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2007年10月29日 (月)

クロアチア・リーグ第12・13節/クロアチア・カップ

ここのところ更新が滞っていますが、ここ一週間のクロアチア国内のリーグ、カップ戦の成り行きをまとめましょう。

10月20日、クロアチア・リーグ第12節が行われ、首位ディナモ・ザグレブはアウェーにて8位シベニクと対戦しました。
前半はシベニクがディナモの攻撃をしっかりと食い止め、取り立てて見所の少ない内容でありましたが、後半に試合が動き出します。
52分、シベニクのMFヴィタイッチがゴール右下隅を狙って30mのFKを放ったものの、これにはディナモのGKコッホが好セーブ。続くDFグルイッツァのミドルシュートもコッホが食い止めます。
Svukojevic 54分にはヴィタイッチのCKにペナルティエリア内のFWゼッツが合わせに向かったところを、ユニフォームを引っ張られて倒されましたが、コヴァチッチ主審はPKを取りません。
シベニクの選手や監督、観客の怒りが頂点に達したのは82分でした。ディナモの右FKからのクリアボールをMFサミールがミドルシュート。ボールはシベニクの選手に当たってMFヴコイェヴィッチ(写真)の足元に届き、近距離からシュートを決めてディナモが先制します。しかし、ペナルティエリア内にはCKの場面で交錯して倒れたシベニクのDFボナチンが最後尾にいて、サミールがシュートを放った瞬間にはヴコイェヴィッチはそのボナチンよりも若干前のポジションにいました。副審はオフサイドの旗を挙げたのにもかかわらず、コヴァチッチ主審はゴールを認めてしまったのです。
更にロスタイム、マンジュキッチがペナルティエリアで倒されたことでコヴァチッチ主審はPKまで進呈。客席からの「ジプシー」「泥棒」のコールが更に激しくなりましたが、PKをFWショコタがきっちりと決め、2-0で勝利を果たしました。ちなみにショコタは起用の少なさを批判して一時は追放処分を受けてましたが、バラバン、タディッチの負傷も手伝ってこの試合で途中出場しています。

ただ今3連敗中で6位に転落したハイドゥク・スプリトは3位ザダールとホームで対戦しています。
これまで怪我人で泣かされたハイドゥクですが、骨折で今季前半が絶望のDFジヴコヴィッチ以外は全員が計算できる状態に。昨年のワールドカップのオーストラリア戦以来、ピッチを離れていたトゥドールもベンチスタートしました。
Skalinic この試合で一際目立ったのは、A代表入りも果たし、目下売り出し中の19歳FWカリニッチ(写真)。14分に得たPKは深く芝生をダフってしまい失敗しものの、36分にMFチェルナトの右CKをヘディングで決めて同点に追いつきます。
53分にはチェルナトのシュートが弾かれて左にこぼれたところをMFダムヤノヴィッチが中央へ。GKスバシッチがキャッチし損ねたところをカリニッチが押し込んで逆転に成功します。
70分には右SBペライッチの折り返しに、クレシッチ監督になってから起用チャンスを得ているMFリニッチがファーサイドから決めて3-1。その4分後にはリニッチがパスカットから左のスペースに走り込むカリニッチへボールを送り、カリニッチは右足でシュートを決めてハットトリックを達成。今季10得点目となるゴールでモドリッチを抜き、単独でトップスコアラーとなりました。
78分からはトゥドールが交替でピッチに送られ、14ヶ月ぶりの公式戦出場となりました。試合は4-1でハイドゥクの完勝に終わっています。

2位のリエカは、インテル・ザプレシッチに前半11分にPKで先制を許すものの、後半57分にMFブーレの右FKをDFブディチンがヘディングで決めて同点に追いつくと、73分には左SBパミッチの折り返しにFWヂャロヴィッチがGKと左ポストの隙間に流し込んで逆転に成功しています。

全試合の結果はこちら。

Hajduk Split - Zadar 4:1
0:1 21' Terkes
1:1 36' Kalinic
2:1 53' Kalinic
3:1 70' Linic
4:1 74' Kalinic

Zagreb - Medimurje 1:1
1:0 54' Lovrek
1:1 60' Bratkovic

Varteks Varazdin - Cibalia Vinkovci 2:1
1:0 25' Mumlek
1:1 90' Bagaric (PK)
2:1 90' Prahic

Rijeka - Inter Zapresic 2:1
0:1 11' Grgurovic (PK)
1:1 57' Budicin
2:1 73' Dalovic

Slaven Belupo - Osijek 2:0
1:0 14' Posavec (PK)
2:0 22' Posavec (PK)

Sibenik - Dinamo Zagreb 0:2
0:1 82' Vukojevic
0:2 90' Sokota (PK)

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10月23・24日にはクロアチア・カップが行われ、ベスト8の座を賭けて戦われました。このラウンドまでは一発勝負で決められます。

ディナモ・ザグレブは4日前と同様、アウェーでシベニクと対戦しました。
審判の偏った判定で負けた先の悔しさをぶつけるかのようにシベニクは6分、MFヴィタイッチのCKからMFガブルエル・ダ・シルヴァが先制点を決めます。
ディナモは久しぶりに先発したFWヴグリネツのチャンスメークから好機を見出すものの、ヴコイェヴィッチ、サミール、マンジュキッチのシュートはいずれも精度に欠けてしまいました。
37分にはヴィタイッチのクロスにFWゼッツがシュートを決めて、シベニクがリードを広げます。
Ssokotamandzkic ディナモは60分、ペナルティエリアの外でゼッツを倒したGKコッホがレッドカードを出されて更に苦境に立たされますが、これを契機にチームが一丸となり、一人少ないながらもイニシアティブを握ります。
70分、MFモドリッチからが右サイドからのお膳立てにMFマンジュキッチ(写真左)がロビングでシュートを決めて1点差にすると、77分には途中交替のFWショコタ(写真右)がMFグエラの放ったボールに食いついて同点弾を決めます。
シベニクはMFミラノヴィッチが二枚目のイエローで退場となり、更にディナモが加勢となり、89分、ショコタがゴール前の混戦を制してゴールを決めて逆転。土俵際のうっちゃりでディナモがベスト8進出を決めました。

ハイドゥク・スプリトはホームでクロアチア・セスベッテと対戦。
Ssablicセスベッテは2部とはいえ、現在はフルヴァツキ・ドラゴヴォリャッツと首位争いをしており、昇格に最も近いクラブです。ちなみにこの試合でトゥドールがハイドゥクに戻って初めて先発出場しました。
最初の15分にFWカリニッチが二度に渡るチャンスを決められず、リードを作れないまま前半を終えたハイドゥクですが、後半52分、股関節に痛みを覚えたトゥドールに代わり出場したDFサブリッチ(写真)が、CKのクリアボールからシュートを決めて先制に成功します。88分にはMFツェルナトのFKをカリニッチがゴール前で方向を変えてゴールに流し込み、今季の公式戦15得点目を決めて、2-0と格下相手に勝利しています。

サプライズとなったのは2部のセゲスタと1部2位のリエカとの対戦。前半20分はアウェーのリエカが主導権を握るものの、次第にセゲスタが攻める展開に。35分にFWツェロヴェチュキが20mのミドルシュートを決めると、52分にはMFコヴァチェヴィッチを決めて2-0。87分にはDFヤンコヴィッチのゴールで、3-0と快勝。ザダールに続いて1部リーグのチームを食う金星を挙げました。

全試合の結果はこちら(太文字が進出)
Bjelovar - Varteks Varazdin 1:1 (PK 3:5)
Cibalia Vinkovci - Osijek 2:1
Hajduk Split - Croatia Sesvete 2:0
Slaven Belupo - Pomorca 1:0
Segesta - Rijeka 3:0
Sibenik - Dinamo Zagreb 2:3
Dakovo - Zagreb 0:7
Inter Zapresic - Podravina 1:0

また準々決勝のカードは以下のようです。昨季の決勝のカード、ディナモvs.スラヴェンがここで再現となります。初戦は11月7日、第2戦は11月28日。またUEFAカップを戦っているディナモは12月12日に初戦、第2戦は来年2月に行われる予定です。
Hajduk Split - Inter Zapresic
Segesta - Zagreb
Slaven Belupo - Dinamo Zagreb
Varteks Varazdin - Cibalia Vinkovci

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10月27日、クロアチア・リーグ第13節が行われました。

