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2007年10月15日 (月)

EURO出場に繋がる勝利/クロアチアvs.イスラエル

10月13日、ザグレブのマクシミール・スタディオンで、欧州選手権予選「クロアチアvs.イスラエル」戦が行われました。
この試合に勝てば本大会出場をほぼ手中に収めるということもあり事前の関心は高く、クロアチア国内や国外在住のクロアチア人のサポーターを含めた約30000人の観客が集まりました。

Shrvatskaisrael今回のクロアチア代表は怪我人に泣かされ、主将のMFニコ・コヴァチをはじめ、FWのペトリッチ、バラバン、ブダンが欠場。エドゥアルドとオリッチのバックアッパーとなるFWは今回初選出の19歳カリニッチのみ。望みの綱、エドゥアルドも怪我から開けたばかりで本調子ではないという厳しい事情を抱えておりました。メンバーは以下のようです(システムは4-4-2)
GKプレティコサ-(右から)DFチョルルカ、シミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFスルナ、レコ、モドリッチ、クラニチャール-FWエドゥアルド、オリッチ

一方のイスラエルは、この試合で勝利を収めなければ本大会出場の望みが消えるのですが、こちらは更に厳しい台所事情。GKアワト、DFジヴとベナルドの3人が累積警告、エースストライカーのFWコッラウティ、MFタル、ザンドベルグ、バディールら10人近くが怪我や不調で外れ、これまでと全く違うメンバーでカシュタン監督はチームを構成してきました。ただ、リバプールに所属する司令塔ベナユンとチェルシーのDFベンハイムは先発出場しています(システムは4-4-1-1)。
GKダヴィドヴィッチ-DFメシュマル、ゲルション、ベンハイム、アンテビ-MFバルチアン、アルベルマン、コヘン、ベナユン-FWバルダ-バリリ

普段は周囲とのコンビネーションを絡めて前線に上がるエドゥアルドの動きが重くピッチから消えてしまい、ペトリッチに代わって出場したオリッチは走っても走っても大事なところではボールを奪われる相変わらずのプレースタイル。またクラニチャールはウォーミングアップ中に股関節に違和感を覚えながら無理を押して出場したためにパスミスやトラップミスが目立ち、左からの攻撃が思うようにいきません。
急造チームで崩し易しと思えたイスラエルですが、ボールホルダーを激しくチェックし、パスの貰い手に対しても当たって奪いに行くアグレッシブかつ組織的な守備が功を奏します。攻撃面では主将のベナユンが一人だけクラスの違いを見せましたが、浅いラインを敷くクロアチアの守備陣もGKプレティコサまで相手を届かせません。
Shrvatskaisrael2 クロアチアの最初のチャンスは16分、スルナの右CKからレコがヘディングしたボールがオリッチの足元に来ますが、オリッチはシュートをGKダヴィドヴィッチの正面に蹴り込んでしまいます(写真)。
そんな中、クロアチアの攻撃の核となったのは右MFのスルナ。チョルルカとのコンビネーションを絡めながら持ち前の突破力でチャンスを作り出します。27分、そのスルナが右サイドで次々とイスラエルの選手をかわし、折り返したところをレコがミドルシュートを放ちますが、ボールは大きく枠を逸れてしまいました。
40分にはオリッチがペナルティエリアでクリアミスのボールをかっさらいましたが、雑なシュートを打ってチャンスを台無しにしてしまいます。
またこの日のドイツ人のスタルク主審と副審二人には基準がはっきりしない笛や誤審が多く、前半終了間際は滅多に怒らないエドゥアルドが判定に抗議し、イエローカードを食らってしまいました。

