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2007年7月10日 (火)

グループリーグ初戦ののち~17年前のオシムの発言を振り返る

アジアカップが開幕し、日本は初戦のカタールに引き分け。こちらからメディアやネットをチェックしていると、随分と世論でパニックが起きているように思えます。
6月29日に私が翻訳を手掛けたオシムの手記「日本人よ!」(新潮社)が発売されましたが、その制作を前に過去の新聞資料を色々と当たりました。

Sosim2_1  振り返ること17年前。1990年にイタリアで開催されたFIFAワールドカップで、オシム率いるユーゴスラビア代表はベスト8まで勝ち進みました。準々決勝のアルゼンチン戦でPK戦に負けてしまいましたが、民族対立のために国情が不安定で、かつ大会前からメディアに対しては四面楚歌だったにもかかわらずで、チームを戦う集団としてまとめ上げたのが紛れもないオシムでありました。
そのユーゴスラビア、グループリーグ初戦のドイツ戦ではサヴィチェヴィッチ、スシッチ、ストイコヴィッチら攻撃的MFをずらり並べ、後半55分にはプロシネツキまでも投入したものの、マテウスの2ゴールをはじめ、クリンスマン、ブレーメにシュートを決められて1-4と完敗。
しかしながら、次の難敵コロンビア相手には3人の新たな選手を加え、76分にヨジッチのゴールで1-0と勝利、以後チームは波にのることになります。
アジアカップとは状況が違うとはいえ、一つのスタディケースとして、ドイツ戦とコロンビア戦の2試合間におけるオシムの発言を取り上げてみようと思います。

(ドイツ戦直後の記者会見 [1990年6月11日])
「長きに渡って記憶するだろう然るべきレッスンを我々は受けた。誤った時期に、我々は強すぎる相手に飛び込んでいったのだ。我々の"芸術家"たちは、コンプリートな選手をも加えた労働者相手(ドイツ)に通用しないことが示されたのだよ。
我々の選手とドイツの選手の考え方は全く逆だ。自分たちが最高だと思い、同等に戦おうとしたけれども、相手はしっかりとチームを形成し、更に良くて強かったということだ。
現時点は非常にデリケートな状況だ。なぜなら、待ち構えているコロンビアの試合は、"全てか、あるいは無か"という戦いをせねばならないからだ。我に戻る必要がある。全ての敗北から本当の結論をももたらす必要があり、間違いなく変化をももたらすだろう。まずは正直になろう。今夜はまだ上手く切り抜けたほうだと。」

(ドイツ戦から一日開けて)
「誰もが初戦で多くを期待していたが、今の彼らでは無理であると誰もが目にすることになった。だから誰もが失望し、"ノックアウト"されてしまったのだよ。
私たちは選手を叩き起こし、積極性とスピードに向かわせなければならない。走る必要があるのだ。エンターテイメントとは何か、エレガントととは何かなどと根拠なしに論じるのではなく。ここでは、生きるか死ぬかの戦いをしているのだ!」

(試合前日)
「(スタメンの変更を聞かれ)
それは君たちで予想してくれ! 私は完全に決定を下していない。決定は単純ではないのだよ。これまで非難を浴びることはないと思っていたレギュラー陣に緊張感が漂っているのは良いことだ。
Sosim コロンビア戦は第一に勝たねばならない試合であり、また負けることが許されない試合だ。グループの他の試合に関連して、この先は勝点3だけでなく、勝点2で抜ける可能性がある(※当時は勝って勝点2、引分で勝点1)。なぜ自分たちに対してバルカンの頑固ぶりを押し付けなくてはいけなのだのね!?
流動性があり、スピードがあり、犠牲の準備ができ、"死ぬ"準備ができた布陣が私たちにはまさしく必要だ。もしかしたら、アトラクティブに機能しないかもしれないが、アトラクティブさは二次的なものだ。重要なのは、私たちが静まり返るのではなく、眠っているのではなく、麻痺しないことなのだよ。
そんな仕事に向いているのは、ここ数日に名前が挙がってきた選手たち(サバナゾヴィッチ、スタノイコヴィッチ、ブルノヴィッチ)だ。今までプレーしてきた選手たちの方が客観的に良いかもしれないが、彼らは紳士的に振る舞い始めたような印象がある。パッションを失い、"手袋"を見につけているかのような振る舞いをね。
命令する側の仕事には、もっと"人間臭い"ものがある。一度の敗北のあとは全てが人間臭く変わってしまうものだか、なぜ選手たちや、そして自分を疑わなくてはいけないのだね? それはパニックの兆候となりえてしまう。パニックは最悪の"協力者"なのだ……。」

