クロアチア・リーグ2007/08シーズン開幕
7月20日、17シーズン目となるクロアチア・リーグ2007/2008シーズンが開幕しました。
今季は通信会社のT-COMがメインスポンサーとなったことから「T-COMクロアチア一部リーグ」という正式名称となります。全クラブが年金生活者とその孫は入場無料にし、またディナモは従来のチケットを半額にす るなど、観客拡大を狙っております。
開幕戦の中でも皮切りとなったのは、インテル・ザプレシッチvs.リエカとのナイトゲーム。インテルの試合取材は一年以上ぶりですが、今季はディナモやNKザグレブと日程が重ならないよう、ホームの試合は金曜日に前倒しされます。リエカ・サポーターのアルマダも含め、2500人の観客が集まりました。(写真はクーケッツ[左]とニーノ・ブーレ[右])
初代クロアチア・カップ王者でもあり、2004/05シーズンには2位になったインテルは、2005/06シーズンに不振を極めて二部に落ちてしまったものの、わずか一年で一部に戻ってきました。
ザグレブ郊外にあるインテル・ザプレシッチは過去にもエドゥアルドやモドリッチ、チョルルカ、チャレ、トミッチらがディナモからレンタルされ、そこで経験を培ったのですが、今季もFWパンデフ、MFシャリッチ、MFグルグロヴィッチ、DFクウェディ、DFロヴレン、GKシャルリヤ、GKヴラニッチらがディナモからレンタル。
一方のリエカは、金も出すけど口も出すイェジッチ会長がチームをテコ入れ。昨季までヴァルテクスを指揮したダリッチ新監督を迎え、FWヂャロヴィッチ、MFシャファリッチ、MFシュコーロ、DFマルチッチらを補強しました。 前半はタレントで上回るリエカが主導権を握るものの、U-21代表のクーケッツとシャリッチのインテル・コンビがチャンスを演出。8分、19分、42分とチャンスを迎えますが、ゴールに至りません。
リエカのプレーメーカーは、20歳でキャプテンを任されたMFアナス・シャルビーニ(写真左・昨季のリーグ得点ランク2位のアフマド・シャルビーニの弟)。前半は幾度となく厳しいチェックに倒された彼でありますが、63分、シャファリッチがFKでボールを放り込むことなく、グラウンダーでシャルビーニへ縦パスを通すと、シャルビーニはDF陣をすり抜けてコールを探りミドルシュート。これがズバリとゴール左隅に決まり、リエカが先制に成功します。
それからはインテルが攻め、リエカが守る図式となり、70分にスクリッチがヘディングシュートを試みるも、GKジリッチが好セーブ。85分にもスクリッチがヘディングシュートをしますが、クロスボーを超えていきました。プレーそのものは印象的ではなかったとはいえ、リエカが1-0で手堅い勝利を収めています。
一日明けて21日、昨季の王者ディナモ・ザグレブがホームのマクシミール・スタディオンでシベニクを迎えての開幕戦を行いました。17日のチャンピオンズ・リーグ予備戦一回戦・対ハザール(アゼルバイジャン)戦ではお粗末な戦いをしましたが、この試合はショコタに代えてマンジュキッチをセカンドトップに、シルデンフェルドをセンターバックに戻し、アキレス腱に怪我を抱えるチョルルカに代えてエトーを右サイドバックに入れました。 昨季は一部昇格したばかりにかかわらず、ディナモに唯一の土をつけ、リーグ4位と躍進したシベニクですが、昨季のチームから11人もの選手が離脱し、今季は無名の選手中心で戦わざるえません。監督もボスニア・ヘルツェゴビナのシロキ・ブリイェグを指揮したカリニッチに代わっております。
ディナモとアウェーで戦うチームは、比較的ゴール前を固めることが多いのですが、今日のシベニクは攻撃にも重きを置いた分、サミールやモドリッチ、マンジュキッチといったドリブルが得意なディナモの選手にスペースを突かれてしまいます。
10分、サミールがペナルティエリアに侵入したところをボナチッチに倒されてPKを得ると、今季からキャプテンマークをつけるモドリッチ(写真)が左にしっかりと決め、ディナモが先制します。
29分にはサミールがダイアゴナル・パスをペナルティエリアへ飛び込むマンジュキッチに通し、胸トラップで落としてから、飛び込むGKスラヴィツァを超えるループシュートを決めます。ザグレブに150万ユーロの移籍金を払ってまで獲得したマンジュキッチですが、マクシミールの本拠地デビューでいきなり得点を決めただけでなく、前線での積極的な守備参加をするなど、首脳陣やサポーターを満足される働きをしました。
