。ワールドカップ予選前でも貴方たちは私たちが消えるものと書いたが、実際はスウェーデンとブルガリアよりも上だった。少なくともイングランドとロシアの二つの代表を相手にして、どちらか一つより私たちは上となるだろう。」
と語りました。

膝に問題を抱えるプルショや高齢のニコ・コヴァチが代表引退をほのめかしているわけですが、クラニチャール監督は
「選手達が代表を去ると言った、と君たちが記事にしていることは聞いている。けれども、まだ一人の選手も私に"もう代表でプレーはしたなくない"と言ってきてはない。全員を考慮にしているし、新しいアイデアも持っている。」
と答え、ワールドカップ出場リストで最後に落としたディナモ・ザグレブFWのエドゥアルド・ダ・シルヴァに関しては
「もちろん、彼は今まで我々の活動に名前を連ねていており、召集するつもりだ。しかし問題なのはズドラヴコ・マミッチ(副会長)が彼を代表に手放すかどうかだ。私が監督である以上は手放さないかもしれない。決して判らないよ。」
とコメントしています。
マミッチはダ・シルヴァの落選に際してクラニチャール批判を大展開し、またクラニチャール監督も息子ニコをディナモから追い出したマミッチへの恨みがあります。本大会でモドリッチの起用が少なかったことですら、この二人の対立が原因とも考えられ、これからも二人の闘争が代表チームに悪影響をもたらしそうです。

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渦中のオシムが語る

6月26日のクロアチア紙「スポルツケ・ノヴォスティ」に、次期日本代表監督候補として渦中のイヴィツァ・オシムのインタビュー記事(写真)が掲載されていました。これまで彼本人のコメントなくして日本代表監督が内定のように報道されていただけに、オシム側の考えが判る内容となっています。記事全文を翻訳紹介しましょう
オシムの性格を知らず、日本サッカー協会が真っ先に「金」の話をしたのは本当に情けないですけど……。

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Osim_2イヴィツァ・オシムはまだ日本代表監督ではない。しかし「オシムが日本代表新監督に」という見出しはさほど遠い話ではない。つまり、話し合いは続いている。

オシムははっきりとした鋭い言葉を持つ監督であり、彼が率いた全てのチームが素晴らしいサッカーをし、良い結果を同様に残してきた。彼は昨日、ヴォディーチェ(クロアチアの海岸保養地)にいた。今日にはグラーツ(オーストリア)へと行き、そこで日本のテレビ朝日の独占インタビューが待っているが、私たちはテレビ朝日を少し追い越した。それからオシムは個人的な用事をこなし、水曜日には妻と一緒に日本へと飛び立つ。そこで極東での将来が決定することだろう。残念ながらクロアチアへ移動することはない。

とうとう日本サッカー協会長の川淵三郎は公式に"イヴィツァ・オシムと話し合いをしている"と公言した。
"貴方は次期日本代表監督になるのか?"
-テレビで語ったドイツ・ワールドカップにおけるクロアチア代表分析が"ナンバー1"のヒットとなったオシムに私たちは質問した。

「話し合いは始まった。私たちのプロローグは始まったが、どんなエピローグとなるかは私にはまだ100%確実なことではないよ。」
-オシムはそう答えた。

-現在はどんな状況なのか?
「日本サッカー協会は4年契約を提示した。協会は直ぐに条件面の交渉も始めようと望んできたよ。その条件面とはもちろん金銭のことだ。私は金銭がまったく条件でないことを強調した上で、こう言った。
"ちょっとタイミングを待ってくれ。日本に私が到着してから話し合おう。"とね。
貴方たちも知っているだろうが、私の人生において金銭が物事を決める際に影響したことは決してない。」

-何が重要なのか?
「完全に分別のあることではあるが、日本人達はこの先4年間の監督を探している。一つのワールドカップが終わってから次のワールドカップまで。4年間もだ! それは余りにも長すぎる期間だよ。私の考えでは2年プラス2年で、将来的に次の代表監督になる日本人を私に付けることだ。」

-いつ日本代表を引き受けなくてはならないのか?
「直ぐに。そのため日本サッカー協会会長の川淵三郎氏は、もし別の解決策がないのならばこの先3ヶ月間、代表も千葉も率いるよう私にお願いしてきた。しかし、それは解決にならない。難しい上にうわべだけで二つのポストに同時に座ることは非常に不真面目なことだ。二つのポストを同時にできるような天才は少ししかいない。」

-先週、あなたはその類稀な率直さでクロアチア国内を制覇したが(テレビでクロアチア代表の欠点を指摘したこと)。
「それについては語りたくなかったね。」

-なぜ?
「なぜなら他の人が見ても"裸の王様"であることは間違いないからだ。」

-しかし、他の人はそれを言わなかった。
「言わなかったのは、もしかしたら出来なかったからだろう。お願いだ。今の私はいかなる預言者でもないし、そのように私を取り扱わないでくれ。」

-クロアチアvs.オーストラリア戦の前後に貴方が率直に言ったことは、もしかしたら今でも残念なことなのか?
「私がそれを言わねばならなかったのは残念だ。この先も残念となるかは解らないよ....。」

-しかし、この世界では真実から得るのは少ないかもしれないが、真実は言わねばならないのでは?
「言わねばならない。しかし、それが私である必要はなかった。」

-マクシミール(ディナモの本拠地)の偉大なシェフ、ズラトブコ・マミッチ(副会長)はあなたの誠実なテレビ出演に熱狂し、ディナモのアドヴァイザーのポストを貴方に差し出そうとした。20万ユーロという年俸はあなたを魅惑するものなのか?
「日本はとても遠く、ディナモのプレーを見れない人物の助言など役にも立たない。その20万ユーロをユースに投資した方がずっといいよ。不必要な助言がなくとも選手が生まれるだろう。」

-ドイツ・ワールドカップで私たちが見ているサッカーにおいて主要になっていることは?
「ダイナミックさだよ。全てがダイナミックさの中にある。ダイナミックにできる者は、どんな相手もやっつけられる。メキシコは信じられないようなプレーテンポで、アルゼンチンにも限界があることを示した。目の前にある全てを倒しているドイツのテンポも一例だ。ワールドカップで起こっていることは、プレーがどの方向へ進むかの指針となっている。
またドイツ・ワールドカップの日程リズムは、アイデアで生きている選手達を破壊している。それが全てのディテールとなっており、このディテールについてFIFAは考え始めなくてはならない。もしかしたらプレーのルールの変更すら必要かもしれないよ。なぜなら(フィールドの)10人の選手で要求、とりわけ観客が求めるダイナミックさに応えるのはどんどん難しくなるだろうからね。」