ビリッチ監督は左右のバランスを考慮し、左MFのクラニチャールを外して突破力のあるプラニッチを後半頭から投入。また選手たちにはアグレッシブな姿勢で入るよう指示します。
開始早々、中央のスルナから斜め左のモドリッチに渡り、3人を引きつけてからゴール前のエドゥアルドへ。エドゥアルドはノートラップでゴール左にシュートを狙いましたが、彼らしくなくボールはポストを逸れてしまいます。
Strenutak_eduardovog_gola しかしながら52分、エドゥアルドは彼本来の価値を見せつけます。右サイドでスルナがオーバーラップした背後のチョルルカにボールを戻すと、チョルルカはDFラインとGKの間に落ちるアーリークロス。ディナモ時代のチームメイトからクロスボールが上がると察知したエドゥアルドは、マーカーのベンハイムよりも早い反応で抜け出し、そのまま左足でダイビングボレー(写真)。ボールはGKダヴィドヴィッチの手を弾きながらネット右に突き刺さり、クロアチアが先制に成功します。エドゥアルドは今回の予選で10ゴール目。通算18試合で13ゴールはシュケルより早いゴールペースです(ゴール率72.2%、シュケルは69試合45ゴールで65.2%)。
その4分後にはスルナの右CKからフリーの状態でボールをもらったモドリッチが斜めからのシュート。ゴール前のエドゥアルドかチョルルカが触れて角度を変えれば得点が決まりましたが、そのままボールはスルーしてしまいます。
Szagljaj_nakon_tekme 前半は枠内シュートがゼロだったイスラエルも60分、ベナユンが一人でドリブルで崩し、最後はマーカーを外して右下隅を狙ったミドルシュートを放ちますが、これはプレティコサが好セーブを見せます。
クロアチアは攻撃面で大きなチャンスを生み出せないとは言えど、守備面で集中力が切れることなく、苦しみながらも最小スコアの1-0で貴重な勝利を収めました。
17日のロシアvs.イングランド戦でイングランドが勝利か引分けを収めれば2位以内に入ることが確定し、本大会出場が決定。もしロシアが勝ったとしても、マケドニアかイングランドとのアウェー戦で勝点1以上奪えば本大会出場ということで、ほぼ出場を手中に収めたことになります。

Sbilic ホイッスルの後、チームスタッフや選手たちと熱い抱擁を交わしたビリッチ監督(写真)は、記者会見となると真剣な表情で以下のように述べました。
「厳しい環境で試合をモノにしたこともあって、これは大きな勝利だ。新たな選手たちが加わったイスラエルは我々にとって未知のチームだったよ。前の試合とは全く違うチームになっており、非常にアグレッシブかつスピードもあって、我々にスペースを与えようとしなかった。私は試合後、(イスラエルの)カシュタン監督に対して素晴らしいチームを新たに作り出した勇気を祝福したよ。
ハーフタイムで私は選手たちを奮い起こした。"お前たちは何だ? プレーしろ! 5対0でリードするなんて予想していたのか?”-そう声を上げて、選手たちに問いただした。冷静かつ辛抱強くなることが必要だ、それがゴールに繋がると私は説明したのだよ。説明通りに起こったというわけさ。この試合は私にとってみれば、選手たちは良い戦いをしたと思う。戦術的にとても成熟し、集中力を失うことなく、アグレッシブかつ辛抱強く戦った。常にゲームの支配を我々は追求していったのだ。現代的な試合だった、とも言えよう。アマチュアにとっては見るには退屈だったかもしれないが、これは二つの好チームによる素晴らしい戦いだったのだよ。」
一方のカシュタン監督は
「クロアチアの成功と本大会進出を祝福したい。クロアチアは非常に強いチームで、今日もそれを示したということだ。これは勝利したいという両チームによる試合だった。我々は一つのミスを犯したが、それが毎試合のペースでゴールを決めているエドゥアルドの得点へと繋がった。デビューした選手たちには満足しているよ。しかし、唯一のミスは敗戦の理由としては十分だ。」
とコメントしています。

