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2007年11月30日 (金)

ディナモ、ブランに惜敗/UEFAカップ

29日、UEFAカップのリーグラウンド第3節が行われました。
初戦となる第2節バーゼル戦(ホーム)を優位に進めながら、数あるチャンスをモノにできず引分けに終わったディナモ・ザグレブにとって、このアウェーのブラン戦は落とせない試合。グループでも最弱と考えられる相手だけに勝点を計算しなくてはなりません。試合はブランの本拠地があるノルウェー第二の都市ベルゲンにて行われました。

ディナモ・ザグレブはベストメンバーで構成。ワントップには怪我から明けたバラバンが起用されました。システムはいつもの4-2-3-1です。
GKコッホ-DF(右から)エトー、ドゥルピッチ、シルデンフェルド、チャレ-MFヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュ-サミール、マンジュキッチ、モドリッチ-FWバラバン

相手となるブランは創立1908年という古い歴史を持つクラブ。長くローゼンボリの陰に隠れていましたが、今季はUEFAカップ一回戦でブルージュを下し、また44年ぶりにリーグ優勝を果たしました。初戦のバーゼル戦を0-1、続くレンヌ戦は終盤に追いつかれて1-1。北欧にありがちな長身選手の多いチームで、スタメンの平均身長は185cmです(システムは4-4-2)。
SKブラン:
GKオプダル-DFダール、ビャルナソン、ハンストヴェイト、コラレス-MFフセクレップ、ソリ、バッケ、ムーン-FWカラダシュ、ヘルスタット

Sbran ここ数日のベルゲンは雪ではなく雨が続き、ディナモとしてはピッチ不良が心配されていたものの、二日間ピッチに雨よけのシートを敷いてくれたことで、まずますのピッチで試合が行われました。
選手個々の出足が早く、足元の技術がより正確なディナモが前半をコントロールします。ブランはゴール前をゾーンディフェンスで固めて、足の速いFWヘルスタットを活かしたカウンターに活路を見出します。
ディナモの最初のチャンスは11分、右からサミールから浮き球のパスがペナルティエリアのマンジュキッチに通り、胸トラップからシュートを放ちますが、ボールは左ポストを逸れていきます。その1分後にはモドリッチから右のマンジュキッチに展開、マンジキュッチはドリブルからシュートするもGKオプダルの正面。17分、ヴコイェヴィッチのミドルシュートは枠を捕らえたものの、GKオプダルの好セーブによって防がれます。
守勢に回ったブランでしたが、18分からインターセプトからチャンスを作り、右からヘルスタットがシュート。これはGKコッホが足で止めると、こぼれ球から放ったフセクレップのシュートはコッホの脇を抜けますが、背後にいたエトーがクリアします。
ピンチを迎えたとはいえ、その後もディナモが完全にゲームを支配。ブランは動きの鋭いモドリッチとサミールを捕まえられず、ボールを奪ったところでもアグレッシブなディナモ・ディフェンスにあっさりとボールを奪われ返されます。
26分にはモドリッチがエリア内左でマーカーを外して、右のアウトサイドキックで完璧なセンタリングを入れたものの、ゴール前にいたバラバン、マンジュキッチ、サミールのいずれも反応できません。
ブランは31分、右SBのダールがロングボールが前線に送るとヘルスタットがシルデンフェルトを追い抜いてGKコッホと一対一に。これにはコッホが上手く飛び出してシュートをセーブします。
Ssifo_2ディナモの最大のチャンスは33分、モドリッチがセンターライン手前でボールをもらうと、相手のタックルをかわしてドリブルでゴール前へ。コースを見極めながら右足でシュートを放ちますが、ボールは右ポストに叩かれてしまいます。その1分後にはマンジュキッチが左からシュートを放ったものの、これにもGKオプダルが好セーブ。バーゼル戦に続き、呪われたかのような決定力不足に嘆きます。
そして待っていたのは、欧州におけるディナモならではのストーリーでした。45分、ムーンからの縦パスがディナモの両センターバックに挟まれたヘルスタットに通ると、ヘルスタットはそのまま二人を振り切ってゴール方向へ一直線。追っかてきたシルデンフェルド(写真)がペナルティエリアでヘルスタットを背後から倒してしまって一発レッド。最悪な時間帯でした。PKもビョルンソンに決められて0-1。ディナモは良い試合運びをしながら、得点力不足とディフェンスのミスでまたして劣勢に立たされてしまいました。