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2006年6月24日 (土)

クロアチアでもオシムを熱望

日本サッカー界では「サッカー日本代表新監督にオシム氏が就任へ」のニュース一色になっているようですが、クロアチアではディナモ・ザグレブが年俸20万ユーロでアドヴァイザー契約のオファーを出すことをズドラヴコ・マミッチ副会長が明らかにしました。

「もしかしたら最初に新聞に話を出してしまうのは良くないかもしれない。けれども、それは事実だ。オシムには4年契約で年俸20万ユーロのオファーを出す。それは冗談でも見掛け倒しでもない。真剣なオファーだ。私は既にオシムへ監督オファーを一年半前、そして一年前に出した。彼は例外的な指導者だし、サッカーを知った人物だ。彼とコンタクトを取って、私が言ったオファーを提示するつもりだ。合意できることを願っている。」
とマミッチは語っています。
またマミッチは
「オシムはテレビ(クロアチアvs.オーストラリア戦でスタジオ出演→下の記事参照)で述べたたった二つのコメントの中に、全てのサッカー哲学を説明していた。私は彼のモノの捉え方に熱狂したよ。」
と語っています。

またヴェチェルニ・リスト紙も「クラニチャール代表監督の引き継ぐのは誰か?」との記事で、イヴィツァ・オシムを一番先頭に挙げ、
「シュヴァーボ("ドイツ人"という意味のオシムの愛称)は我々の代表にディシプリンと戦術、その他全てのクオリティをもたらしてくれるだろう。偉大な監督として選手達も大きなリスペクトを持つことだろうし、チームも彼についていくことは疑いない。」
と書いております。
メディアを通してクラニチャール辞任キャンペーンを張られているものの、クロアチア・サッカー協会長のヴラトコ・マルコヴィッチは大会後に「あと2年はクラニチャールが続投する」ことを既に明言しております。ちなみにクラニチャール監督の給与は月給170万円ほどです。

オシムは旧ユーゴ諸国の仕事を一切受けないと言っていることから、ディナモのアドバイザーもクロアチア代表監督の実現も限りなくないに等しいわけですが(条件も良くないですし)、私にはどうしてもオシムが日本代表監督を引き受けるとも思えません。

川淵会長とマミッチ副会長がだぶって見えるのは私だけでしょうか(苦笑)

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オーストラリア戦後のコメント

オーストラリア戦のあとのクロアチア側のコメントをまとめましたので掲載します。
国内では不甲斐ない戦いぶりに、随分と怒りの声が上がっております...。ラジオを聞いてましたが、中学生ぐらいの子供が「昨日の放送でオシムが言ったことはもっともだ。オシムをクロアチア代表の監督にすべきだ」なんて意見を言ってました。日本と同じですね(笑)

ズラトコ・クラニチャール監督
「選手達は自分の持つ力の全てをだしてくれた。引き分けが妥当だったのか私はまだ解らない。オーストラリアが同点に追いついたPKを与えたシーンの映像を見てないからね。多くの人が二点目のシーンはオフサイドがあったと言っている。ダイナミックかつ激しいプレーをし、二度に渡ってリードをした。トゥドールが決定機を決められなかったのは残念だ。
私のビジョンはピッチでボールとシチュエーションをコントロールするというものだった。しかし1-0となった時、選手達は自発的にゴールから35mの位置まで引いてしまった。そんなことは私は望んでいなかっただけに、途切れることなく選手達には前へと向かうよう指示したんだ。
(主審のグラハム・ポールについて)
審判とジャッジについてはコメントしたくない。キューエルのゴール場面で審判は私たちを壊してしまったとだけ思っている。
(オーストラリアについて)
オーストラリアは私を驚かすことはなかった。日本との引き分けが決勝トーナメント進出を台無しにしてしまったんだ。
(選手交替について)
ニコ・クラニチャールはスペースをコントロールすることができなくなり、彼の背後を突かれてしまった。だからイェルコ・レコを投入したんだ。オリッチは疲れていたのでモドリッチが入った。
(契約延長に関して)
それにはもうサインした。貴方たちが心配しなくてもよい。」

マルコ・バビッチ
「私たちが成功しなかったことはもちろん大きな失望だ。二度に渡ってリードしながら、最後の目標まで到達できなかった。オーストラリアは素晴らしいプレーをしていたし、彼等が勝ち進むのに値していただろう。
(君はシステムの犠牲になったと感じてないか?の質問に)
もちろん。しかし今はそれについて聞かないでくれ、お願いだから。」

ニコ・コヴァチ
「二度に渡ってリードして、二度に渡ってリードを失った。それは失望だよ。相手のロングボールを解決することができず、私たちが足でキープすることもできなかった。自分達のプレーに関して同意できないことはたくさんあるし、私はあんなプレーが好きではない。しかし、それについては黙っておく方がいいだろう。
もちろんサッカーを少しでも理解している者は、私が何について話しているか理解するはずだ。しかし私はそれについて話したくないし、決して話すつもりもない。それは永遠に私の心に留めて置くことだ。
(これで代表とはお別れか?との質問に)
いや、それについて今は考えたくない。休暇を取って落ち着いたら、どうするか決めることだろう。今、最終決定を言うことはできないよ。」

イヴァン・クラスニッチ
「5分だけプレーした。解らないよ。二度もリードしておきながらね。それでは十分じゃなかったことが目の当たりとなった。オーストラリアは試合を押し、ゲームを支配し、単純に私たちは耐えられなかった。悲しいけど泣かないよ。先へと進もう、きっと良くなるはずだ。」

ルカ・モドリッチ
「悲しいし、嘆かわしいよ。ネガティブな感情でいっぱいだ。今は終わったから家に戻るだけ。現時点では私たちのプレーに関して議論する状況にない。リードした時に余りにも引いてしまったと言うことしかできない。
(ワールドカップでもっとプレー時間が得られたはずか?との質問に)
自分の考えはあるけど、自分の中に留めておくよ。決める人は監督だから。」

