親善試合/クロアチアvs.スロバキア戦
すっかり遅れてしまいましたが、10月16日に行われた親善試合「クロアチアvs.スロバキア」のレポートを。
会場となったのはリエカのカントリーダ・スタディオン。この日のリエカは小春日和でありましたが、親善試合ということもあり客の入りはキャパの6割ほどの6000人ほど。それでもリエカ市民はクロアチア代表のサッカーを楽しむ機会に恵まれました。
この試合で先発・代表デビューをするはずだった19歳のハイドゥク所属のFWカリニッチは、U-21代表でFWタディッチ(ディナモ)が怪我をしたために急遽、A代表からU-21代表へと移されてしまいました。よって疲れが顕著なオリッチとエドゥアルドをイスラエル戦同様に先発起用。またボルシア・ドルトムントの依頼でコヴァチ弟は出場せず、所属クラブでの出場が多いスルナやモドリッチ、シムニッチもベンチスタートとなりました。これを機にビリッチ監督は普段は控えに回っている選手たちにチャンスを与えております。スタメンは以下のようになりました(4-4-2)。
GKルニェ-(右から)DFチョルルカ、シミッチ、ドゥルピッチ、クネジェヴィッチ-MFレコ、ヴラニェシュ、ラキティッチ、バビッチ-FWエドゥアルド、オリッチ
一方のスロバキアもニュルンベルグ所属のFWミンタル、ヴィテクをはじめ主力選手が怪我で欠場。既に欧州選手権の敗退が決まっており、コツィヤン監督は若手にチャンスを与えました(4-4-2)。
GKハイドゥフ-DFシングラール、シュクルテル、ブレジンスキ、ペトラシュ-MFヴァシュチャク、シュトゥルバ、ハムシク、チェフ-FWヘセク、ホロシュコ
前半立ち上がりは個々の連携の不慣れさもあってラインがずるずると下がり、スロバキアの方がチャンスを作り出します。とりわけ右サイドのMFバシュチャクが、本職ではない右SBのポジションに入ったクネジェヴィッチから再三フリーになることでチャンスを演出します。
7分、そのヴァシュチャクが右サイドから折り返し、中央のチェフがヒールで蹴り込んだシュートはゴールポストに当たり、最後はGKルニェがキャッチします。 クロアチアも20分を過ぎてからようやく主導権を握り、24分、28分とエドゥアルドがシュートを放ちますがゴールに繋がらず。32分にはシミッチの長い縦パスがエドゥアルドに通ってGKと一対一になったものの、間合いを取るタイミングに失敗して、飛び込んだGKハイドゥフにボールをキャッチされてしまいます。
スロバキアは40分、右サイドでフリーとなったハムシクが強烈なミドルシュートを放ちますが、これはGKルニェがキャッチします。
前半はお互いチャンスを潰しあったわけですが、ロスタイムに先制点が生まれます。右サイドのチョルルカからDF2人の背後を狙って放り込んだところにエドゥアルドが併走し、クリアし損ねたところを奪ってシュート。ボールはGKハイドゥフの手に当たってゴール方向に向かったところをオリッチ(写真)が押し込んで1-0とします。
後半頭から修正を入れ、ラキティッチを右MFに入れ、ボランチにはデビュー戦となるヴコイェヴィッチ(写真)を起用。これがズバリと当たり、クロアチアにとって一方的な展開となります。走力とボール奪取力に優れたヴコイェヴィッチに守備面を任せられることで、ヴラニェシュが攻撃参加しながらシンプルにボールをはたき、それにラキティッチがチャンスメーカーとして変化をつけていきます。
後半開始早々(48分)、ラキティッチの左CKにヴコイェヴィッチが中央から飛び込んでヘディングシュートを決め、クロアチア史上最短となる代表初ゴールを挙げます。
更にその後、オリッチが左クロスを上げ、ラキティッチが中央でフリーとなってヘディングシュートをしますが、これはクロスバーに叩かれます。
追加点は69分、左からバビッチがグラウンダーでクロスを入れると、ファーポストに向かって走り込んだオリッチが流し込んで3-0とリードを広げます。
70分からスルナとモドリッチを入れ、ファンサービスに加えて攻撃面に幅を持たせましたが、シュートチャンスを作りつつもゴールは生まれることがなく、試合はそのまま3-0で終わりました。
(写真はsport-netより)
試合後、ビリッチ監督は
「一般的に見て、良い試合だったと思う。スロバキアはしっかりとした好チームで、ナポリでプレーするハムシクをはじめ、大きなクラブでプレーする選手が何人もいた。彼らは我々以上に出だしが良く、スピードと正確性もあった。我々は最初の25分間かなり悪く、相手に何度も危険なゾーンに入られてしまったよ。自分たちのプレーをすることができず、ロングボール頼りになってしまった。前半では良いタイミングで得点が入り、後半に関して言えば、私が指揮して以来、最高の45分であったかもしれない。
この試合では新たなバリエーションを試し、ある選手たちにより多くの出場時間を与えられただけに、目的に見合ったものであった。ある選手はチャンスをしっかりと利用したし、ある選手は少ししか利用しなかったかもしれないが、おおよそ満足はしているよ。
またオリッチの活躍にはとりわけ嬉しく思っている。涙が出そうになったほどだ。彼が本物のフォワードであることを自ら示したし、前半は彼のアグレッシブさでチームが持ちこたえられたのだよ。」
とコメントしています。
翌日のロシアvs.イングランド戦はご存知のように、チキンな戦いをしたイングランド相手にロシアが後半に逆転勝利(2-1)。イングランドの勝ちか引分けでクロアチアの本大会出場が決まるはずだったのですが、これで11月17日のアウェーのマケドニア戦まで出場決定が持ち越されました。引分け以上で出場が決まるものの、マケドニアは歩の良い相手ではなく、1999年6月にアウェーで1-1と引き分けたことがユーロ2000敗退に繋がってしまいました。