首位ディナモ・ザグレブはアウェーで4位ザダールと対戦しました。
カップ戦も含めればハイドゥク、シベニク、シベニク、ザダールと、アンチ・ディナモの多いダルマチア地方にて4試合連続の試合をしているディナモ。正GKコッホが先のシベニク戦で退場となったため、この日がデビューとなるGKケラヴがゴールを守りました。また、ここ2試合ゴールを決めているショコタが先発起用されています。
一方のザダールは、今季昇格組ながら一時は2位までつける躍進ぶり。とりわけホームでは4勝2分で負けなし。他のスタジアムと比べてもピッチが小さいという利点に加え、トルナーダと呼ばれる熱狂的サポーターの後押しがあるチームです。この日もスタノヴィ・スタディオンのキャパシティいっぱい、約6000人の観客が集まりました。
Ssokota開始4分、ザダールのMFトマソフの何でもない縦パスをDFドルピッチがクリアミス。それにFWテルケシュが追いつき、一対一となったGKケラヴが手を使ってテルケシュの足を引っ掛けたものの、この日の主審シムチッチもPKと判定せず。また荒れ気味の雰囲気になりますが、14分、MFスラツからペナルティエリア左に走り込むトマソフに展開し、最後は飛び出したケラヴを抜く中央へのラストパス。同じく走り込んだテルケシュが押し込んで、ザダールが先制に成功します。
しかしディナモも35分、MFポクリヴァチュの左クロスにMFマンジュキッチがヘディングで折り返し、最後はショコタ(写真)が倒れ込みながらシュートを叩き込んで同点に追いつきます。
その4分後には、MFモドリッチの右CKをDFシルデンフェルトがヘディングで繋ぎ、ゴールからマンジュキッチが左足で対角線にボレーシュート。それにショコタが反対側から突っ込んで、GKが触れる前に相手ゴールへとボールを押し込んで逆転に成功します。
後半に入ってザダールはミトロヴィッチ、バトゥリナ、チュスティッチの3人のフォワードを次々と投入するも、立ち上がりのようなリズムは作れず、逆にディナモがチャンスを作ります。しかし、ショコタとマンジュキッチの近距離のシュートはそれぞれGKスバシッチに止められ、追加点が奪えません。とはいえ、この試合でワントップのショコタとセカンドトップのマンジュキッチの連携が深まったのは大きな収穫でありました。試合は後半になっても動かず、2-1でディナモが勝利をしています。

5位のハイドゥク・スプリトはアウェーで9位インテル・ザプレシッチと対戦しました。
Sjarni 26日にハイドゥクのセルゲイ・クレシッチ監督が「個人的な理由」から辞任を発表。以前に成績不振を理由に辞任を希望した時には説得もあって留まったのですが、今回は理由を明らかにしないままチームを去ることになりました。この試合からアシスタント・コーチだったロベルト・ヤルニ(写真)がハイドゥクの指揮を取ることになりました。
現役時代は世界屈指の左サイドとして活躍したヤルニは、浅い最終ラインで中盤が菱形の4-4-2システムを採用。ツートップにはカリニッチとバルトロヴィッチを組ませ、ルカビナとヴェルパコヴスキスはベンチに置きました。またDFトゥドールは前のセスベッテ戦の怪我で欠場、またMFアンドリッチも前日の練習で怪我をして欠場です。
試合は開始4分、右SBペライッチの右クロスにインテルDFイフティッチがクリアミス。ボールは中央のカリニッチ(写真)に届き、空中のボールを上手く流し込んでハイドゥクが先制。これでカリニッチは11ゴール目となります。
Skalinic_2 その後もアウェーのハイドゥクが押しますが、ぬかるんだピッチに何度も足が取られる場面が増え、頼みの綱であるカリニッチに対してのマークも強くなります。一方のインテルも前半は何度か好機を見出しますが、28分のゴール前の混戦をFWグーリッチが決められず、33分のMFクルズナールの左クロスにグーリッチがヘディングで合わせるもボールは枠を捕らえられません。
後半はハイドゥクが引き気味となり、インテルに主導権を渡しますが、ゴール前を固めてゴールを割らせません。それでも最大のインテルのチャンスは55分、クルズナールの左クロスに途中交替のFWオスマールが飛び込み、ボールは相手ゴールへと向かったものの、ライン上でDFサブリッチがクリア。チーム力で上回るハイドゥクが1-0と辛勝し、3位へと浮上。ヤルニ新監督にとっては幸先良いスタートとなりました。

また、2位リエカはアウェーで7位チバリア・ヴィンコヴチと対戦。リエカはカップ戦敗退のショックから抜け切れられず、チバリアのU-21代表MFバガリッチにPKとミドルシュートの二発で沈められ、0-2で敗戦。首位ディナモとの勝点差を10にまで広げられています。

全試合の結果はこちら。

Zadar - Dinamo Zagreb 1:2
1:0 13' Terkes
1:1 35' Sokota
1:2 40' Sokota

Zagreb - Sibenik 3:1
0:1 17' Zec
1:1 20' Lovrek
2:1 57' Ibricic
3:1 61' Ibricic

Cibalia Vinkovci - Rijeka 2:0
1:0 55' Bagaric (PK)
2:0 80' Bagaric

Medimurje - Slaven Belupo 2:0
1:0 41' Saranovic
2:0 90' Peraica

Inter Zapresic - Hajduk Split 0:1
0:1 4' Kalinic

Osijek - Varteks Varazdin 0:1
0:1 37' Smrekar

【順位】
1位…ディナモ・ザグレブ(勝点36)、2位…リエカ(26)、3位…ハイドゥク・スプリト(22)、4位…スラヴェン・ベルーポ(20)、5位…ザダール(20)、6位…チバリア・ヴィンコヴチ(18)、7位…オシエク(17)、8位…ザグレブ(15)、9位…シベニク(15)、10位…インテル・ザプレシッチ(13)、11位…メヂムリエ(9)、12位…ヴァルテクス・ヴァラジディン(9)

【得点】
11ゴール…カリニッチ(ハイドゥク)
9ゴール…モドリッチ(ディナモ)、ロヴレク(ザグレブ)
8ゴール…ヂャロヴィッチ(リエカ)、テルケシュ(ザダール)
7ゴール…シャラノヴィッチ(メヂムリエ)、マンジュキッチ(ディナモ)
6ゴール…ジュパン(ザダール)

【アシスト】
6アシスト…マンジュキッチ(ディナモ)
5アシスト…モドリッチ(ディナモ)、ツェルナト(ハイドゥク)、ジュパン(ザダール)
4アシスト…ムムレク(ヴァルテクス)、シャルビーニ(リエカ)、ブーレ(リエカ)、クーケッツ(インテル)、マルチッチ(チバリア)、ヴルチーナ(スラヴェン)

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2007年10月21日 (日)

親善試合/クロアチアvs.スロバキア戦

すっかり遅れてしまいましたが、10月16日に行われた親善試合「クロアチアvs.スロバキア」のレポートを。
会場となったのはリエカのカントリーダ・スタディオン。この日のリエカは小春日和でありましたが、親善試合ということもあり客の入りはキャパの6割ほどの6000人ほど。それでもリエカ市民はクロアチア代表のサッカーを楽しむ機会に恵まれました。

この試合で先発・代表デビューをするはずだった19歳のハイドゥク所属のFWカリニッチは、U-21代表でFWタディッチ(ディナモ)が怪我をしたために急遽、A代表からU-21代表へと移されてしまいました。よって疲れが顕著なオリッチとエドゥアルドをイスラエル戦同様に先発起用。またボルシア・ドルトムントの依頼でコヴァチ弟は出場せず、所属クラブでの出場が多いスルナやモドリッチ、シムニッチもベンチスタートとなりました。これを機にビリッチ監督は普段は控えに回っている選手たちにチャンスを与えております。スタメンは以下のようになりました(4-4-2)。
GKルニェ-(右から)DFチョルルカ、シミッチ、ドゥルピッチ、クネジェヴィッチ-MFレコ、ヴラニェシュ、ラキティッチ、バビッチ-FWエドゥアルド、オリッチ

一方のスロバキアもニュルンベルグ所属のFWミンタル、ヴィテクをはじめ主力選手が怪我で欠場。既に欧州選手権の敗退が決まっており、コツィヤン監督は若手にチャンスを与えました(4-4-2)。
GKハイドゥフ-DFシングラール、シュクルテル、ブレジンスキ、ペトラシュ-MFヴァシュチャク、シュトゥルバ、ハムシク、チェフ-FWヘセク、ホロシュコ

前半立ち上がりは個々の連携の不慣れさもあってラインがずるずると下がり、スロバキアの方がチャンスを作り出します。とりわけ右サイドのMFバシュチャクが、本職ではない右SBのポジションに入ったクネジェヴィッチから再三フリーになることでチャンスを演出します。
7分、そのヴァシュチャクが右サイドから折り返し、中央のチェフがヒールで蹴り込んだシュートはゴールポストに当たり、最後はGKルニェがキャッチします。
Solic_2 クロアチアも20分を過ぎてからようやく主導権を握り、24分、28分とエドゥアルドがシュートを放ちますがゴールに繋がらず。32分にはシミッチの長い縦パスがエドゥアルドに通ってGKと一対一になったものの、間合いを取るタイミングに失敗して、飛び込んだGKハイドゥフにボールをキャッチされてしまいます。
スロバキアは40分、右サイドでフリーとなったハムシクが強烈なミドルシュートを放ちますが、これはGKルニェがキャッチします。
前半はお互いチャンスを潰しあったわけですが、ロスタイムに先制点が生まれます。右サイドのチョルルカからDF2人の背後を狙って放り込んだところにエドゥアルドが併走し、クリアし損ねたところを奪ってシュート。ボールはGKハイドゥフの手に当たってゴール方向に向かったところをオリッチ(写真)が押し込んで1-0とします。