イヴァン・レコ
「結果には失望している。試合で二度リードしておきながら、相手を生き返らせるなんて最悪だよ。ハイボールで攻めて来ると知っていたのにね。残念だけど私たちは守ることに成功しなかったので、家へと戻らねばならない。」

スティペ・プレティコサ
「このような敗退のあと満足することなど見つけられるものじゃないよ。私たちは決勝トーナメントに値したと思っている。アリバイはないけど、リードした後にもっと良い反応ができたはずだ。オーストラリアが攻撃してくることは解っていたし、どんなプレーをしてくるかはきちんと予想していた。しかし、彼らを20~25mの辺りで止める方法を見つけられなかった。なぜ私たちが引いてしまったのか解らない。
(今の気分は?との質問に)
どんな気分になれるっていうんだ。悲しいし、失望している。グループリーグで敗退するのはこれでもう3度だからね。」

ダリヨ・スルナ
「悲しい、悲しい、悲しすぎるよ.....。いつも同じ話が繰り返されるのは知っている。私たちには運も欠けていたし、もっとやれたはずだ。けれどもオーストラリアが私たちにプレッシャーをかけ、二度のリードのあとは常に吊り上げられた。最後には陥落したけど、絶対に私たちは自分の持てる力は出したと思う。それは誰の目を見ても明らかだよ。サポーターは失望し、怒ることは解っている判っている。しかし私たちは極限まで本当に戦ったんだ。顔を上げよう。決勝トーナメントに進めなかった批判を味わうことは解っているよ。単に最後まで耐えることができなかったんだ。」

ニコ・クラニチャール
「私が浸っている感情を表現することは楽ではない。悲しみと嘆き、失望が折り重なっている。なぜリードした後に二度も引いてしまったのか解らない。
(ワールドカップにおける採点は?の質問に)
平均点だよ....。二試合に勝てることはできたが、私たちは勝てなかった。ちょっとした運も私たちには欠けていたのだろう。それとは別にして、オーストラリアの2点目はオフサイドだと思う。」

イゴール・トゥドール
「最後は全てが失望へと変ってしまった。リードしたチームが引くのは普通だが、私たちは余りにも引きすぎてしまった。オーストラリアはそのチャンスを利用し、二度に渡って敗者から勝者へと姿を変えた。私たちが成功しなかったのは残念だ。聞いた限りでは二点目はオフサイドらしいけどね。」

スティエパン・トマス
「何を言ったらいいか解らない。グループリーグの3試合のあと、決勝トーナメントに私たちが進む必要があったと確信している。しかし、家へと戻らねばならない。私たち誰もが辛い気分だよ。
(なぜ二度もハンドしたのか?の質問に)
本当に解らない。瞬間的に集中が欠けたのか、ブラックアウトなのか、良くしようという気持ちが大きすぎたのか....。誰がそれを知るというのかね。私は最高のプレーをしたかったのに、あのようなことになってしまった。おそらく長くプレーしてなかったこともあるのだろう....。
(代表の将来は、そして貴方のステータスは?の質問に)
解らない。それについて話すのは早すぎる。今は私にとって話をするだけで悲しいよ...。」

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2006年6月23日 (金)

オシムが語るクロアチアのグループリーグ敗退の理由

ご存知の通り、クロアチアは第3戦でオーストラリアに2-2の引き分け。グループリーグ敗退が決定しました。日韓ワールドカップのクロアチアvs.イタリア戦でも笛を吹いたグラハム・ポール主審のお陰で、またして展開的・ネタ的には面白い試合となりましたが、ロベルト・コヴァチの累積警告がつくづく悔やまれます。
日韓ワールドカップ、欧州選手権ポルトガル大会に続いて、第3戦で失望させられる試合をやってしまったわけですが、3試合を戦ってみてグループリーグ決勝に値するチームではなかったということでしょう。現在のクロアチアは発展途上のチームというわけではないだけに、これがキャパシティの限界なのかもしれません....。

昨日の試合でクロアチア国営放送のスタジオ・ゲストとしてイヴィツァ・オシムが出演しました。またしてオシム関連になってしまいますが、試合後のコメントを翻訳しましたので紹介します。

-あなたも試合を見て、私たちと一緒に飛び跳ねたり、語り合ったりしました。改めて試合に関するコメントは?
「時々言われることは"人は見てても観てない"んだよ(笑) 同じことではないからね。
誰もが多かれ少なかれ(敗退の)理由を見つけようとすることだろう。何があったのか?、何がなかったのか?とね。

私の考えでは、クロアチアとオーストラリアではフィジカル面の準備と走力の差がある。走力は現代のサッカーでも最も根本にあるものだ。走ることのできない者はサッカーはできない。戦術だけでなく全てが台無しとなり、プレーにならないからね。

クロアチアにはコンビネーションがあるという賞賛を何回も耳にしたが、私が何を言えるというんだね? コンビネーションがあったのはオーストラリアの方だ。クロアチアは後半にコンビネーションを素晴らしく活かした場面が一度見られただけで、あとはマゾヒズムの元で個人プレーしかない。一人がドリブルをしたら、他の選手は見ているだけ。これではプレーにならないよ。全選手が完成されているのにもかかわらず、プレーすることを忘れている。欧州の所属クラブではきちんとプレーしているのに。選手について語れば非現実的になる。私たち(クロアチア)にはスターや最高級の選手は欠けていると言うだろう。本当かね? 正直になれば、オーストラリアの方がもっと良いクラブでプレーすべき選手を必要としているよ。

ディフェンスについて語ろう。同じことを言うが、走ることができないと結合力はない。ディフェンダーはコンスタントに前へと行くことはできず、後ろへと残ってしまう。これではオーストラリアにサービスしているようなものだ。ビドゥカにとってはペナルティエリアに留まる方がいい。彼はペナルティエリアでは他の選手よりずっと強いからね。クロアチアのディフェンス陣が頻繁にラインを上げれば、ビドゥカをペナルティエリアから追いやれた。十分に繰り返せばビドゥカは疲れたはずだ。しかしそれが出来なかった。