イヴァンコヴィッチ監督は後半頭からサミールを下げ、カルロスをセンターバックに入れて体制を整えます。一人少ないながらもゲームをコントロールしようとするディナモ。49分にその見返りがやってきます。左CKをモドリッチが蹴り込むと、中央からヴコイェヴィッチが飛び込んで同点のヘディングシュート。ゲームは振り出しに戻し、引分けをよしとしないディナモは果敢に逆転を狙いにいきます。
しかし、左膝に故障を抱えるモドリッチは堅いピッチのせいで運動量が落ちていき、他の選手も次第に疲れが見えてきます。60分にはバラバンに代えて若いタディッチを投入しますが、ここは経験のあるヴグリネツかショコタ(彼はベンチからも外されましたが)を選択、もしくは、あくまで勝点1狙いで守備的に運ぶべきでありました。リスクを背負いながらディフェンスはよく持ちこたえていたものの、72分、フセクレップの右クロスにファーポストからカラダシュがヘディングシュート。GKコッホが一度はセーブしますが、こぼれ球を元リーズのバッケに押し込まれ、ブランに1-2と突き放されます。
最後の力を振り絞って点を奪いにいったディナモでしたが、86分にパス交換からタディッチがエリア内でシュートを狙いにいくもディフェンダー二人に挟まれて打ち切れず、その1分後にはモドリッチの右CKにタディッチがフリーでヘディングするも枠を外してしまいました。試合はそのまま1-2で終了。グループリーグ突破のために必要な勝点を北欧の地で全て落としてしまいました。

試合後、ディナモのイヴァンコヴィッチ監督は
「前半は素晴らしいプレーをし、ゲームを支配しながらチャンスを作ってきたのにもかかわらず、ゴールを奪うことができなかった。ゴールを決めるための練習をいつもやっているのだかね。欧州カップでは決定力をもっと高めなければならないのだよ。失敗ばかりしていては、グループリーグを通過することはできないんだ。
このような試合はもっと起こるだろう。しかし、相手にはマークしづらい力強さをもった二人のフォワード(ヘルスタット、カルダシュ)がいたことを君たちは忘れてはならない。とはいえ、まだ全ては手中にある。最終節のレンヌ戦まで望みが残っていると考えたいものだ。ハンブルガーSVに勝利を狙いに行くことで、己の欧州カップの生き残りを掛けるつもりだ。」
とコメント。またブランのミエルデ監督は
「前半の終了間際が試合の分かれ目だった。理想的なタイミングでリードし、数的優位に立てた。とりわけこの勝利には満足しているよ。3週間前にリーグが終わってチームは心身共に疲れていただけに、休みは必要なものだった。ディナモは能力的、技術的に見ても、どんなチームが相手でも勝てるチームだ。しかし、彼らは疲れていたようだ。3日置きに試合をすると後が残るものだからね。」
と語っています。

試合数の差があるとはいえ、これでディナモは4位に転落。3位までが決勝トーナメントに進めるリーグ戦だけに厳しい状況に立たされています。次は12月5日にホームでハンブルガーSVと対戦します。ブンデスリーガでも絶好調なハンブルガーはレンヌを3-0と一蹴。この試合でも1アシストと活躍したクロアチア代表FWオリッチにとっては古巣対決となります。
1位…ハンブルガーSV(勝点6/2試合)、2位…バーゼル(勝点4/2試合)、3位…ブラン(勝点4/3試合)、4位…ディナモ・ザグレブ(勝点1/2試合)、4位…レンヌ(勝点1/3試合)

(一枚目の写真はSport-netより)

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2007年11月29日 (木)