Svukojevic 後半頭から修正を入れ、ラキティッチを右MFに入れ、ボランチにはデビュー戦となるヴコイェヴィッチ(写真)を起用。これがズバリと当たり、クロアチアにとって一方的な展開となります。走力とボール奪取力に優れたヴコイェヴィッチに守備面を任せられることで、ヴラニェシュが攻撃参加しながらシンプルにボールをはたき、それにラキティッチがチャンスメーカーとして変化をつけていきます。
後半開始早々(48分)、ラキティッチの左CKにヴコイェヴィッチが中央から飛び込んでヘディングシュートを決め、クロアチア史上最短となる代表初ゴールを挙げます。
更にその後、オリッチが左クロスを上げ、ラキティッチが中央でフリーとなってヘディングシュートをしますが、これはクロスバーに叩かれます。
追加点は69分、左からバビッチがグラウンダーでクロスを入れると、ファーポストに向かって走り込んだオリッチが流し込んで3-0とリードを広げます。
70分からスルナとモドリッチを入れ、ファンサービスに加えて攻撃面に幅を持たせましたが、シュートチャンスを作りつつもゴールは生まれることがなく、試合はそのまま3-0で終わりました。
(写真はsport-netより)

試合後、ビリッチ監督は
「一般的に見て、良い試合だったと思う。スロバキアはしっかりとした好チームで、ナポリでプレーするハムシクをはじめ、大きなクラブでプレーする選手が何人もいた。彼らは我々以上に出だしが良く、スピードと正確性もあった。我々は最初の25分間かなり悪く、相手に何度も危険なゾーンに入られてしまったよ。自分たちのプレーをすることができず、ロングボール頼りになってしまった。前半では良いタイミングで得点が入り、後半に関して言えば、私が指揮して以来、最高の45分であったかもしれない。
この試合では新たなバリエーションを試し、ある選手たちにより多くの出場時間を与えられただけに、目的に見合ったものであった。ある選手はチャンスをしっかりと利用したし、ある選手は少ししか利用しなかったかもしれないが、おおよそ満足はしているよ。
またオリッチの活躍にはとりわけ嬉しく思っている。涙が出そうになったほどだ。彼が本物のフォワードであることを自ら示したし、前半は彼のアグレッシブさでチームが持ちこたえられたのだよ。」
とコメントしています。

翌日のロシアvs.イングランド戦はご存知のように、チキンな戦いをしたイングランド相手にロシアが後半に逆転勝利(2-1)。イングランドの勝ちか引分けでクロアチアの本大会出場が決まるはずだったのですが、これで11月17日のアウェーのマケドニア戦まで出場決定が持ち越されました。引分け以上で出場が決まるものの、マケドニアは歩の良い相手ではなく、1999年6月にアウェーで1-1と引き分けたことがユーロ2000敗退に繋がってしまいました。
試合をテレビで観たビリッチは
「望んでいたように試合は終わらなかったが、このような結果も考慮に入れておく必要はあった。モスクワでの両者の戦いで全てが決まっていただけ、少し盛り下がってしまったよ。とはいえ、本大会出場における障害を片付けるのに、今まで誰も我々を助けることはしなかったのも事実。最後の最後まで自分たちで障害を片付けなくてはならないということだ。一ヶ月後のスコピエでのマケドニア戦に集中して準備をしていくつもりだよ。」
と述べています。
とはいえ、イングランドとロシアが予選を突破し、クロアチアが敗退するにはかなりの条件が必要です。まずは11月17日、クロアチアがマケドニアに負け、ロシアはイスラエルに勝利。11月21日、ロシアがアンドラに勝利するのは堅いとはいえ、イングランドはクロアチアに2-0もしくは3点差以上で勝利しないと突破はできません。それ以外のケースではクロアチアが突破することになり、まだまだ確率はかなり高いと言えましょう。

ちなみにこの試合、私はいきつけのスポーツカフェで観てましたが、そこにいた知人に「クロアチアの本選出場が絡んでなかったら、クロアチア人はイングランドとロシア、どっち応援するの?」と質問したところ、「プロテスタントと正教徒、どっちも応援するもんか!」と期待通りの答えが戻ってきました。

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U-21欧州選手権予選についても触れましょう。
17日、クロアチアU-21代表はアウェーでフェロー諸島U-21代表と対戦しました。つい先日も嵐でフランスA代表のチーム一向が飛行機で来られないなんてニュースがありましたが、クロアチアのチーム一向も着陸時には嵐に見舞われ、いきなり急降下。何とか着陸はしたものの、選手たちは言葉を失い、青ざめた状態だったそうです。
Skalinic この試合ではA代表から借り出されたカリニッチ(写真)が、ブシッチと組んでのツートップ。これまでカリニッチはU-21代表に何度も召集されてきたものの、その度に怪我を理由にしてクラブが拒否してきました。今回のフェロー諸島戦では彼が救世主になります。
開始4分、相手のロングボールに合わせてGKヴァルギッチが飛び出したところ、ボールが強風で戻されてしまい、それをFWハンセンがヘディングで押し込んでフェロー諸島がよもやの先制をします。
しかし14分、イリチェヴィッチのアシストからカリニッチが対角線上にシュートを決めて、クロアチアが同点に追いつきます。
決勝点は22分、イリチェヴィッチとワンツーで抜けたブシッチがシュートしたボールはGKニールセンに止められたものの、弾かれたところをカリニッチが押し込んで2-1。
その後は前半に3度に渡ってGKと1対1の決定機がありましたが、イリチェヴィッチ、カリニッチ、ブシッチが決められず、試合はそのまま2-1で終わりました。
クロアチアのラディッチ監督は試合内容に満足しており
「得点結果には現れてないが、我々は本当に良い試合をした。最初の30分間はとりわけ、この予選で最高の30分間だったのではなかろうか。相手の実力は比較対象にならないとはいえ、イタリア戦の前半で見せたプレーよりも良かったと思う。
本選出場の戦いにまだ生き残れることになったこの試合の勝利に私は喜んでいるよ。困難な条件のもと、勝利まで導いた選手たちを祝福したい。こんな酷い風が吹いた中でプレーするのは本当に難しい。だから、この勝利は意味があるものなのだよ。今からギリシャ戦(11/17)に準備をしていくが、これが全試合の中で最も大事な試合となるだろう。」
とコメントしています。ギリシャvs.イタリアが2-2のドローとなったため、プレーオフ(2位まで)への道が開けてきました。11月のギリシャ戦にはFWマンジュキッチやMFシャルビーニもチームに加わる予定です。
【順位】
1位…イタリア(勝点13/5試合)、2位…クロアチア(勝点12/6試合)、3位…ギリシャ(勝点10/5試合)、4位…アルバニア(勝点7/5試合)、5位…フェロー諸島(勝点3/6試合)、6位…アゼルバイジャン(勝点1/5試合)

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2007年10月15日 (月)

EURO出場に繋がる勝利/クロアチアvs.イスラエル

10月13日、ザグレブのマクシミール・スタディオンで、欧州選手権予選「クロアチアvs.イスラエル」戦が行われました。
この試合に勝てば本大会出場をほぼ手中に収めるということもあり事前の関心は高く、クロアチア国内や国外在住のクロアチア人のサポーターを含めた約30000人の観客が集まりました。

Shrvatskaisrael今回のクロアチア代表は怪我人に泣かされ、主将のMFニコ・コヴァチをはじめ、FWのペトリッチ、バラバン、ブダンが欠場。エドゥアルドとオリッチのバックアッパーとなるFWは今回初選出の19歳カリニッチのみ。望みの綱、エドゥアルドも怪我から開けたばかりで本調子ではないという厳しい事情を抱えておりました。メンバーは以下のようです(システムは4-4-2)
GKプレティコサ-(右から)DFチョルルカ、シミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFスルナ、レコ、モドリッチ、クラニチャール-FWエドゥアルド、オリッチ

一方のイスラエルは、この試合で勝利を収めなければ本大会出場の望みが消えるのですが、こちらは更に厳しい台所事情。GKアワト、DFジヴとベナルドの3人が累積警告、エースストライカーのFWコッラウティ、MFタル、ザンドベルグ、バディールら10人近くが怪我や不調で外れ、これまでと全く違うメンバーでカシュタン監督はチームを構成してきました。ただ、リバプールに所属する司令塔ベナユンとチェルシーのDFベンハイムは先発出場しています(システムは4-4-1-1)。
GKダヴィドヴィッチ-DFメシュマル、ゲルション、ベンハイム、アンテビ-MFバルチアン、アルベルマン、コヘン、ベナユン-FWバルダ-バリリ