そうでなくとも今の中盤は耐えることは出来ない。なぜなら中盤における選手間のスペースが広く、同様にプルショとの間のスペースも広い。走力があるわけでないので20分間でエネルギーを費やし、それからさ迷い、呼吸が出来ずにカウンターに振り回されることになる。相手を上回るプレーをしたいならば、そのような状況が起こってはならないよ。

これらはサッカーにおける私たちの考え方であり、学習してしまったことだ。批判で言っているわけではなく、この地域一帯がそのように学習してしまっているんだ。まず最初に"個人で何ができるか"を見てしまうため、どの選手も自分のためにプレーしている。誰もそう認識してないだろうけど。ようやくパスをしようと試みたり、シュートを打ったりする。個人のアクションやフリーキックしか頼みがないところで何だと言うのだね? 私の考え方を面を向かって言うのは少し難しいよ。誰かが自分はどう考えているか話した上で、存在しないことを私が示す方がいいだろう。

オーストラリアの監督は恐ろしいほどの役割を果たした。なぜなら一番重要な試合でナフタリンの中から控えのGK(カラッツ)を送り込んだことだ。誰も気づいてないだろうが、素晴らしいことだよ。(オーストラリア生まれのクロアチア人)選手達にとっては難しいことは解っている。国民全体が以前から話題にしただけに、大きな責任を持っていたはずだ。でも全員が(この試合のために)生きていたんだ。

話は戻るけど、走力がないために20分もすれば3,4人の選手が息ができなくなっていた。いや、彼らは幸運なことに息はしていたけどね(笑) 疲れがあって集中力がなければ、何も見ることもできないし、パスもできないし、前へも後ろへも行けない。それは単なる放浪だ。なのに最後は"勝てたはずだ"という話を聞く。勝つことができるのは当たり前だよ。しかし、ホウキも時には大砲のように破裂する。非常に稀なケースだよ。」

-ヨーロッパではチェコ、ポーランド、セルビア・モンテネグロ、クロアチアがグループリーグ敗退となったが。
「少し我々の時代に戻れば、かつて"ヘイ、スラブ人"なんて歌(旧ユーゴの国歌)もあったけどね(笑) これは我々の考え方によるものだよ。偶然ではないね。」

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2006年6月22日 (木)

今日、クロアチアvs.オーストラリア戦

22日、シュトゥットガルトのゴットリーブ・ダイムラー・シュタディオンで、グループリーグ突破を賭けたクロアチアvs.オーストラリア戦が行われます。

P1110269_1クラニチャール監督は20日にスタメンを発表。累積警告のロベルト・コヴァチの代わりにトマスを起用。当初のプランはシミッチをリベロにしての3バックだったのですが、「少なくとも2~3度のトレーニングをこなす必要があるから、リスクは犯したくない」(クラニチャール談)ということで、バビッチを左サイドバックに下げた4バックを採用することにしました。4バックに関しては一連の親善試合でこなしていたこともあり、さほど違和感なくやれることでしょう。

またFWにはクラスニッチに変えてオリッチをスタメン起用。
「彼は100%準備できているし、この機会ではクラスニッチよりも相応しい。オーストラリアはスピードがないと思っている。オリッチが怪我するまで私はいつも彼を起用していた。プルショとも連携もクラスニッチよりは良いからね。」
とクラニチャール監督は答えています。

クロアチアの布陣(4-3-1-2)は以下のようです。
GKプレティコサ-(右から)DFシミッチ、トマス、シムニッチ、バビッチ-MFスルナ、トゥドール、ニコ・コヴァチ-クラニチャール-FWプルショ、オリッチ

20日のヴェチェルニ・リスト紙のアンケートによると
「クロアチアはオーストラリアに勝てるか?」の質問に、57.11%がイエス、19.70%がノーと答えています(残り23.19%は"判らない")。
また「もしオーストラリアに負けたとしても、クラニチャール監督は監督に留任すべきか?」の質問には52.62%がイエス、29.18%がノーの回答(残り18.20%は"どちらでも")。
また「オーストラリアのクロアチア人はどちらを応援すると思うか?」の質問には、51.37%がクロアチア、29.18%がオーストラリア、19.45%が"判らない"と答えました。

今回、注目されるのはお互いのチームにオーストラリアのクロアチア人がいること。オーストラリアには約30万人のクロアチア移民が住んでいると言われています(ちなみに今日の試合会場となるシュトゥットガルトには5万人のクロアチア移民がいます)。
両チームにはオーストラリア生まれのクロアチア人が10人。そのデータを羅列しますと....
[クロアチア代表]
DFヨシップ・シムニッチ (キャンベラ生まれ、両親はボスニアのフォイニッツァ出身)
GKジョエイ・ディドリッツァ (Geelong生まれ、父がザダール近郊出身)
MFアンソニー・シェーリッチ (シドニー生まれ、両親はスプリト出身)
[オーストラリア代表]
FWマーク・ビドゥカ (メルボルン生まれ、父がザダール近郊プリドラガ出身)
DFトニー・ポポビッチ (シドニー生まれ、両親はメトコヴィッチ出身)
MFジェイソン・チュリーナ (シドニー生まれ、父がザダール近郊プリドラガ出身)
MFマルコ・ブレッシャーノ (キャンベラ生まれ、母がポレチュ近郊出身)
MFヨシップ・スココ (Mount Gambier生まれ、両親がヘルツェゴビナのシロキ・ブリイェグ出身)
GKジェリコ・カラツ (シドニー生まれ、両親がイローク近郊出身)
GKアンテ・チョビッチ (シドニー余れ、両親がシドニー生まれ)

主将のビドゥカは「試合でクロアチア国歌を耳にすると素晴らしい気分になるだろう。またオーストラリア国歌を聞いている間も同じ気分に浸ることだろう」と語り、スココは「両国歌を歌うかもしれないね」と述べています。またチュリーナは「私の友人の何人かは相手の応援につくことになる。けれどもシュトゥットガルトのピッチに出れば、全てを忘れるだろう」とコメントを残しています。

4年前のエクアドル戦の失望は繰り返さぬよう、切れるカードは全て切って勝利をモノにして欲しいです。

"U boj, u boj, za narod svoj!!"