試合をテレビで観たビリッチは
「望んでいたように試合は終わらなかったが、このような結果も考慮に入れておく必要はあった。モスクワでの両者の戦いで全てが決まっていただけ、少し盛り下がってしまったよ。とはいえ、本大会出場における障害を片付けるのに、今まで誰も我々を助けることはしなかったのも事実。最後の最後まで自分たちで障害を片付けなくてはならないということだ。一ヶ月後のスコピエでのマケドニア戦に集中して準備をしていくつもりだよ。」
と述べています。
とはいえ、イングランドとロシアが予選を突破し、クロアチアが敗退するにはかなりの条件が必要です。まずは11月17日、クロアチアがマケドニアに負け、ロシアはイスラエルに勝利。11月21日、ロシアがアンドラに勝利するのは堅いとはいえ、イングランドはクロアチアに2-0もしくは3点差以上で勝利しないと突破はできません。それ以外のケースではクロアチアが突破することになり、まだまだ確率はかなり高いと言えましょう。
ちなみにこの試合、私はいきつけのスポーツカフェで観てましたが、そこにいた知人に「クロアチアの本選出場が絡んでなかったら、クロアチア人はイングランドとロシア、どっち応援するの?」と質問したところ、「プロテスタントと正教徒、どっちも応援するもんか!」と期待通りの答えが戻ってきました。
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U-21欧州選手権予選についても触れましょう。
17日、クロアチアU-21代表はアウェーでフェロー諸島U-21代表と対戦しました。つい先日も嵐でフランスA代表のチーム一向が飛行機で来られないなんてニュースがありましたが、クロアチアのチーム一向も着陸時には嵐に見舞われ、いきなり急降下。何とか着陸はしたものの、選手たちは言葉を失い、青ざめた状態だったそうです。 この試合ではA代表から借り出されたカリニッチ(写真)が、ブシッチと組んでのツートップ。これまでカリニッチはU-21代表に何度も召集されてきたものの、その度に怪我を理由にしてクラブが拒否してきました。今回のフェロー諸島戦では彼が救世主になります。
開始4分、相手のロングボールに合わせてGKヴァルギッチが飛び出したところ、ボールが強風で戻されてしまい、それをFWハンセンがヘディングで押し込んでフェロー諸島がよもやの先制をします。
しかし14分、イリチェヴィッチのアシストからカリニッチが対角線上にシュートを決めて、クロアチアが同点に追いつきます。
決勝点は22分、イリチェヴィッチとワンツーで抜けたブシッチがシュートしたボールはGKニールセンに止められたものの、弾かれたところをカリニッチが押し込んで2-1。
その後は前半に3度に渡ってGKと1対1の決定機がありましたが、イリチェヴィッチ、カリニッチ、ブシッチが決められず、試合はそのまま2-1で終わりました。
クロアチアのラディッチ監督は試合内容に満足しており
「得点結果には現れてないが、我々は本当に良い試合をした。最初の30分間はとりわけ、この予選で最高の30分間だったのではなかろうか。相手の実力は比較対象にならないとはいえ、イタリア戦の前半で見せたプレーよりも良かったと思う。
本選出場の戦いにまだ生き残れることになったこの試合の勝利に私は喜んでいるよ。困難な条件のもと、勝利まで導いた選手たちを祝福したい。こんな酷い風が吹いた中でプレーするのは本当に難しい。だから、この勝利は意味があるものなのだよ。今からギリシャ戦(11/17)に準備をしていくが、これが全試合の中で最も大事な試合となるだろう。」
とコメントしています。ギリシャvs.イタリアが2-2のドローとなったため、プレーオフ(2位まで)への道が開けてきました。11月のギリシャ戦にはFWマンジュキッチやMFシャルビーニもチームに加わる予定です。
【順位】
1位…イタリア(勝点13/5試合)、2位…クロアチア(勝点12/6試合)、3位…ギリシャ(勝点10/5試合)、4位…アルバニア(勝点7/5試合)、5位…フェロー諸島(勝点3/6試合)、6位…アゼルバイジャン(勝点1/5試合)
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コメント
ひとつお聞きしたいのですが、ブレーメン所属のクラスニッチはトレーニングを再開してると聞きましたが、いつ頃に帰ってくるか分かりますかね?
投稿: ボバン | 2007年10月21日 (日) 10時10分
11月10日に掲載された記事では(ソースは国外サイトですが)、既にトップチームの練習に加入し、10日後のヘルタ・ベルリン戦にはプレーできる、と書いてましたが、どうでしょう? まだアスリートとしての体力強化やプレー感覚を取り戻すのには時間がそれなりにかかると思います。
とはいえ、先月にドイツ・サッカー協会がメディカルチェックを行った際には出場OKが出ただけに、復帰はそんなに遠くない話だと思いますよ。
投稿: 長束恭行 | 2007年10月21日 (日) 14時31分
どうも有り難うございます。クラスニッチが復帰すれば、ブレーメンの攻撃力もバイエルン並みとは言えませんが去年のような豪快な試合が見れると期待しています。代表でも、一人のFWとしてチームを活性化して欲しいと思います。
ところで、オリッチは代表で2得点、所属クラブでハットトリックと活躍していますね。(ごっつぁんゴールが多いようにも感じますが)
投稿: ボバン | 2007年10月25日 (木) 22時15分