普段は周囲とのコンビネーションを絡めて前線に上がるエドゥアルドの動きが重くピッチから消えてしまい、ペトリッチに代わって出場したオリッチは走っても走っても大事なところではボールを奪われる相変わらずのプレースタイル。またクラニチャールはウォーミングアップ中に股関節に違和感を覚えながら無理を押して出場したためにパスミスやトラップミスが目立ち、左からの攻撃が思うようにいきません。
急造チームで崩し易しと思えたイスラエルですが、ボールホルダーを激しくチェックし、パスの貰い手に対しても当たって奪いに行くアグレッシブかつ組織的な守備が功を奏します。攻撃面では主将のベナユンが一人だけクラスの違いを見せましたが、浅いラインを敷くクロアチアの守備陣もGKプレティコサまで相手を届かせません。
Shrvatskaisrael2 クロアチアの最初のチャンスは16分、スルナの右CKからレコがヘディングしたボールがオリッチの足元に来ますが、オリッチはシュートをGKダヴィドヴィッチの正面に蹴り込んでしまいます(写真)。
そんな中、クロアチアの攻撃の核となったのは右MFのスルナ。チョルルカとのコンビネーションを絡めながら持ち前の突破力でチャンスを作り出します。27分、そのスルナが右サイドで次々とイスラエルの選手をかわし、折り返したところをレコがミドルシュートを放ちますが、ボールは大きく枠を逸れてしまいました。
40分にはオリッチがペナルティエリアでクリアミスのボールをかっさらいましたが、雑なシュートを打ってチャンスを台無しにしてしまいます。
またこの日のドイツ人のスタルク主審と副審二人には基準がはっきりしない笛や誤審が多く、前半終了間際は滅多に怒らないエドゥアルドが判定に抗議し、イエローカードを食らってしまいました。

ビリッチ監督は左右のバランスを考慮し、左MFのクラニチャールを外して突破力のあるプラニッチを後半頭から投入。また選手たちにはアグレッシブな姿勢で入るよう指示します。
開始早々、中央のスルナから斜め左のモドリッチに渡り、3人を引きつけてからゴール前のエドゥアルドへ。エドゥアルドはノートラップでゴール左にシュートを狙いましたが、彼らしくなくボールはポストを逸れてしまいます。
Strenutak_eduardovog_gola しかしながら52分、エドゥアルドは彼本来の価値を見せつけます。右サイドでスルナがオーバーラップした背後のチョルルカにボールを戻すと、チョルルカはDFラインとGKの間に落ちるアーリークロス。ディナモ時代のチームメイトからクロスボールが上がると察知したエドゥアルドは、マーカーのベンハイムよりも早い反応で抜け出し、そのまま左足でダイビングボレー(写真)。ボールはGKダヴィドヴィッチの手を弾きながらネット右に突き刺さり、クロアチアが先制に成功します。エドゥアルドは今回の予選で10ゴール目。通算18試合で13ゴールはシュケルより早いゴールペースです(ゴール率72.2%、シュケルは69試合45ゴールで65.2%)。
その4分後にはスルナの右CKからフリーの状態でボールをもらったモドリッチが斜めからのシュート。ゴール前のエドゥアルドかチョルルカが触れて角度を変えれば得点が決まりましたが、そのままボールはスルーしてしまいます。
Szagljaj_nakon_tekme 前半は枠内シュートがゼロだったイスラエルも60分、ベナユンが一人でドリブルで崩し、最後はマーカーを外して右下隅を狙ったミドルシュートを放ちますが、これはプレティコサが好セーブを見せます。
クロアチアは攻撃面で大きなチャンスを生み出せないとは言えど、守備面で集中力が切れることなく、苦しみながらも最小スコアの1-0で貴重な勝利を収めました。
17日のロシアvs.イングランド戦でイングランドが勝利か引分けを収めれば2位以内に入ることが確定し、本大会出場が決定。もしロシアが勝ったとしても、マケドニアかイングランドとのアウェー戦で勝点1以上奪えば本大会出場ということで、ほぼ出場を手中に収めたことになります。

Sbilic ホイッスルの後、チームスタッフや選手たちと熱い抱擁を交わしたビリッチ監督(写真)は、記者会見となると真剣な表情で以下のように述べました。
「厳しい環境で試合をモノにしたこともあって、これは大きな勝利だ。新たな選手たちが加わったイスラエルは我々にとって未知のチームだったよ。前の試合とは全く違うチームになっており、非常にアグレッシブかつスピードもあって、我々にスペースを与えようとしなかった。私は試合後、(イスラエルの)カシュタン監督に対して素晴らしいチームを新たに作り出した勇気を祝福したよ。
ハーフタイムで私は選手たちを奮い起こした。"お前たちは何だ? プレーしろ! 5対0でリードするなんて予想していたのか?”-そう声を上げて、選手たちに問いただした。冷静かつ辛抱強くなることが必要だ、それがゴールに繋がると私は説明したのだよ。説明通りに起こったというわけさ。この試合は私にとってみれば、選手たちは良い戦いをしたと思う。戦術的にとても成熟し、集中力を失うことなく、アグレッシブかつ辛抱強く戦った。常にゲームの支配を我々は追求していったのだ。現代的な試合だった、とも言えよう。アマチュアにとっては見るには退屈だったかもしれないが、これは二つの好チームによる素晴らしい戦いだったのだよ。」
一方のカシュタン監督は
「クロアチアの成功と本大会進出を祝福したい。クロアチアは非常に強いチームで、今日もそれを示したということだ。これは勝利したいという両チームによる試合だった。我々は一つのミスを犯したが、それが毎試合のペースでゴールを決めているエドゥアルドの得点へと繋がった。デビューした選手たちには満足しているよ。しかし、唯一のミスは敗戦の理由としては十分だ。」
とコメントしています。

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A代表の弟分、U-21代表の動向についても。
現在、ドラジェン・ラディッチ監督のもと、2009年スウェーデン開催のU-21欧州選手権の予選を戦っているクロアチアU-21代表ですが、12日、アッズリーニことイタリアU-21代表とアウェーで対戦しました(イタリアの監督はピエルルイジ・カシラギ。開催地:キエティ)。
FWカリニッチがA代表に選出されたほか、アヤックスを倒したディナモの立役者FWマンジュキッチは先のU-21代表合宿で深夜にホテルを抜けて酒を飲みに行ったために追放。ただいまリエカで売り出し中のファンタジスタ、シャルビーニが代表復帰したのにもかかわらず負傷で離脱。そのような状況でグループリーグの本命、イタリアと対戦しました。
Simgp6850この夏にマンチェスター・ユナイテッドからヴィジャレアルに1100万ユーロで売却され、今季5得点と活躍中のジュゼッペ・ロッシにはイプシャ(エネルギー・コットブス)をマークにつける3-5-2のシステムを選択。ザダールのトマソフとスラヴェン・ベルーポのヤヤロの二人のMFがセントラルハーフとしてデビューを果たしました。
前半はフィジカル的に勝るクロアチアが優勢に進め、右のイリチェヴィッチ(ボーフム)、左のパミッチ(リエカ)がチャンスを作り出しますが、タディッチ(ディナモ・ザグレブ)とブシッチ(ディナモ・キエフ)のツートップにボールが渡ってもクリシート(ユベントス)を中心にしたディフェンス陣と相対します。
最大のチャンスは22分、パミッチが左サイドでDF二人をかわしてエリア内に突入し、中央のブシッチへ。近距離のシュートはGKコンシッリに止められ、弾かれたところをタディッチがシュートしますが、これもGKがセーブ。更に弾かれたボールをブシッチがオーバーヘッドでシュートを決めますが、危険なプレーとしてスペインのヴァスケス主審がゴールを取り消します。このシュートの場面でブシッチの周囲にイタリア選手はおらず、ブシッチが文句を言ったところでイエローカード。これに関しては試合後、ラディッチ監督が「典型的な"泥棒"だ」と審判を痛烈に批判しています。
それまでカウンターの一本調子のイタリアでしたが、前半40分、ジョヴィンコ(エンポリ)がショートコーナーからロッシに繋ぎ、折り返したところをニアポストでアクアフレスカ(カリアリ)が押し込んで先制に成功します。
後半はクロアチアのペースが完全に落ち、イタリアがゲームを支配。57分にディセーナ(パルマ)のクロスにアクアフレスカがヘディングで競り勝ち、GKヴァルギッチの届かないサイドにシュートを決めて2-0。これで試合が決まり、クロアチアはグループリーグ3位に転落しています。
【順位】
1位…イタリア(勝点12/4試合)、2位…ギリシャ(勝点9/4試合)、3位…クロアチア(勝点9/5試合)、4位…アルバニア(勝点6/4試合)、5位…アゼルバイジャン(勝点0/3試合)、6位…フェロー諸島(勝点0/5試合)
(写真はA代表のクロアチアvs.イスラエルを見るU-21代表の選手とスタッフたち。中央がラディッチ監督)

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2007年10月12日 (金)