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A代表の弟分、U-21代表の動向についても。
現在、ドラジェン・ラディッチ監督のもと、2009年スウェーデン開催のU-21欧州選手権の予選を戦っているクロアチアU-21代表ですが、12日、アッズリーニことイタリアU-21代表とアウェーで対戦しました(イタリアの監督はピエルルイジ・カシラギ。開催地:キエティ)。
FWカリニッチがA代表に選出されたほか、アヤックスを倒したディナモの立役者FWマンジュキッチは先のU-21代表合宿で深夜にホテルを抜けて酒を飲みに行ったために追放。ただいまリエカで売り出し中のファンタジスタ、シャルビーニが代表復帰したのにもかかわらず負傷で離脱。そのような状況でグループリーグの本命、イタリアと対戦しました。
Simgp6850この夏にマンチェスター・ユナイテッドからヴィジャレアルに1100万ユーロで売却され、今季5得点と活躍中のジュゼッペ・ロッシにはイプシャ(エネルギー・コットブス)をマークにつける3-5-2のシステムを選択。ザダールのトマソフとスラヴェン・ベルーポのヤヤロの二人のMFがセントラルハーフとしてデビューを果たしました。
前半はフィジカル的に勝るクロアチアが優勢に進め、右のイリチェヴィッチ(ボーフム)、左のパミッチ(リエカ)がチャンスを作り出しますが、タディッチ(ディナモ・ザグレブ)とブシッチ(ディナモ・キエフ)のツートップにボールが渡ってもクリシート(ユベントス)を中心にしたディフェンス陣と相対します。
最大のチャンスは22分、パミッチが左サイドでDF二人をかわしてエリア内に突入し、中央のブシッチへ。近距離のシュートはGKコンシッリに止められ、弾かれたところをタディッチがシュートしますが、これもGKがセーブ。更に弾かれたボールをブシッチがオーバーヘッドでシュートを決めますが、危険なプレーとしてスペインのヴァスケス主審がゴールを取り消します。このシュートの場面でブシッチの周囲にイタリア選手はおらず、ブシッチが文句を言ったところでイエローカード。これに関しては試合後、ラディッチ監督が「典型的な"泥棒"だ」と審判を痛烈に批判しています。
それまでカウンターの一本調子のイタリアでしたが、前半40分、ジョヴィンコ(エンポリ)がショートコーナーからロッシに繋ぎ、折り返したところをニアポストでアクアフレスカ(カリアリ)が押し込んで先制に成功します。
後半はクロアチアのペースが完全に落ち、イタリアがゲームを支配。57分にディセーナ(パルマ)のクロスにアクアフレスカがヘディングで競り勝ち、GKヴァルギッチの届かないサイドにシュートを決めて2-0。これで試合が決まり、クロアチアはグループリーグ3位に転落しています。
【順位】
1位…イタリア(勝点12/4試合)、2位…ギリシャ(勝点9/4試合)、3位…クロアチア(勝点9/5試合)、4位…アルバニア(勝点6/4試合)、5位…アゼルバイジャン(勝点0/3試合)、6位…フェロー諸島(勝点0/5試合)
(写真はA代表のクロアチアvs.イスラエルを見るU-21代表の選手とスタッフたち。中央がラディッチ監督)

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コメント

あとは少しの幸運が必要ですね。


やはり、アウェイ2連戦の前に本戦出場が決まって欲しいです。スコピエとロンドンで試合をするのですから、2連敗の可能性も十分にあると思います。


モスクワでイングランドに踏ん張ってもらい勝ちか引き分けで…。本戦出場決定で…。


万が一ウェンブリーでの最終戦までに決まらなければ、土壇場で敗退という最悪の結末もありますね(-"-;)


日本ではスカパー!でロシア対イングランドの試合が生放送されますので、イングランドを応援したいと思います。(笑)

投稿: ボクシッチ | 2007年10月15日 (月) 22時16分

スロバキア戦も勝ちましたね。16日に試合があるとは知らなかった為、あまりのハードスケジュールさに驚きました。


楽しみだったカリニッチですが、U-21に戻されて出場しなかったのですね…ひどく残念です。

今さら予選敗退濃厚な上、次の対戦相手を考えるとU-21に呼び戻す必要があったのか正直疑問です。


カリニッチにとっては現在FW不足のA代表において、絶好のフル代表デビューのタイミングだっただけに…、

個人的にはU-21のラディッチにはその采配や成績、今の問題が山積みのバラバラなチーム状況から考えると、監督としての能力が不足しているように思います。


U-21とフル代表に関しては色々な考え方がありますし、今回の件の詳しい事情までは、わからないのですが…(^_^;)