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2006年6月20日 (火)

オシムの日本vs.クロアチア戦にまつわるコメント

6月17日のスポルツケ・ノヴォスティ紙に、グラーツで休暇中のイヴィツァ・オシム(ジェフ千葉監督)へのインタビューが掲載されていました。日本vs.クロアチア戦の前における彼の考えを知る内容として紹介します。

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-日本人は敗戦から立ち直るのにどれぐらい掛かるのか?
「日本はかなり難し状況に立たされている。彼らはオーストラリア戦において敗北以外の全てを期待していたからね。言うまでもなく、試合は尋常ではない展開をしていった。日本はラッキーな形でリードしたが、不器用に負けてしまったよ。同点になった後はかなり悪いリアクションをしてしまった。まるで"黒い穴"に落ちてしまったかのように感じてしまい、そのからもう出られないかのように感じてしまっていたよ。審判が取らなかったPKが日本にはあったという事実も、わずかな時間に困難なシュートを受けることになった。このような出来事のあとで、直ぐに立ち直るのは楽ではないね。」

-もちろんクロアチアにとっては日本に関心があるのだが、論理的に負けがワールドカップでの終わりを意味する試合をどのように見ているか?
「初戦に負けたチーム同士が対戦するということになり、それはデリケートな状況だ。しかしクロアチアはずっと良い立場にある。日本は敗北者として試合に入り、クロアチアはブラジルに張り合ったモラル的な勝者として試合に入る。選手の精神的な状況はいつも重要だし、今も重要となるだろう。」

-クロアチアはブラジルとの対戦で素晴らしい印象を残したが、その印象は生きないのか?
「結果だけが生きる、それは古くからの真実だ。けれども時には印象も重要だよ。なぜかって? ブラジルに対してもクロアチアはやれることを知らしめた。オーストラリア戦の後の日本はそのような立場にない。」

-ということはクロアチアは日本に勝てることを意味するのか?
「クロアチアは本命だし、勝たねばならないだろう。しかし勝利のためには幾つかの条件を満たすことが必要だ。第一の条件はブラジルと互角だったことを忘れること。日本はドイツとの親善試合を記憶に残していた。2-0でリードしながらも最後は2-2で終えた試合だったが、オーストラリア戦もそのように進んでしまった。第二の条件はブラジルとの後半のような戦いを繰り返すこと、第三の条件は横柄な態度で試合に入らないこと、第四の条件は日本のバイタリティの能力を過小評価しないこと、第五の条件はブラジル戦とは全く別の試合になることだよ。」

-ブラジルに互角に戦ったクロアチアのプレーの中で最も貴方が気に入ったのは?
「ブラジルに対してできたことはいつも最高のものとして見られる。後半はとても良かったね。クロアチアはやらねばならないことをきちんとプレーしていた。私にとってクロアチアが足らないものはもう少しの自発性、もう少し相手ゴールに向けてのダイレクトプレーだ。もっと多くの選手の間でそんなプレーが必要だろう。クラニチャールのチームは前半、ブレーキが掛かったようなプレーをしていたのは残念だ。何かしたいという姿勢は常に見られるものの、足が止まってしまっていた。もし試合が前半0-0だったならば何が起こっただろうというテーマに私は恐ろしいほど興味を持っているよ。」

-ジーコはクロアチア戦で何かを変えてくるのか?
「大きな変化を信じるのは難しい。日本はいつもやっているようなプレーをしてくるだろう。しかし私の協力者から聞いている限りでは、代表チームの周囲の雰囲気はかなり良くないようだ。それは代表チームに間違いなく反映する。日本人はそれがどうなるのか判ってないね。
敗北は帰国を意味する。しかしクロアチアに対して日本は"イチゴが喉に詰まった状態"(完全に準備してない状態"では戦えない。クロアチアの立場はずっといいが、そうである必要もない。したがって道理をわきまえることだね!」

-ここ数日は多くの日本のジャーナリストと話し合ったが、多くがジーコの後任として貴方の名前を挙げているが。
「ジャーナリストは好きなように話すことができるし、書くことができる。それは彼らの権利だからね。日本は深刻ではない質問に対して真面目すぎる国だ。物事の期が熟すまでは、日本人は決して何も専念することができない。もし貴方の質問に真実が一粒でもあるのならば、私はそのことを知っているはずだ。しかし、まだ誰も私に何も尋ねてこない。」

-オーストラリアはどれだけ強くて危険か?
「彼らが最後までアグレッシブでないならば、彼らはもうオーストラリア人ではない。彼らのサッカーの流儀は警告すべきであるのは明らかなのに、審判は"怒り"という彼らのプレーの大きな特徴に沈黙している。日本はオーストラリア戦で敗北に値しなかった。信じられないほどのリアクションの欠如が試合を決めてしまった。オーストラリアは堅いが、それ以上のものではない。」

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試合後の翌日の同紙ではこのようなコメントを残しています。

「クロアチアはもっと悪いケースで終わる可能性もあった。選手達はファウルを貰うことだけを望み、プレーすることを忘れていた。どの選手も一人で試合を解決したいかのようにソロアクションをしたり、パス出しも遅れていた。また中盤からのボールも欠けていた。フォワード間だけで常にパスを出し合うことなんでできない。」

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クロアチアへ戻りました

ワールドカップの仕事を終えて、19日夜、ドイツからザグレブへと戻って来ました。

日本戦まではフジテレビの通訳・クロアチア情報担当としてクロアチア代表に密着させて頂きました。抽選会でクロアチアが日本と対戦することになって以来、この半年間はあらゆる取材の仕事をこなしてきただけに、クロアチアvs.日本戦が私にとってのフィナーレでした。

クロアチアvs.日本戦もスタジアムで見させて頂きましたが、試合結果はクロアチアにとっても日本にとっても残念でありましたね。クロアチアはまだ次のオーストラリア戦で決勝トーナメントへの道が残されてますから、決定力不足を解消してもらいたいものです。

既にクロアチアvs.ブラジル戦、クロアチアvs.日本戦については多くの報道がされているので、この「クロアチア・サッカーニュース」で敢えて触れる予定はありません。日本戦前日と試合後にオシムのインタビューとコメントが掲載された新聞があるので、その翻訳は近日中に載せてみようと思います。