クロアチアvs.イスラエル戦・事前情報

欧州選手権(ユーロ2008)予選がいよいよ終盤を迎えます。

クロアチアは13日、グループ4位のイスラエルとマクシミール・スタディオン(ザグレブ)と対戦します。クロアチア代表は月曜日よりスロベニアにて合宿を張っているのですが、怪我人に苦しんでいる状況であります。
SduduMFニコ・コヴァチが背中の怪我で召集メンバー発表直後に外れたのをはじめ、怪我の状態で合宿参加したFWのバラバンとペトリッチが土曜日までに間に合いそうもなく、水曜の記者会見でビリッチ監督が起用しないことを言明。その代わり、足の筋肉の負傷から2週間半離脱していたエドゥアルドが復帰し、オリッチとツートップを組むことになります。フォワード事情は厳しく、この二人を除けば追加召集のカリニッチのみという状況です。
またMFスルナも太股に痛みを感じて水曜日は別メニュー。もし彼が欠場した場合はラキティッチが埋め合わせることになりそうです。
イスラエル・アウェーで4-3の勝利をした際、ハットトリックを決めたエドゥアルド(写真)は水曜日の記者会見で
「怪我はもう過去のことだ。痛みは感じないし、通常に練習できている。土曜日の試合が待ち遠しいよ。マクシミールの観客から拍手を受けるために今の僕は生きているんだ。スタジアムが満員になることを願っているよ。」
とコメントしています。

現時点でのクロアチアのスタメンは以下のように予想されています
GKプレティコサ-(右から)DFチョルルカ、シミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFスルナ、レコ、モドリッチ、クラニチャール-FWエドゥアルド、オリッチ

対戦相手のイスラエルはまだ本大会出場の望みはあるとはいえ、先月イングランドに0-3で完敗して4位に転落。予選前半に活躍したアルゼンチン人帰化選手のFWコッラウティやパレスチナ系のMFバディルが怪我で外れ、DFベナルドとジブ、GKアワトが累積警告で欠場。カシュタン監督は不調の選手もばっさり切ったことから、イングランド戦に出場した選手のうち、実に9人のメンバーが外されています。
これにはビリッチ監督も
「相手は連携面に問題があることは明らかで、それは私たちにとって良いことだ。ただ、ほとんど知らない選手たちがいることは良くない。土曜までに最低限の選手情報は集めるつもりだ。」
と警戒を見せています。
一方のカシュタン監督は
「クロアチア代表がどれだけ力があるかを知るには、順位表を見るだけで十分だ。イングランドに勝利し、ロシアに対しても良い結果を残した。そして、私たちのホームでも彼らは勝利した。とても彼らは自信を持っているが、土曜の試合を前にして少し傲慢になっている。」
とチクリと言い放っています。

クロアチアがイスラエルに勝利し、17日のロシアvs.イングランド戦にてイングランドが勝利か引分けという結果になれば、早くにクロアチアの本大会出場が決まります。
もちろん、このイスラエル戦も取材を予定しています。試合後のレポートをお楽しみに。

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2007年10月11日 (木)

ディナモ、比較的楽なグループに/UEFAカップ・リーグ戦抽選会

9日、スイスのニヨンでUEFAカップのリーグ戦抽選会が行われ、ディナモ・ザグレブはグループDに属し、バーゼル(スイス)、ハンブルガーSV(ドイツ)、レンヌ(フランス)、ブラン・ベルゲン(ノルウェー)と対戦することが決まりました。
これまでの抽選での運が悪かったことを考えれば、かなり楽なグループに入ったと捉えられており、5チーム中3チームに入れば、チャンピオンズリーグのグループリーグ3位の8チームを加えた計32チームによる年明けの決勝トーナメントに進出します。

抽選結果の報を聞いたブランコ・イヴァンコヴィッチ監督は
「いかなる命令はないが、責任からは逃れるつもりはない。リーグ戦を勝ち進むことを願っているし、グループの上位3チームに入って、38年ぶりの欧州(カップ)冬越えを実現するものと信じているよ。
ハンブルガーSVは世界の最強リーグの一つの上位チームだし、バーゼルはチャンピオンズリーグで自己証明してきた。レンヌもブランも決勝トーナメントへの道を開けるべく、ディナモに対して戦ってくるだろう。私たちはヴェルダーとアヤックスとの試合で、最強の相手とも戦っていけることを見せつけてきた。だから私は楽観的だし、今回のグループリーグの相手であっても成功するものと信じているよ。」
またクロアチア代表の一員として合宿中のルカ・モドリッチは
「抽選には満足することできるよ。突破は楽ではないとはいえ、悪くないグループだ。上位3チームの一つに入り、来年も欧州で戦うことは全くもって現実的なことだ。最大の相手はハンブルガーSV、それからバーゼルとレンヌだ。自信を蓄えてきたし、更なる一歩を進むことができるはずだ。」
とコメントしております。

過去、ハンブルガーSVとは1970年にフィアーズ・カップ(現UEFAカップ)2回戦で一度対戦しており、その時はホームで4-0、アウェーで0-1という結果で勝利しております。ハンブルガーSV所属で元ディナモのイヴィツァ・オリッチは
「ここ2日、よくモドリッチと二人でHSVとディナモが同グループになるだろうなんてふざけてたんだけど、本当にそうなっちゃったね…。グループリーグは楽ではないし、どのチームにとっても単純な話ではない。私たちにとってもそうだし、ディナモにとってもそうだ。」
とコメント。
バーゼルはこの夏にムラデン・ペトリッチとイヴィツァ・ラキティッチの二人のクロアチア代表選手を放出。抽選におけるポッド1では最弱と見られていました。ペトリッチは
「ディナモにとってはバーゼルの本拠地セント・ヤコヴ・パークで戦わなくても良いのはいいことだ。これまでユベントスやバレンシア、マンチェスター・ユナイテッド、デポルティーボ・ラコルーニャといった欧州の強豪も苦しんでいったからね。マクシミールで戦うことでディナモのチャンスは大きいことだろう。どっちを応援するかって? まだ決めてないよ。魂はディナモの方に向いているけど、バーゼルにも3年過ごしたからね…」
またラキティッチは
「バーゼルは非常に強いよ! でもディナモもとても強い。僕は生まれた時からディナモ・ファンだから、ディナモに幸運を祈るよ。もちろん、バーゼルには先に進んで欲しいけどね。」
と語っています。
またレンヌに関しては、ディナモ出身でモナコ所属のイェルコ・レコが
「レンヌはフランス・サッカーの典型的なチームだ。足から足へとパスを通し、巧みにボールをコントロールする。(昨年にディナモが対戦した)オーゼールよりも強いチームだ。とりわけ彼らのカウンターは嫌なものだよ。先に進むのはハンブルガーSV、レンヌ、ディナモだと考えている。」
と述べています。ちなみにレンヌには元浦和のエメルソンが加入しています。
最後のノルウェーのクラブ、ブラン・ベルゲンはグループリーグ最弱と見られているとはいえ、クラブ・ブルージュを葬り去ったクラブ(0:1/2:1、アウェーゴール2倍ルールで通過)。ノルウェー代表を多く含み、かつてリーズにいたMFエリイック・バッケも所属しています。

試合予定は以下のようになっています。
10月25日 休み
11月8日  バーゼル戦(ホーム)
11月29日 ブラン・ベルゲン戦(アウェー)
12月5日  ハンブルガーSV戦(ホーム)
12月19日 レンヌ戦(アウェー)

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2007年10月10日 (水)

クロアチア・リーグ第11節/クロアチア・ダービーはディナモに軍配

クロアチア・リーグ第11節が10月6日・7日と行われました。12チームからなるリーグなので、これで対戦が一巡したことになります。

Sderbi 今節の注目カードはもちろん、「クロアチア・ダービー」(Hrvatski derbi)と呼ばれる「ハイドゥク・スプリトvs.ディナモ・ザグレブ」のライバル対決でありました。
一時は危機に陥りかけたものの、リエカ、アヤックスを下して再びチームの雰囲気が盛り上がる首位ディナモ・ザグレブに対し、ハイドゥク・スプリトはフロントから現場まで混乱が続き、ディナモに勝点差11を広げられて5位に低迷しております。
そんな低迷ぶりに普段はハイドゥク・サポーターの「トルツィダ」を中心に満員になるポリュウド・スタディオンも、この日の観客はキャパシティの半分に満たない16000人ほどに留まりました。

ディナモは3日前にアヤックスと延長を含めた120分間を戦ったばかり。疲れの見えるMFサミールを外してミキッチを入れ、怪我気味のDFシルデンフェルドに代えてカルロスを入れてきました(4-2-3-1)。
GKコッホ-(右から)DFエトー、ドゥルピッチ、カルロス、チャレ-MFヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュ-サミール、マンジュキッチ、モドリッチ-FWタディッチ
一方のハイドゥク。一ヶ月前からチームの指揮を取り始めたクレシッチ監督は未だベストメンバー、ベストなシステムを模索している状態です。DFジヴコヴィッチは骨折のため年内は絶望。DFトゥドールは未だ復帰せず、また将来を嘱望される二人のMFガブリッチとリュビチッチも怪我。とはいえ、怪我からDFサブリッチとMFダムヤノヴィッチが復帰し、このほどクロアチアA代表に追加召集された19歳のFWカリニッチが警告開けで出場。メンバーは以下のようになりました(4-3-2-1)。
GKバリッチ-(右から)DFペライッチ、ブリャト、サブリッチ、フルゴヴィッチ-MFアンドリッチ、ダムヤノヴィッチ、ルビール-ヴェルパコヴスキス、ツェルナト-FWカリニッチ