クロアチア・カップ準々決勝第2戦

27・28日にクロアチア・カップ準々決勝第2戦が行われました。

初戦は辛うじて2-1と勝利したハイドゥク・スプリトは、アウェーでインテル・ザプレシッチと対戦しました。ピッチはぬかるんだ挙句、気温は氷点下という厳しい条件下でありました(撮影取材をする身としては厳しかったですが…)
ハイドゥクはFWカリニッチが怪我から復帰。ラトビア代表の遠征で胃腸をやられて前節は欠場したFWヴェルパコヴスキスと共にツートップを組みました。ちなみに前節で太股の筋肉を傷めたルカビナは年内復帰が絶望視されています。またトゥドールはリーグ戦のレッドカードのため欠場しています。
Spenar_kalinic_2 リーグ戦を含めれば今季3戦3勝と、ハイドゥクにとっては歩の良い相手であるインテルなわけですが、リーグ戦での不調を振り払うかのようにハイドゥクは前半の25分間で試合を決めてしまいます。
14分、ハイドゥクは相手陣内でインターセプトすると、ボールはMFチェルナトへ。チェルナトがペナルティエリアに入ったところをGKシャルリヤが倒してしまいPKに。これをカリニッチが右に丁寧に決めてハイドゥクが先制します(写真)。
今日のハイドゥクは最終ラインを高く保ち、中盤のアンドリッチやルビール、また左SBフルゴヴィッチからボールが次々と前線に供給。ハイドゥクにとっては今季最高といえるサッカーを見せました。
Scernat 2点目は20分。フルゴヴィッチが左サイドをドリブルでえぐると、最後はペナルティエリア内左でフリーのチェルナトへ。チェルナトは得意の左足でノートラップにてシュートを叩き込みます(写真)。
更に24分、ルビールからスルーパスが縦に通ると、カリニッチがGKと一対一の形を作り、あっさり決めて3-0とします。
後半はテンポを落としたハイドゥクでありますが、ヴェルパコヴスキスや途中交替で入ったユース上がりのFWチョップがインテルDF陣をかきまわします。締めくくりは86分、フルゴヴィッチがペナルティエリアの外から左足で強烈なミドルシュートを逆ネットに突き刺し、4-0で勝利。トータルスコア5-1で準決勝進出を決めています。

Skartelo_pokusa_sut_glavomザグレブはホームで唯一2部から勝ち上がっているセゲスタを迎えました。初戦はスコアレスドロー。ザダール、リエカと一部のチームを下してきたセゲスタは、かつてインテル・ザプレシッチを2位へと導いたスレチコ・ボグダン監督が指揮しています。またこの試合はベンチに留まったものの、元セレッソのMFマリオ・ガルバも所属しています。
一部の格を見せるかのようにゲームを支配するザグレブでしたが、セゲスタは9分、元ザグレブのFWボジッチが緩慢な守備をついて先制点を決めます。しかしザグレブも14分、MFムイジャが右サイドを崩し、中央への折り返しにMFパルロヴが同点シュートを決めます。
Sciro その後も押し続けるザグレブとはいえ、この日はFWロヴレクとMFイブリチッチがブレーキ。何度もチャンスを潰したのですが、44分に左MFチュトラがミドルシュートをペナルティエリア外から決めて逆転に成功します。
後半のザグレブはは先のハイドゥク戦同様にテンポが落ち、66分にはパルロヴが二枚目のイエローで退場。それでもセゲスタ相手にゲームを支配し、82分にMFブルクリャチャのアシストからFWグルギッチが追加点。87分にセゲスタのMFオシュトリッチにミドルシュートを決められますが、相手の全員攻撃を防ぎきり、トータルスコア3-2でザグレブが準決勝進出を決めています。
(写真は試合後に観客の声援に応えるザグレブのブラジェヴィッチ監督)

また初戦のホームで4-0にてチバリア・ヴィンコヴチを一蹴したヴァルクテス・ヴァラジディンは、アウェーの第2戦を主力抜きで挑んだ相手に2-0と勝利し、準決勝進出を決めています。