シベニクも31分、ヴィタイッチの強烈なFKを放つものの、新加入のドイツ人GKコッホがパンチング。こぼれ弾をヤムブルシッチが押し込もうとするも、これもコッホが素晴らしい反応でセーブします。 後半もディナモのペース。47分、マンジュキッチとのワンツーで縦へと抜けたエトーからマイナスの折り返しを、エリア内へと飛び込んできたモドリッチがそのままゴール左上にゴールを叩き込んで3-0。モドリッチにとってはプロになって初の一試合2ゴールとなりました。
67分、モドリッチとのワンツーで左サイドを突破したチャレの折り返しから、ペナルティエリアのサミール(写真右)がゴールを決めて4-0。イヴァンコヴィッチ監督が溺愛する20歳のブラジル人MFサミールは、この試合でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれました。
締め括りはロスタイム、マンジュキッチとのワンツーからボールをもらったヴコイェヴィッチが、ディフェンス陣に囲まれながらもミドルシュートを決めて5-0。
エドゥアルドがアーセナルに移籍したために決定力不足が心配されたディナモですが、この試合でその心配を払拭した感があります。
22日、昨季2位のハイドゥク・スプリトは、同じく一部昇格のザダールとアウェーで対戦しました。
ラストパスを送れる前ルーマニア代表MFチェルナトを加えたとはいえ、この試合では決定力不足を露呈。ザダールのボランチ二枚と最終ラインで形成された守備ブロックに、チェルナトとツートップのルカビナ、カリニッチを止められてしまいます。
それでもハイドゥクは4分、ルカビナのアシストからカリニッチがシュート。しかし、ボールはポストを左ポストをわずかに逸れます。11分にはルカビナのヘディングシュートを試みるものの、GKスバシッチが好反応でパンチングします。
後半のハイドゥクは更に攻撃的になるもののチャンスは前半よりも乏しく、57分にはアンドリッチが決定機を外し、63分のチェルナトのシュートもチームメートのカリニッチに当たるなどチグハグ。
ザダールも65分にバトゥリナ、その2分後にはエレズがチャンスを決められず、スコアレスドローに終わりました。
ハイドゥクは先のUEFAカップ予備戦一回戦の対ブドゥチノスト戦で、選手登録したはずのMFガブリッチが、間に入ったクロアチア・サッカー協会の手違いにリストに掲載されず、レギュレーション違反で0-3で敗北という裁定をUEFAが下す可能性もあり、開幕早々、不穏なムードに包まれています。
昨季3位のザグレブはアウェーにてメヂュムリエと対戦。
インタートトカップではあっさりと一回戦で敗退し、FWマンジュキッチとDFヴルドリャクをディナモに引き抜かれたザグレブでありますが、ブラジェヴィッチ監督はMFカルテロを加えるなどチームの立て直しを図っています。
この試合では、昨季のリーグ3位の得点を決めた元セレッソのロヴレクが、33分、78分とゴールを決めて3-0と快勝しております。
全試合の結果はこちら。
(7/20)
Inter Zapresic - Rijeka 0:1
0:1 64' Sharbini
(7/21)
Cibalia Vinkovci - Varteks Varazdin 1:0
1:0 26' Bagaric (PK)
Medimurje - Zagreb 0:3
0:1 17' Topic (OG)
0:2 33' Lovrek
0:3 82' Lovrek
Dinamo Zagreb - Sibenik 5:0
1:0 9' Modric (PK)
2:0 28' Mandzukic
3:0 47' Modric
4:0 67' Sammir
5:0 90' Vukojevic
(7/22)
Zadar - Hajduk Split 0:0
Osijek - Slaven Belupo 1:0
1:0 61' Babic (PK)
ディナモvs.シベニク戦後のプレスコンファレンスののち、ディナモのイヴァンコヴィッチ監督(写真)とアジアカップに関して話す機会がありました。
イヴァンコヴィッチはイラン代表監督として2004年アジアカップ(3位)、2006年ワールドカップを指揮し、昨年5月のクロアチアvs.イランの親善試合でインタビューしたこともあって顔見知りなわけですが、アジアカップの動向を追っているか聞いたところ、「もちろん」との声が返ってきました。