Smodric フィジカル的にはウィークデイに試合のないハイドゥクが上回らなければならないはずが、どんなプレーをしたいのかコンセプトが見られないため、チームとして完成度が増しているディナモがゲームをコントロールしていきます。
7分にはモドリッチから左のマンジュキッチに展開。マンジュキッチはペライッチをあっさりかわしてシュート。しかし、ボールは相手DFに当たり、ゴールを決めることはできません。
けれども、その4分後にはディナモに先制点が生まれます。空中のルーズボールを相手選手3人に囲まれたモドリッチ(写真中央)が縦に浮き球でのスルーパス。ボールをもらったタディッチがペナルティエリア左に持ち込むと、中央に飛び込んできたモドリッチに折り返し。モドリッチのシュートはGKバリッチが一度は止めたものの、弾かれたボールを拾ったモドリッチがGKを抜き去ります。カバーに入ったサブリッチがクリアしようとしましたが、クリアボールがモドリッチの足に再び当たってゴールへと入ってしまいました。これでモドリッチはリーグトップとなる今季9ゴール目を決めたことになります。
ハイドゥクも23分、右サイドで囲まれたカリニッチがヒールキックで縦へと突っ込むヴェルパコヴスキスに流し、中央にぽっかり空いたスペースにヴェルパコヴスキスが折り返しますが、正確性に欠け、ボールはゴール前フリーのルビールの脇を流れてしまいます。
Skalinic_235分にはアンドリッチの右FKからファーポストのサブリッチがボレーシュートを放つものの、GKコッホの正面を突き、クリアされてしまいます。
41分には前線へのフィードを、ディナモのペナルティエリアでカリニッチとドゥルピッチが競り合い、カリニッチが倒されたように見えましたが、これはシミュレーションが取られてイエローカードとなります(写真)。
43分にはヴェルパコヴスキスがボレーシュートを試みますが、ボールは力なくGKコッホの正面。ハイドゥクは小さなチャンスをゴールに結びつける地力はなく、前半終わって1-0でディナモがリードします。

後半50分、ディナモはミキッチの右クロスに中央のモドリッチがヘディングシュート。コースは良かったものの、GKバリッチが指先で止めると、こぼれた球に最も近かったタディッチが押し込めずにチャンスを逃します。
Smandzkic_2 その2分後にもミキッチの右クロスにファーポストのマンジュキッチがヘディングで戻し、ゴールががら空きのところをモドリッチが単に押し込むだけでしたが、このシュートには失敗してしまいます。
ディナモは100%決めねばならないチャンスを二度に渡って潰したわけですが、一方のハイドゥクも流れを引き戻すことはできません。60分にはトルツィダから恒例の発炎筒が次々と投げ込まれ、煙が充満する中で、右CKをきっかけにアンドリッチがミドルシュートを放つものの、これはゴール前のカルロスがクリア。跳ね返りをカリニッチまで繋ぎ、最後は反転してシュートしますが、ボールは左ポストを叩いてしまいます。
66分にはヴェルパコヴスキスに代えてFWルカビナを投入したとはいえ、先ほどのチャンスを逃したツケは71分に来ます。センターライン手前からモドリッチが大きく前へと蹴り込むと、ボールを追いかけるマンジュキッチに対してフルゴヴィッチが競り合うことなく、またGKバリッチもペナルティエリア外に飛び出してしまい、ゴールががら空き状態に。バリッチと競り勝ったマンジュキッチがヘディングでシュートを流し込み、ディナモはリードを2-0と広げます(右上の写真)。
ハイドゥクが意地を見せたのは78分、中央でボールを持ったツェルナトがディナモの守備ブロックを越える縦パスをオフサイドラインから抜け出したカリニッチに通すと、カリニッチは最初のタッチでGKコッホをかわし、ツータッチ目で押し込んで点差を縮めます。
Sderbi_2しかし、その後はディフェンスを固めたディナモに対して、ハイドゥクはチャンスを作ることができず、試合は2-1のままディナモが勝利。勝点差も14にまで広がりました。
膝の調子が思わしくないとはいえ、またしてマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたモドリッチは
「僕たちの方が良いチームであることをもう一度証明できた。後半最初の二度のチャンスを活かせたら、試合を完全に決めることはできたのだけどね。スプリトでこれほど簡単に試合に勝てたことは今までになかったと僕は認識しているよ。」
とコメントしています。

2位リエカは3位ザダールとホームのカントリーダ・スタディオンで対戦しています。
リエカは17分、ブーレの右クロスにFWシュコーロがヘディングシュート。GKスバシッチが一度は防ぎますが、跳ね返りを再びシュコーロが押し込んで先制に成功します。
43分には左SBのパミッチがゴール正面25mの位置から芸術的なボレーシュートを決めて、リードを2-0と広げます。
後半はザダールが主導権を握り、次々と決定的なチャンスを作りますが、GKジリッチが近距離のシュートを全てセーブし、リエカが2-0で勝利。ディナモとの勝点は7ですが、2位のポジションをキープしています。

全試合の結果はこちら。

Zagreb - Osijek 0:2
0:1 45' Smoje
0:2 55' Niksic

Medimurje - Sibenik 2:2
1:0 18' Piskor
1:1 29' Roglic
2:1 43' Piskor
2:2 90' Lapic

Varteks Varazdin - Inter Zapresic 1:2
0:1 14' Biskup
1:1 17' Mumlek
1:2 25' Sivonjic

Rijeka - Zadar 2:0
1:0 17' Skoro
2:043' Pamic

Slaven Belupo - Cibalia Vinkovci 2:2
1:0 8' Juric
2:0 36' Poljak (PK)
2:1 71' Keric
2:2 87' Dodik

Hajduk Split - Dinamo Zagreb 1:2
0:1 11' Modric
0:2 71' Mandzukic
1:2 79' Kalinic

【順位】
1位…ディナモ・ザグレブ(勝点30)、2位…リエカ(23)、3位…ザダール(20)、4位…スラヴェン・ベルーポ(17)、5位…オシエク(17)、6位…ハイドゥク・スプリト(16)、7位…チバリア・ヴィンコヴチ(15)、8位…シベニク(15)、9位…インテル・ザプレシッチ(13)、10位…ザグレブ(11)、11位…メヂムリエ(5)、12位…ヴァルテクス・ヴァラジディン(3)

【得点】
9ゴール…モドリッチ(ディナモ)
7ゴール…ヂャロヴィッチ(リエカ)、ロヴレク(ザグレブ)、マンジュキッチ(ディナモ)、カリニッチ(ハイドゥク)
6ゴール…シャラノヴィッチ(メヂムリエ)、テルケシュ(ザダール)、ジュパン(ザダール)
5ゴール…ゼッツ(シベニク)、ヴィタイッチ(シベニク)、バラバン(ディナモ)、ニクシッチ(オシエク)、シュコーロ(リエカ)

【アシスト】
5アシスト…モドリッチ(ディナモ)
4アシスト…ジュパン(ザダール)、ムムレク(ヴァルテクス)、シャルビーニ(リエカ)、ヴルチーナ(スラヴェン)、クーケッツ(インテル)、ツェルナト(ハイドゥク)

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2007年10月 5日 (金)

ディナモ、アヤックス相手に歴史的勝利!/UEFAカップ一回戦

10月4日、UEFAカップ一回戦第二戦「アヤックス・アムステルダムvs.ディナモ・ザグレブ」が、アヤックスの本拠地アムステルダム・アレーナで行われました。
ホームでの初戦をDF陣のミスで0-1と落としたディナモはあっさりとこのまま敗退と思いきや、アウェーにおいてアヤックスを打ち破り、3年ぶりにUEFAカップのリーグ戦へ駒を進めました。

初戦は累積警告で欠場したマンジュキッチがセカンドトップで先発。バラバンがリエカ戦で怪我をしたため、ワントップにはタディッチが入りました。ディナモの布陣(4-2-3-1)は以下のよう。
GKコッホ-(右から)DFエトー、ドゥルピッチ、シルデンフェルド、チャレ-MFヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュ-サミール、マンジュキッチ、モドリッチ-FWタディッチ

一方のアヤックスは主力を次々と放出したことにより、チャンピオンズリーグ予備戦敗退など憂き目を見ましたが、エールディビジでは現在首位。前節のVVVフェンロ戦では6-1で勝利するなど調子が上がってきています。この日はトップ下にフローニンゲンから750万ユーロで獲得したウルグアイ代表FWのスアレスを起用してきました(4-4-1-1)。
GKステケレンブルフ-DFハイティンハ、ファン・デル・ウィール、スタム、コリン-MFロンメダール、マドゥロ、ガブリ、エマヌエルソン-スアレス-FWフンテラール