仕事をご一緒させて頂いた皆様、多くの支持をして頂いた皆様、取材に協力して頂いたクロアチアの皆様(日本語は読めないでしょうが...)、この場を借りて深く御礼を申し上げます。日本においてクロアチア・サッカーの認知度を高められたならば、それが私の本望であったと思っております。ありがとうございました。

とはいえ、まだまだワールドカップは続きますので、これからはサポーターとしても大会の残りを楽しみます。

Kranjcar1

[写真]
スペインとの親善試合後、
クラニチャール監督にインタビュー

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2006年6月11日 (日)

合宿地バート・ブリュッケナウ

P1110095 クロアチア代表はジュネーブでのスペイン戦ののち、8日にキャンプ地であるドイツ南部バイエルン州の保養地バート・ブリュッケナウに戻っています。

スロベニア合宿でフィジカル中心の練習をした上、ワールドカップ参加国では最多の4つの親善試合+1つのチャリティマッチを行ったことから、バート・ブリュッケナウではもっぱらリラクゼーションを中心としたメニューをこなしております。
怪我が心配されていたMFニコ・コヴァチとDFヨシップ・シムニッチ(写真・中央)も完全復帰。また疲れと右足甲の怪我で別メニューをこなしていたMFダリヨ・スルナ(写真・右)も昨日から通常通りに練習をしております。唯一の怪我人はFWイヴィツァ・オリッチ。右太股の筋肉に異常を感じており、13日のブラジル戦は回避する予定です。

P1100834 バート・ブリュッケナウ(写真)はバイエルン地方にある5つの温泉の一つであり、浸かるのではなくて"飲む"温泉地であります。のどかな田舎町ですが、連日深夜にコンサートをガンガンやっているのが私の睡眠を妨げております(苦笑)
バート・ブリュッケナウは19世紀にバイエルン候ルードヴィヒ1世が夏の離宮として26度に渡って滞在し、愛人のローラと密会していた土地として知られています。市街でも西にあるルードヴィヒ1世の邸宅「フルステンホーフ」が現在はホテルとなっており、代表チームが貸切で宿泊しております。

クロアチア代表は12日にベルリンへと移動。オリンピック・スタディオンでブラジルと初戦を挑みます。予想されるスタメンは以下のようです。
GKプレティコサ-DFシミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFスルナ、トゥドール、コヴァチ兄、バビッチ-クラニチャール-FWプルショ、クラスニッチ

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2006年6月10日 (土)

親善試合「クロアチアvs.スペイン」

7日、ジュネーブのスタッデ・デ・ジュネーブで親善試合「スペインvs.クロアチア」が行われました。

P1110020 この試合をブラジル戦の前哨戦と位置づけているクロアチアですが、疲れとウイルス性の病気で消耗しているMFスルナが欠場。代わりの右MFとしてイェルコ・レコが起用されました。また右太股の筋肉に違和感を覚えているFWオリッチと、ウイルス性の病気を患っているGKディドゥリツァは遠征に参加しませんでした。

クロアチアのスタメン(3-4-1-2)は以下のようです。
GKプレティコサ-DFシミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFJ.レコ、トゥドール、コヴァチ兄、バビッチ-クラニチャール-FWプルショ、クラスニッチ
一方、現在21試合負けなしのスペインは以下のスタメン(4-2-3-1)。
GKレイナ-DFサルガド、プジョル、パブロ、ペルニア-MFシャビ、シャビ・アロンソ-ホアキン、ラウール、レジェス-ビージャ

P1110045 スペインの速いボール回しとホアキンの右サイドからのドリブルに翻弄される場面はありましたが、前半はほぼ互角の戦い。攻撃では玉際に強いプルショが軸となり、スペイン守備陣を撹乱しました。14分、クラニチャールのクロスボールにパブロがヘディングでオウンゴール、1-0とクロアチアがリードします。
スペインは18分にヴィジャのシュートは左ポストを叩き、31分にはサルガドの突破からチャビが放ったシュートはGKプレティコサの正面。クロアチアのリードで前半を終えました。

後半頭からスペインはフェルナンド・トーレス、セルヒオ・ラモス、ルイス・ガルシア、カニサレスを起用。クロアチアはR.コヴァチをベンチに下げて、トゥドールがリベロの位置に入り、ボランチとしてモドリッチを送り込みます。
スペインは攻撃の形は作れるものの、いつもの得点力不足に悩まされましたが、61分にペルニアが右サイドから放ったグラウンダーのFKがトゥドールの足に当たって方向が変り、1-1の同点に追いつきます。その後は次々と控え選手をピッチに送ったクロアチアが統制の取れないチームになる一方で、セスクやイニエスタという活きの良いMFを入れたスペインが完全にゲームをコントロール。選手層の差が出てしまいました。74分にはトーレスのPKをプレティコサが止める場面もありましたが、ロスタイムにラモスがゴール前に走りこんだトーレスにボールを送ると、トーレスはフェイントでボールを持ち変えて逆転シュートを叩きこみ、2-1とスペインが勝利を収めました。

ポーランド、スペインと連敗したわけですが、クロアチアが国際Aマッチで2連敗したのはこれで6度目。3連敗したことは歴史上一度もないわけですが、次の試合はワールドカップ初戦の6月13日ブラジル戦であります。

記者会見でズラトコ・クラニチャール監督は
「我々は敗北に値しなかった。互角に戦っていたし、試合が引き分けで終わった方が現実的だったろう。ニコ・クラニチャルのゴールが取り消され(※55分にイェルコ・レコの右クロスからニコがヘディングシュート。カニサレスはポスト脇でボールをキャッチした場面。映像を見たらラインを超えておらず)、ペナルティエリアで起きたイヴァン・ボシュニャクへのファウルも審判が笛を吹かなかった(※79分にイヴァン・レコの縦パスにボシュニャクが抜けたものの、シュートを打ち切れなかったシーン。ファウルは取られない状況でしょう)。2-0とリードしたならば試合は決まっていただろう。最後の15分は選手交替もあって押し切られてしまったが、スペインという強いチーム相手にもやっていけること我々は示した。しっかりと準備ができたと思うし、あとは選手をリフレッシュさせ、細かいミスを修正してワールドカップを迎える。」
とコメントしています。

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2006年6月 7日 (水)