「もっとリスクを持って戦うつもりだ。それは"愚か"という意味ではない。個々がアクションをシンプルにする必要があるし、より大きなコレクティブさが個々には必要だ。ワールドカップにおいて、私たち以外に"ボールと戯れる"ような国があるというのかね? 
つまり、守備と攻撃と両極面で更に効果的になるという意味だ。あっさりとゴールを食らうだけではなく、頭が痛くなるようなギミックにこだわるのではなくてね! 
カメルーンやコスタリカ、エジプトの選手たちは、必要ならば力強い犠牲心や疲労からでも燃え上がろうとする。足元が崩れたとしても、頭で相手のスパイクやゴールポスト、全てに向かっていく。しかし、我々の選手たちは? 背中を向けて、隠れているだけじゃないか!」

(コロンビア戦後のコメント [1990年6月15日])
「難しい試合だった。プレーはもっと難しかった。ドイツとの大敗ののち、我々は攻撃せねばならないと同時に、最大限の注意を払わねばならなかった。何とかその両方を結びつけることに成功したのだよ。私たちの勝利に批判はないと思う。
試合前は選手たちを落ち着ける必要があった。ある選手は興奮から一晩中、目を閉じることができなかった。とはいえ、大事なことは初戦のミスを繰り返さないことだ。この試合は最後における最難関のテストだった。そのテストに合格することに我々は成功したのだよ。
(布陣を変更したことについて)
以前のようでは無理だった。全員がどれだけ走ったのか、どれだけ戦ったのか見てやってくれ。この試合では全員が第一に結果のためにプレーした。芸術的な印象というのは"演奏における最後の穴"なのだよ。つまり、"芸術家"が多すぎることは、ここにおいて求めるものは無い。それが誰かにとって、正しいか正しくないかということだった。
いつも通り、選手個々の成果については話すつもりはない。前半においては、選手がお互いに要求をしっかりと交わしていたということは言及しておく。それは理解しえることだ。なぜなら、今まで一緒にやったことがなかった布陣だったからね。」

ちなみにユーゴスラビアのグループリーグ第3戦は奇しくも、次の日本の対戦相手と同じUAE戦であります。結果は4-1で圧勝。布陣では第2戦のコロンビア戦と同様に、労働者タイプのサバナゾヴィッチ、スタノイコヴィッチ、ブルノヴィッチが起用されています。

(インタビュー・写真はいずれもSportske Novosti紙)

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コメント

初めまして。
2006WC開幕直前くらいからの読者です。
今回は興味深く読ませていただきました。
敗戦に際し、同じようなコメントを選手&マスコミに送っているのですね。
メンバー云々ということは差し置き、試合に臨んだらプライドをかけて死ぬ気で戦えという事だと思います。
日本代表もその気概を持てばもっと強くなるでしょう。

私はいい年こいてますが、カタール戦後、女房に「ベトナムに行ってくる」と宣言し社員や取引先を困らせ、「オシムが解任になるようなことがあったら、サッカーはもう見ない」と公言しています。
今はオシム監督を信じる他はない・・そんな心境です。

投稿: モル蔵 | 2007年7月12日 (木) 11時43分

カタール戦後からUAE戦までは重圧のかかる日々だったでしょう。
オシムはマスメディアを利用して、自分に(持論が良いのか悪いのか)自問自答しているようにも見受けられます。
(それに振り回されている日本のマスメディアは滑稽ですが)

彼はゲーム途中の采配で勝負する監督ではなく、スタメンで答えを出して、その答えをそのまま押し通したいようなので、ゲームの入り方が不味いと、かならず苦戦するのが今のところのオシムの傾向ですね。変更をあまり好まないから、選手交代がさほど効果的でないのも頷けます。

とりあえず、UAE戦は指揮官の進退がかかる試合でしたが、見事に勝ちきりました。試合後のインタビューでオシムも言ってましたが、監督のおかげではなく、選手のおかげですね。あと、あのタイ人主審も日本の勝利に大きく貢献したかと。

投稿: 徒然 | 2007年7月14日 (土) 10時26分

>スタメンで答えを出して、その答えをそのまま押し通したいようなので、ゲームの入り方が不味いと、かならず苦戦するのが今のところのオシムの傾向ですね。


千葉時代をあんまり知らないでしょ

投稿: 名無し | 2007年7月14日 (土) 21時43分

>スタメンで答えを出して、その答えをそのまま押し通したいようなので、
前半同意、後半まったく同意できない。
千葉でも代表でも、スタメンで少し実験して、機能すればそれでよし、うまくいかないと選手交代で帳尻合わすって感じ。
そのまま押し通すなら、稲本90分トップ下だよw

投稿: rmc | 2007年7月14日 (土) 23時35分

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