タディッチとマンジュキッチがスピードに難のあるアヤックスのDF陣に惜しみないプレスをかけ、またディナモの最終ラインもリスクを承知で高く上げることで、国内リーグでは見られないほどのコンパクトなサッカーを追求します。とりわけ前半でディナモが見せたサッカーは、アヤックスを凌駕する欧州水準のものでありました。
Smodric 開始1分にはスタムからボールを奪ったマンジュキッチがトラバースパス。中央のモドリッチ(写真)がワントラップから放ったボレーシュートはクロスバーを越えていきます。
しかし、アヤックスも序盤に落ち着きが見られないディナモ守備陣のミスを突き、6分、GKステケレンブルフが蹴ったゴールキックにディナモの誰もが処理できず、ペナルティエリアに走り込んだスアレスに。スアレスが苦しい体勢からシュートを放ちますが、ボールは左ポストを逸れていきました。
この致命的なミスからのピンチを逃れたあとはディナモの守備も安定。ディナモが足元でボールを繋ぎながら、ゲームを掌握していきます。前半の最大のチャンスは13分、フリースローのボールをもらったマンジュキッチがマーカーを振り切って右クロス。ニアポストでスタムをマーカーを外したタディッチがヘディングシュートを放ちますが、ボールは右ポストに叩かれてしまいます。こぼれ球をモドリッチがシュートを狙ったものの、このボールは左ポストを逸れていきます。
30分にはポクリヴァチュが左足からグラウンダーのミドルシュート。これにはGKステケレンブルフが右へと反応良く飛びつき、コーナーへと逃れました。
試合が動いたのは32分。アヤックスの中盤の選手が誤ってヘディングで自陣内へとボールを追いやると、マンジュキッチがそれをかっさらいペナルティエリアに。背後からファン・デル・ウィールが倒してしまい、クラッテンバーグ主審はPKの判定。キャプテンのモドリッチがきっちりと右上隅にPKを決め、ディナモが先制。二試合を通して振り出しに戻ります。
とはいえアヤックスも43分、マドゥロの縦パスをもらったスアレスがバイタルエリアでコースを見つけてシュートを放ちましたが、これにはGKコッホが素晴らしい反応でセーブ。ディナモは前半を1-0で折り返すことに成功します。

このラウンドでの敗退が許されないアヤックスも後半は次第に前掛かりになってきます。しかし、モドリッチのようにボールを前へ運べる選手がいないのが仇となりました。ディナモは相手のパスミスをカットしてはパスを繋ぎ、攻撃を仕掛けていきますが、アヤックスも身体を張ったディフェンスで追加点を封じます。
Skoch アヤックスは62分にDFファン・デル・ウィールを変え、ルーマニア代表の右MFオガラルを投入。攻撃リズムを更に上げ、一方のディナモは国内リーグとは違うリズムに体力は消耗し、次第にアヤックスが主導権を取り戻していきます。
65分、ゴール前のパス交換からスアレスが左サイドからシュートを放つものの、これはGKコッホ(写真)がキャッチ。68分のエマヌエルソンのミドルシュートはクロスバーを越えていきます。74分にはスアレスの強烈なミドルシュートを再びコッホがキャッチ。76分にはロンメダールの右からの折り返しにフンテラールがスルーし、最後はスアレスが合わせますが、これまたコッホがパンチングでゴールを守りきります。コッホの神がかりなセーブに加え、今季は何度も凡ミスを繰り返したディフェンス陣もこの試合では集中が切れません。
ディナモはサミールに代えてグエラ(69分)、タディッチに代えてミキッチ(78分)を入れ、彼らのスピードを生かして打開策を図ります。87分にはマンジュキッチから右サイドでボールを貰ったモドリッチがドリブルで二人をかわし、右からシュートを放ちますが、GKステケレンブルフがセーブ。試合は延長戦へと突入しました。

後半のプレッシャーを耐えたディナモは延長戦に入ると息を吹き返します。91分、右からのモドリッチのCKにドゥルピッチが頭一つ越えてヘディングシュート。タイミングはドンピシャでしたが、ボールは左ポストを外れていきます。
Smandzkic しかしながら94分、ミキッチからの右クロスにファーポストへと回り込んだマンジュキッチ(写真)がフリーでヘディングシュートを叩き込み、勝ち越しに成功。貴重なアウェーゴールとなります。
更にその2分後、右サイドのグエラが折り返したところを中央のミキッチがスルーし、左サイドのマンジュキッチがペナルティエリア内でボールを貰うと、マーカーとの間合いを見て右足を振り抜きます。GKステケレンブルフは一歩も動けず、シュートはネットの右下隅に突き刺さり、リードを更に広げます。
3点を取り返さないと勝ち進めない状況下のアヤックスは、スタムを前線に上げるスクランブル体制に。101分にスタムがポストとなって右サイドのオガラルへとボールを流し、彼からの折り返しにフンテラールが決めて1-3。また延長後半のロスタイム、エマヌエルソンの縦へのロングパスがフンテラールに届き、これを決められて2-3となりますが、ディナモはリードを守りきり、トータルスコア3-3、アウェーゴール2倍ルールの適用により、過去4度欧州王者になったアヤックス相手に歴史的な勝利を収めました。

試合後、ディナモのイヴァンコヴィッチ監督は
「これは私のキャリアにとって最も大きな、そして最も甘い勝利だよ!
アムステルダム・アレーナで実現した勝利を可能にしてくれた選手たち、スタッフ、フロントにおめでとうと言いたい。私たちは驚くべき試合をやり遂げた。勝利への貪欲さと共に、見たこともないほどの闘争心を持ってして素晴らしい戦いをやった。スペクタクルなプレーがスペクタクルな結果をもたらしたのだよ!」
と、普段は淡々と語る彼が声を震わせながらコメントしました。
一方、チェルシー監督就任の噂もあるテン・カテ監督は
「このようになってしまって残念だ。私のチームがこんな悪いプレーをするとは予想もしてなかった。初戦では良い結果だけに、とりわけ攻撃面でもっと良いプレーすると思っていた。選手たちにはとても失望している。彼らとどうやっていけばいいか私は分からない。」
と語っています。
PKに繋がるファウルを貰い、決勝点を含む2得点を決めたマンジュキッチは
「僕たちが偉大なチームであることを示したよ。アムステルダムで3得点を決めて、アヤックスを倒したのだからね。これは僕のキャリアで最大の試合だ。違うなんて口にしたら、それは嘘となるだろう。この試合のために僕たちは生きてきたんだ。」
と喜びを持って語っています。

ディナモ一向のチャーター機は夜2時半にザグレブに到着。選手たちを1200人のサポーターが迎えました。最近はジャーナリストへの侮辱で訴えられ、新スポーツ法に反する移籍のやり取りから検察に目をつけられているディナモの副会長ズドラヴコ・マミッチも、喜びからハメを外しまくり。ザグレブ空港でのパーティでは泥酔して服を脱ぎだす始末。サポーターから野次られて激怒し、一触即発状態となり、特別警官隊が介入するまでになりました。
(空港での写真はこちら/試合の動画はこちら)

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2007年10月 3日 (水)

ヨシップ・クジェ、ルワンダ代表監督に

元ガンバ大阪監督で、2005/06シーズンにディナモを優勝に導いたヨシップ・クジェ(写真)が、ルワンダ代表監督に就任することになりました。
Kuze 「私にとってはルワンダの代表監督になることが新たな監督キャリアの挑戦となる。日本のクラブから具体的なオファーが届いていたが、結局はアフリカを選んだよ。2010年の南アフリカW杯の予選でルワンダを率いるが、アフリカ選手権も彼らにとっては重要な大会だ。日本に再び行くことができたのにもかかわらず、なぜ私がルワンダを選んだかと君たちが問い質したいのは分かっているさ。私は新たな経験を望んだからだよ。労働条件も金銭条件も素晴らしかったしね。」
とコメントを残しています。ツチ族とフチ族による内戦も落ち着いたルワンダは、以前にセルビア人のラトミール・ドィコヴィッチ(ドイツW杯のガーナ代表監督)が監督を務めた経験から旧ユーゴの監督を探しており、クジェに白羽の矢が立ったそうです。またルワンダのU-19代表監督には、ディナモでもクジェのアシスタントを勤めたトミスラフ・オブラドヴィッチが務めることになっています。

クロアチア代表DFのダリオ・シミッチ(32・写真)が再び、ACミランの退団を希望しております。
Ssimic 今季は体調も万全であるのにも関わらず、アンチェロッティ監督に一試合も起用されないのに業を煮やしたシミッチは怒りを感じいます。
「率直に言って何が起こっているのか分からない。非常に不愉快だよ。アンチェロッティ監督との関係は驚きでもある。私にとって競争は激しいことは分かっているが、去年の方がもっと厳しい状況だった。とはいえ、去年は厳しい競争だったとはいえ、2試合に1試合は出場していたのだよ。現時点、私は侮辱されているようなものだ。出場時間を1分も得てないのが事実だし、監督は私に対して口を開くこともしない。」
と語るシミッチはこの冬での移籍を希望。昨年にも起用面の不満から移籍を希望し、マルセイユ、エバートン、ラツィオ、フィオレンティーナ、スパルタク・モクスワからオファーがあったものの、ガリアーニ副会長が契約延長と年俸アップで説得していました。