親善試合「クロアチアvs.ポーランド」ほか

5月31日にドイツ入りし、ハノーバー、ヴォルフスブルクを経て現在はジュネーブへと来ています。
仕事の関係上でブログの更新が遅れてしまっていますが、遡って記事をまとめます。

P1100769 6月1日のハノーバー空港を経てヴォルフスブルク入りしたクロアチア代表一向でしたが(写真はクラニチャール監督)、この日に食べたクレームシュニテ(カスタードケーキ)が原因とされるウイルス性の病気が蔓延。オリッチ、バラバン、シミッチが2日の練習を休み、シェーリッチが練習を早退。夜にはプルショ、トマス、ディドゥリツァが発症しました。とりわけ吐き気と下痢の症状が酷かったらしく、私はヴォルフスブルクではクロアチア代表と同じホテルだったのですが、上記の選手達は見るからに気分が悪そうでした。

そんな状況で6月3日、ヴォルフスブルクのフォルクスワーゲン・アレーナで親善試合「クロアチアvs.ポーランド」を迎えました。ニコ・コヴァチはイラン戦で負った太股と背中の怪我、トゥドールが長男誕生のため特別休暇を貰っていて欠場。回復の兆しにあるシミッチとオリッチは先発出場しました。回復傾向にあるブティナ、そして左膝を痛めていたシムニッチも復帰しています。
スタメンは(3-4-1-2)は以下のようです。

一方のポーランドのスタメン(4-2-3-1)は以下のようです。
GKボルツ-DFバシチンスキ、ヨプ、ボンク、ジェブワコフ-MFソボレフスキ、ラドムスキ-スモラレク、シムコヴィアク、クルジノヴェク-FWジュラフスキ

P1100824_1  クロアチアはゲームを支配するものの、得意のサイド攻撃をポーランドの組織だったディフェンスに防がれ、中央攻撃ではパスミスの連続。アルゼンチン戦では機能したクラニチャール-モドリッチのコンビも歯切れが悪く、またヴラニェシュも簡単にボールを奪われてポーランドにカウンターの形を作られてしまいました。またオリッチもいつものようなスプリントが見られず、好調なクラスニッチにゴールチャンスとなるボールも届きませんでした。
22分、クラニチャールから放った35mの左FKからゴール前でシミッチが合わせたもののGKボルツがセーブ。弾かれたボールにモドリッチが詰め切れませんでした。26分、スモラレクと左右のポジションを変えていたクルジノヴェクが中央に切れ込んで強烈なミドルシュートを放ちますが、これはGKブティナの正面。
42分、スルナの右30mの位置からのFKはGKボルツの手に触れたのち、クロスバーに叩かれます。44分にはクラニチャールが右サイドからドリブルでソボレフスキをかわしてシュートを放ちますが、ボールは枠を捕らえきれませんでした。

後半頭から、オーストリア戦とイラン戦で出場機会を得られなかった選手も投入。初めて代表でモドリッチがトップ下に入る以下の布陣となりました。
GKプレティコサ-DFシミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFブリャト、ヴラニェシュ、イヴァン・レコ、バビッチ-モドリッチ-FWボシュニャク、クラスニッチ
レコが中央でボールを落ち着かせ、左右に散らせることで中盤も安定します。49分、レコから縦パスがボシュニャクに通るものの、右足のシュートはポスト左に逸れていきます。
けれども先制したのはポーランドでした。53分、ジュラフスキの左CKにファーサイドでフリーだったスモラレクがヘディングシュートを叩きつけてゴールを奪います。60分にもクルジノヴェクのお膳立てでスモラレクがシュートを放ちますが、ボールはバーの上へ。
クロアチアは64分、ブリャトの右からアーリークロスを入れますが、ボシュニャクのヘディングシュートは再び枠を捕らえられず。72分、モドリッチが左から中へとスライドして放ったシュートはDFに止められ、ロスタイムに途中交替のバラバンがミドルシュートを放つもののGK正面。それ以外には大きな見せ場もなく0-1と敗れてしまいました。

クロアチア代表のクラニチャール監督は
「私たちが試合を通して支配していたのは事実だ。オーガナイズされた上、辛抱強さを持っての素晴らしいプレーを私たちはやれた。チャンスは作ったものの決めることができなかった。私たちはオーストリア戦、イラン戦、ポーランド戦のために準備してきたわけではないし、この次のスペイン戦のために準備しているのではない。あくまでブラジル、日本、オーストラリア戦に向けての準備だ。本大会では準備が出来ているし、ドイツから帰国するのは早くとも6月28日(決勝トーナメント1回戦)だと信じている。」
とコメントしています。

P1100860 クロアチア代表は4日にフルーダという町でクロアチア・オールスターチームと対戦。試合は5-0でクロアチア代表が勝利しました。チャリティの意味合いもあった試合でしたが、観客は予想を下回る5000人ほど。オールスターチームには、元クロアチア代表のトミスラフ・マリッチや元ドイツ代表のフレディ・ボビッチらもプレーしました。
試合後、同日にバート・ブリュッケナウに到着したクロアチア代表は5日午前はランニングとフィットネスの軽めのメニュー。夕方にはバート・ブリュッケナウでの歓迎式典に参加し(写真)、夜にはニュルンベルクに移動して宿泊。6日にニュルンベルクからチャーター機でジュネーブ入りし、7日のスペイン戦を迎えます。

スペイン戦に挑むクロアチア代表のスタメンは以下のように発表されています。
GKプレティコサ-(右から)DFシミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFスルナ、トゥドール、コヴァチ兄、バビッチ-クラニチャール-FWクラスニッチ、プルショ

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2006年6月 1日 (木)

親善試合「クロアチアvs.イラン」

5月28日、オシエクのグラツキ・ヴルト・スタジアムで親善試合「クロアチアvs.イラン」が行われました。ワールドカップ前では唯一国内で行われる親善試合であり、オシエクでは4年ぶりの代表試合となるためチケットは完売。約2万人の観客で埋め尽くされました。