投稿: ボクシッチ | 2007年10月17日 (水) 02時53分

U-21代表ではタディッチが怪我したためにFW不足に陥り、結局はカリニッチが借り出されることになりました。
A代表もご存知のように怪我人続出でFW不足に陥り、ビリッチ監督はスロバキア戦でカリニッチを先発起用させるつもりだったのですが、現時点では公式戦のあるU-21代表に優先権があるのは仕方ありませんね。
練習でもチームに随分とフィットしていただけにビリッチも残念がっているコメントを残しています。でも「チャンスはあるだろう」とも応えています。まだまだ19歳ですし、これからの成長に期待、ってところでしょうか。

U-21代表のイタリアvs.クロアチア戦をイタリアのTV局RAI3で観ましたが、前半のサッカーは非常に良かったですよ。あらゆる面でイタリアを上回ってましたし。誤審でゴールを取り消され、あっさりとミスで失点したため、後半は落ちてしまいましたね。クロアチア・リーグでは90分間ぶっ通しでハードテンポでプレーする試合が皆無に等しいため、国際マッチでは後半ボロボロとなるケースはよく見られます。これは国内のリーグレベルと繋がってくる話でしょう。

あとチーム内の問題は監督ではなく選手個々のモラル低下であることは、以前に私も記事で書きました。選手個々がU-21代表を軽視していること、クロアチア・リーグの若手にA代表の門戸が開かれていることで勘違いを起こしている選手がいること、それに加えてグローバル的に今の若者はモラルが低下していることは否めないと思います。ラディッチは選手とフレンドリーに接してきたのですが、例のマンジュキッチ・ロンチャリッチ事件の後は考えを改めなければならないとさえ語っています。

とはいえ、面白いタレントはU-21に揃ってきてますよ。マンジュキッチは事件さえなければA代表に選ばれたでしょうし、A代表でも層の薄い左SBにもリエカのイゴール・パミッチという逸材が出てきましたしね。イリチェヴィッチ、タディッチ、シャルビーニも成長次第では近いうちにA代表に入ってくると思いますよ。

投稿: 長束恭行 | 2007年10月17日 (水) 18時12分

詳しい情報頂きましてありがとうございます。

やはりU-21を粗野にすると、フル代表に悪い影響を及ぼしますでしょうね。納得です。

ただトルツィーダの私としましては、カリニッチにどうしてもフル代表デビューして欲しかったです…


今のハイドゥクは暗い話題が多いですから…、ただトゥドルは復帰してきたみたいで安心しました。


今からイングランドが踏ん張ってくれる事を期待します。テレビでσ(^-^;)笑

投稿: ボクシッチ | 2007年10月18日 (木) 00時07分

ロシア対イングランドの結果ですが、クロアチアにとって最悪なものとなりましたね。

今の代表の力は信じてますが、スポーツである以上、何が起こるかわからないので、本戦出場決定が早いにこしたことはないと思ってました。簡単には突破出来ないのはこれまでの予選と同じですね。

それにアウェイ2連戦でうち嫌な思い出のあるスコピエが第1戦…。ユーロ2000予選の二の舞だけは、どうしても避けて欲しいですね!

リエカでのスロバキア戦が花試合にならなくて残念です…。


スコピエでの試合に全精力を注いでもらいたいです。

私はかなりネガティブな方なので暗いことばかり書いてしまい、スイマセン(^o^;)笑

投稿: ボクシッチ | 2007年10月18日 (木) 02時30分

まあ、今の代表チームはしっかりとスカウティングをしていますし(マケドニアvs.アンドラ戦はズボニール・ソルドが担当)、コヴァチ兄弟といったドイツ移民のメンタリティも注入されているので、昔みたいに油断で負けることはそうそうないですよ。
でもマケドニア戦はピッチも客席も激しい試合になるでしょうてね。ご存知のように歩の良い相手でもないですし、そんなに仲がいい民族同士でもないので(苦笑)

投稿: 長束恭行 | 2007年10月21日 (日) 14時27分

どうもありがとうございます。


ソルドが偵察していたのですか~。ならば、大丈夫そうですね~。


コバチ兄も戻ってくるでしょうし。


コバチ兄弟は本当に精神的に強いですよね。 まさに縁の下の力持ちの兄弟ですね。


プラス材料が発見できましたので、少しポジティブになってきました。(^-^)ノ~~笑

投稿: ボクシッチ | 2007年10月22日 (月) 03時08分

この記事へのコメントは終了しました。

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