ただ、日本vs.オーストラリア戦の結果は聞いておらず、1-1のあとPK戦で日本が勝利したことを伝えると、
「オーストラリアを倒したとなると、もう日本が最大の本命だね。」
と語ってくれました。今日のイランと韓国の戦いも気にしているようでした。
またインテルvs.リエカ戦の前にはニーノ・ブーレ(写真)が声を掛けてきました。彼も以前にインタビューをしたことから顔見知りであります。スタジアム隣接の喫茶店で雑談をしました。
昨シーズンはサポーターに喧嘩を売られ、チーム退団をほのめかしていた彼ですが、今ではすっかりサポーターとの関係は落ち着いたそうです。チームメイトのGKラドマンとMFマルキッチも一緒で、彼らに日本の想い出話を聞かせておりました。
試合ではベンチスタートだったものの、61分に途中交替で左ウィンガーとして出場。彼が入った2分後に決勝点が生まれました。コンディションも良いようで、もう一度、Jリーグでプレーしたいと言っておりました。
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コメント
いつも楽しんで読まさせてもらってます。ちょっとだけ質問させてください。
日本では北京五輪アジア2次予選最終戦のマレーシア戦(6月6日、東京・国立)の入場料金を大幅に値下げしましたが、それをセルジオ越後さんが痛烈に批判していて、私も同意です。
セルジオ越後 ちゃんとサッカーしなさい
「五輪代表の“バーゲン”連鎖が心配」
http://blog.nikkansports.com/soccer/sergio/archives/2007/05/post_72.html
日本とクロアチアでは事情がだいぶ違うのでしょうが、
> 全クラブが年金生活者とその孫は入場無料にし、またディナモは従来のチケットを半額にす るなど、観客拡大を狙っております。
というのはクロアチアではどのように捉えられているのでしょうか。
それと、日本ではオーストラリアに勝って盛り上がってますが、ビドゥカがクロアチアリーグでプレイしていたこと、ボバン氏の引退記念試合に出場してたこと、その試合で一方の監督をオシム監督がやっていたこと、というのを、afc asiancup の公式ページにあったビドゥカの(日本戦前日の)コメントから知りました。
投稿: 通りすがりです。 | 2007年7月23日 (月) 10時33分
楽しく読ませてもらってます。
ニーノ・ブーレお茶目ですね。
また日本に来てほしい!
投稿: donetsk | 2007年7月23日 (月) 14時35分
セルジオ越後氏の批判はもっぱら「批判のための批判」で、その記事の論調も「マルクスの労働価値説」みたいですね(笑)
クロアチアは独立以後、フーリガニズム問題やレベルの低下によってスタジアム離れが酷く、かつてのユーゴ・リーグ時代のように頻繁にスタジアムが埋まることはなくなりました。
そんなユーゴ・リーグ時代を知るオールドファン(年金生活者)と、ファンの裾野を広げるための子供たち(孫)に無料で門戸を開く、というのが今回の狙いです。こちらの子供もインターネットやテレビゲームに冒されておりますので、スタジアムに気軽に足を運んでサッカーの楽しさを知ってもらいたいと考えており、クロアチア一部リーグ会長のシュティマッツも自ら身体を張って「スタジアムに行こう」というCMに出ています。
とはいえ、土曜日のディナモvs.シベニク戦は、気温の高さとテレビ放映があるため、年金生活者と孫に開放されたメインスタンド上段は100~200人ぐらいしか入ってませんでした。
まだまだ観客を取り戻すには時間が掛かるかもしれませんね。
ボバンの引退試合、オシムの写真はないのですが、ここに私のレポートがあります。あの試合では同じくユーゴの名将イヴィッチと共にワールドスターズを指揮していました。
http://nagoya.cool.ne.jp/hrvgo/boban/bobanday2.htm
投稿: 長束恭行 | 2007年7月23日 (月) 16時41分
質問させてもらったものです。お答えいただき、ありがとうございました。かなり遅レスですが。
>クロアチアは独立以後、フーリガニズム問題やレベルの低下によってスタジアム離れが酷く、、、、、
なるほど、いろいろあるのですね、、、、。クロアチアの子供達の多くがスタジアムに足を運んでくれることを祈ってます。
投稿: 通りすがりです。 | 2007年7月27日 (金) 00時51分