P1100751 クロアチアのスタメンはオーストリア戦で全く同じ。守備的MFのトゥドール、コヴァチ兄は前々日まで別メニューをこなしていただけに正直なところ無理な起用といえましょう。GKブティナはまだ調整不足、DFシムニッチは左膝の故障のため外れました。スタメン(3-4-1-2)は以下のようです。
GKプレティコサ-(右から)DFシミッチ、コヴァチ弟、トマス-MFスルナ、トゥドール、コヴァチ兄、バビッチ-クラニチャール-FWプルショ、クラスニッチ
クロアチア人指揮官ブランコ・イヴァンコヴィッチ氏が指揮するイラン代表は、右MFマハダビキアが背中の怪我で欠場。スタメン(4-4-2)は以下のようでした。
GKミルザプール-(右から)DFカエビ、ゴルモハマディ、レザエイ、ノスラティ-MFティムリアン、ザンディ、ネクナム、カリミ-FWダエイ、ハシェミアン

序盤は拮抗した両チームでしたが、次第にアグレッシブな守備を見せるクロアチアが主導権を握ります。左のバビッチ、右のスルナによる攻撃が冴え、とりわけスルナとカリミのマッチアップは親善試合の枠を超えた激しいものとなりました。
16分、ニコを基点にクラスニッチ、バビッチと中央でパスが繋がり、バビッチは左から突っ込んだプルショへとスルーパス。プルショのシュートはDFレザエイに防がれます。20分にはスルナの右FKにトゥドールがシュートするもののGK正面を突きました。
P1100759 均衡が破れたのは21分、それまで劣勢だったイランはハシェミアンによる左サイドのドリブルでDFラインがずるずると後退し、ペナルティエリアのノスラティへ。シュートは蹴り損なったものの、ファーポストにいたカリミへと届き、これを叩きこんでイランが先制します。この時にニコ・コヴァチが太股の張りのため負傷退場、ヴラニェシュが代わりに入りました。
29分、スルナの右CKにクラスニッチが至近距離でシュートするもののゴールラインにいたカエビがクリアに成功。決定機を失敗し続けたクロアチアでしたが、31分、ヴラニェシュがスペースへと走りこんで右クロスを上げると、ブレーメンでのチームメイトであるクラスニッチがファーサイドでヘディングで落とし、クラニチャールがチョコンと足で背後へと流したところへプルショがズドンとシュートを決めて同点に追いつきます。
試合開始前は晴天だったもののゴール直後から10分ほど大雨にたたられ、スタンドに屋根のないスタジアムだけに観客はびしょ濡れとなりました。一方、イランは34分にカリミが右からシュートを放つも左ポストを逸れ、42分にはダエイのミドルレンジによるシュートもバーを越えていきました。

右足首の調子が良くないトゥドールに代えて左の守備的MFにモドリッチ、同じく膝に違和感を覚えたトマスに代えてトキッチが後半頭から起用されます。イランも前半で負傷したカリミとザンディが交代。
55分にモドリッチのスルーパスからクラスニッチのシュート、56分にはバビッチの左CKからヴラニェシュのヘディングシュート、58分にはスルナの右サイドからの強烈なシュートが放たれますが、全てGKとDFが好反応でクリアします。
後半は司令塔クラニチャールが雑なプレーに終始。クラニチャールのパスミスや技の失敗の度にスタンドからは大ブーイングが浴びせられました。イランは俊足FWのボルハニとカゼミアンを投入し、カウンター攻撃に徹していきます。
67分、コヴァチ弟とプレティコサの間で連携ミスが起き、無人のゴールに向けてネクナムがループシュートを放つもののボールは枠を捉えることができませんでした。82分、今度はトキッチが自陣内での不用意なサイドパスをボルハニがカットすると、そのままフェイクを入れてシュートを決めてイランが勝ち越しに成功します。
クロアチアの守備崩壊はまだ続き、87分にマダンチがあっさりとスルーパスからGKと一対一となりますが、誤審によるオフサイドで取り消されます。ロスタイムは異様に長い5分。94分、前方へと蹴り込まれたボールをGKミルザプールがファンブルしたところにオリッチが突っ込み、ミルザプールが足を掴んだとしてPKの判定。これをバビッチが決めて何とか同点に追いつくことに成功してタイムアップ。
クロアチアの審判団に助けられた後味悪い試合となりました。国際試合では第三国が笛を吹くのが常識ですが、核問題で揺れるイランはスイスやチュニジアと予定していた親善試合がキャンセルされるなど国際社会から締め出されつつあります。この試合で主審を務めたのは国際審判であり、クロアチアで名物審判であるジェリコ・シリッチ氏。シリッチ氏は定年を迎え、クロアチアvs.イラン戦が引退試合でありました。地元オシエクの出身だけに、最後はクロアチアへの大サービスということかもしれません(苦笑)

P1100724 試合後、ズラトコ・クラニチャール監督は記者会見にて
「調子を上げなくてはならない選手を知るために、現段階でこの親善試合を迎えたことはとても有難い。選手達は疲れていた。前半の私たちは高いリズムでとても良かったが、後半はリズムが落ちてしまった。でも私は本当に満足している。」
とコメント。お粗末なプレーで観客のブーイングの対象となったニコの出来について聞かれると
「全員がワールドカップに向けて調子を上げる必要がある。しかし、ニコのプレーについては満足している。私が要求していたことをこなしていたからね。」
と語り、クロアチアのジャーナリストの中ではため息が出てました。またニコに対してのブーイングの起きたこと自体を聞かれても、
「私達が望んでいた全てを彼は実現していたし、ミスはあったとはいえプレーの質はまずまずだった。」
と回答の焦点をずらしてしまいました。
ニコ・クラニチャールは試合後のコメントで
「我々は本当の姿ではなかった。プレーの中で私たちは数多くのミスをしたが、ドイツで起こるよりは今に起こった方が良いだろう」
と語り、自分のプレーについては触れませんでした。

またイランのイヴァンコヴィッチ監督は
「プレー内容と結果で私はとりわけ気分がいいよ。クロアチアは高く評価され、野心のある相手国のホームにて2-2で終えたことは、選手とっても大きな自信となるだろう。試合の終わりに起きた出来事はコメントできない。ある人はPKは存在したと言うし、ある人は逆を断言している。私はシリッチの判定に不幸を感じた自分の選手達のことを信じている。でも私はシリッチの豊富なキャリアを祝福したいし、今後のスポーツ人生の幸運を願っているよ。」
とコメントしています。

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