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クロアチア・リーグ第10節/ディナモ、2位リエカに1点差の勝利

遅れましたが、9月29日に行われたクロアチア・リーグ第10節に関するレポートを。

Smodric_i_sharbini今節の注目のカードは首位ディナモ・ザグレブと2位リエカの直接対決。前節、最下位ヴァルテクスに敗れてリーグ連勝記録が28でストップしたディナモに対し、リエカはハイドゥク・スプリトに4-0と快勝。現在の勝点差は「4」。調子が対象的な両 チームとあって、シーズン前半の行く末を決める試合であります。スタジアムはディナモの本拠地、マクシミール・スタディオン。観客数は思ったほど伸びず、7000人ほどに留まりました。
ディナモはベストメンバーを組んだのに対し、リエカは中盤のリーダーであるイヴァノフが累積警告で欠場。また右MFのブーレもウイルス性の病気で欠場しました。とはいえ、両チームの若きキャプテン、ディナモのモドリッチ(22歳・写真左)とシャルビーニ(20歳・写真右)のファンタジスタ対決が見所です。
お互いが削りあう激しい試合となりましたが、地力で上回り、ホームの利があるディナモが優勢に試合を進めていきます。とはいえ、リエカは中盤を支配されることなく、最終ラインもなかなか突破させません。
Smadzkic ディナモのチャンスは21分、マンジュキッチ(写真)が右サイドでDFブディチンからボールを奪うとエリア内に侵入。GKジリッチの手の届かないところにシュートを狙いますが、ボールはクロスバーを叩きます。
38分にはモドリッチがバラバンに繋ぐものも、バラバンのシュートは右ポストを逸れてしまいます。43分にも同じくバラバンがシュートを放ちましたが、GKジリッチがキャッチ。プレーの激しさを示す数字として、前半だけで実に32ものファウルを数えました。
後半に入ってもディナモの優勢は続きます。52分、マンジュキッチの右クロスにサミールがヘディングシュート。これに対してもGKジリッチが好反応でコーナーに逃れます。続くコーナーキックではドゥルピッチがヘディングシュートをしますが、ボールはクロスバーを越えていきました。
ディナモはバラバンが太股を痛めて負傷退場してしまい、このセットプレーの直後にタディッチがピッチに送られます。66分のマンジュキッチのシュートはGKジリッチに止められ、71分にはタディッチがワンタッチでマーカーをかわし、縦に抜けてシュートを試みますが、ボールはサイドネットの外側に留まります。
Snakon_gola なかなか均衡が破れない試合でしたが、76分、モドリッチの左CKにニアのシルデンフェルドがヘディングでボールの方向を変え、中央からヴコイェヴィッチが頭から飛び込んでのヘディングシュート。ボールはネットに突き刺さり、ディナモが決勝点を決めます。ヴコイェヴィッチはイヴァンコヴィッチ監督の方へと走り出し、批判の矢面に立ちつつあった監督としっかりと抱き合ったのが、印象的なシーンでありました(写真はガッツポーズするヴコイェヴィッチ)。
リエカもシャルビーニをはじめシュートを放ちましたが、枠を捕らえきれないが、GKコッホがセーブ。試合はそのまま1-0でディナモが勝利。選手たちに自信を取り戻す貴重な一戦となりました。
試合後、ゴールを決めたヴコイェヴィッチは
「この勝利は偉大な監督であり、同様に偉大な人物であることを示したイヴァンコヴィッチ監督に贈るものだ。僕たちにとっては辛い一週間だった。しかし、リエカ戦では僕たちが大きな家族であることを示したんだ。」
とコメントをしています。

怪我人も続出し、5位と不調に甘んじるハイドゥク・スプリトは、8位シベニクとアウェーで対戦。スプリトと同じダルマチア地方にあるシベニクとの一戦は「ダルマチア・ダービー」(Dalmatinski derbi)と呼ばれ、リエカとの「アドリア海ダービー」と共にライバル意識のある戦いであります。シベニクは昨季から13人の選手(うち9人がレギュラー)がチームを離れたため、シーズン当初はパッとしなかったものの、カリニッチ新監督のもとでチームが再構築。アウェーでは1分4敗と弱いですが、ホームでは第8節にリエカに今季初の土をつける勝利を収めております。
試合はシベニクのペースで進みます。10分にガブリエルのシュートがGKバリッチに弾かれ、ガラ空きになったゴールをゼッツがシュートを押し込もうとするものの失敗。ハイドゥクは24分にツェルナトがドリブルで次々とDFをかわし、シュートするもののGKルニェに防がれます。
後半はシベニクがチャンスを何度も作るものの決定機を失敗し続ける中、76分、クルシッチの右からのパスを受けたヴィタイッチが、一人選手をかわしてバイタルエリアから左下隅へと狙い済ましたシュートを決めて1-0とリードします。リエカを沈めるゴールも決めたMFヴィタイッチはハイドゥク・ユースで育ちながら、お払い箱になった選手でありました。
連敗が許されないハイドゥクは猛攻撃を仕掛け、80分、アンドリッチの直接FKはGKルニェがキャッチしながらもボールはゴールラインを割ったように見えましたが、線審はノーゴールの判定。ロスタイムにはコーナーキックから前線へと上がったGKバリッチが一つ頭越えてヘディングシュートを試みますが、ボールはクロスバーを越えてしまい、1-0でシベニクが勝利。ハイドゥクはリエカ戦に続いて敗れてしまいました。
Kresic この試合から二日後、ハイドゥクの監督セルゲイ・クレシッチ(写真・sport-netより)が辞表を提出。しかし、スプリト市長やスプリト・ダルマチア県知事までもが加わっての説得会議が行われ、クレシッチの留任が決定しました。その条件として現場にマイナス的な介入をするとされたスポーツ・ディレクターのイヴィツァ・シュリャクの辞任をクレシッチが要求したと言われています。辞表を提出したことに関してクレシッチ監督は
「辞表を提出した一つの理由としては、クラブにポジティブな効果を呼びたかったことがある。ところが、幹部が辞任では問題は解決しないと考えている。」
とコメントを残しています。
次節、いよいよハイドゥク・スプリトとディナモ・ザグレブが対決する「クロアチア・ダービー」(Hrvatski derbi)がハイドゥクのホーム、ポリュウド・スタディオンで行われます。両チームの勝点差は11まで開いていますが、今季初の対決だけに私もスプリトまで取材に行く予定です。

全試合の結果はこちら。

Sibenik - Hajduk Split 1:0
1:0 - Vitaic

Zadar - Varteks Varazdin 2:0
1:0  3' Zupan
2:0 58' Elez

Cibalia Vinkovci - Zagreb 3:1
1:0  5' Malcic
1:1 18' Lovrek
2:1 40' Malcic
3:1 52' Maroslavac

Inter Zapresic - Slaven Belupo 1:0
1:0 48' Starcevic

Osijek - Medimurje 4:0
1:0 19' Niksic
2:0 42' Pavlicic
3:0 76' Niksic
4:0 90' Niksic

Dinamo Zagreb -Rijeka 1:0
1:0 76' Vukojevic

【順位】
1位…ディナモ・ザグレブ(勝点27)、2位…リエカ(20)、3位…ザダール(20)、4位…スラヴェン・ベルーポ(16)、5位…ハイドゥク・スプリト(16)、6位…チバリア・ヴィンコヴチ(14)、7位…オシエク(14)、8位…シベニク(14)、9位…ザグレブ(11)、10位…インテル・ザプレシッチ(10)、11位…メヂムリエ(4)、12位…ヴァルテクス・ヴァラジディン(3)

【得点】
8ゴール…モドリッチ(ディナモ)
7ゴール…ヂャロヴィッチ(リエカ)、ロヴレク(ザグレブ)
6ゴール…シャラノヴィッチ(メヂムリエ)、マンジュキッチ(ディナモ)、カリニッチ(ハイドゥク)、テルケシュ(ザダール)、ジュパン(ザダール)
5ゴール…ゼッツ(シベニク)、ヴィタイッチ(シベニク)、バラバン(ディナモ)

【アシスト】
4アシスト…ジュパン(ザダール)、ムムレク(ヴァルテクス)、モドリッチ(ディナモ)、シャルビーニ(リエカ)
3アシスト…マンジュキッチ(ディナモ)、バラバン(ディナモ)、ブーレ(リエカ)、ヂャロヴィッチ(リエカ)、ツェルナト(ハイドゥク)、ポリャーク(スラヴェン)、ヴルチーナ(スラヴェン)、テルケシュ(ザダール)

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