[11/27]
Cibalia Vinkovci - Varteks Varazdin 0:2 (第1戦 0:4)
Inter Zapresic - Hajduk Split 0:4    (第1戦 1:2)
[11/28]
Zagreb - Segesta 3:2          (第1戦 0:0)
[延期]
Dinamo Zagreb - Slaven Belupo (ディナモがUEFAカップ出場のため)

Rapajic 今季は所属クラブを決めず、ハイドゥク・ユースで練習を続ける元代表MFミラン・ラパイッチ(34・写真)にルーマニアのステアウア・ブカレストが高額の2年契約のオファーを出していることが明らかになりました。ハイドゥクのスポーツディレクター、エルチェグはラパイッチと何度か連絡を取ってハイドゥク加入を勧めているものの、ステアウアと張り合う金額は出せないとはいえ、わずかな希望を持っているようです。スタンダード・リエージュとの契約が昨季で切れたラパイッチは、夏にカタールのクラブから年俸100ユーロのオファーがあったものの、2倍の年俸を要求したのちに断っています。

元代表MF/DFイゴール・ビシュツァン(29)が事前の報道の通り、ディナモ・ザグレブと契約を結ぶことに合意しました。26日にマミッチ副会長とビシュツァンとの間で話合いがもたれ、3年契約を結ぶことが決まっています。

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2007年11月26日 (月)

ワールドカップ予選抽選の反応

ワールドカップ2012・南アフリカ大会の予選グループ発表を受けて、様々な反応をまとめてみました。

スラヴェン・ビリッチ (クロアチア代表監督・写真)
Sbilic 「難しいグループだ。主観的かもしれないが、これは私にとって最も難しいグループだ。ただ、誰も恐れることはない。意味なく第1ポットの国になったのではないのだから。誰が相手であっても戦えることを我々は示したとはいえ、最悪に難しいグループだよ。第2ポットと第3ポットからはこれ以上手強い相手が存在しない。ユーロに出られなかったとはいえ、イングランドもウクライナもワールドカップ・ドイツ大会のベスト8だ。二度連続で出場を逃すなんてことは許されないだろう。さらにウクライナは2012年のユーロ開催国だ。本大会出場のために全てをやってくるだろう。
イングランドについて話すことはない。抽選から直ぐにイングランドから電話があり、「オー、ノー!」と言ってきたよ。私も同じリアクションを彼らにしたけどね。我々クロアチア人は"イングランドなんて"と考えることは分かっている。しかし……。一方で、またウェンブリーで試合ができるのは嬉しいね。
更に私たちにとっては長旅が待っている。カザフスタンまでは飛行機で6~7時間だ。ユーロのグループリーグ終盤ではカザフスタンとの試合が楽ではないことを見せつけられた。ベラルーシに関していえば、オランダ相手の勝利が全てを物語っている。だからこれは難しいグループなのだよ。ワールドカップ出場はそっとやちょっとじゃ実現不可能だ。けれども、他の国々のどれもが我々よりも優れているとは思わない。恐れはせず、注意深く予選に入っていくつもりだ。」

アリョーシャ・アサノヴィッチ (アシスタントコーチ)
「まったく幸せというわけではない。このグループは本当に報われないものだよ。イングランドとウクライナはとりわけ実力があるし、ベラルーシはカザフスタンはまるで"機雷"のような先の戦いが見えない相手だ。もっと楽なグループになれたのだろうけどね。それ以外にもピレネー山脈のアンドラにまた行かねばならない。ただ、誰にも怯えることはない。ランキングやイメージではクロアチアがグループのトップなのだから。」

ロベルト・プロシネチュキ (アシスタント)
「グループはアトラクティブなものではない上に、非常にやり辛いものだ。この先も私はイングランドを恐れている。間違いなくチームは良くなり、機動力を備えてくるだろう。もしユーロに続いてワールドカップ予選も失敗したら、イングランドは破滅状態となるだろうからね。ウクライナ、そしてフレブを要するベラルーシも手強い相手だ。」

MFダリヨ・スルナ (シャフタール・ドネツク所属)
「えー、またイングランドかい。彼らは本当に運がないね。再び彼らと対戦することを喜んでいるよ。僕たちは彼らにとって"毒"のようなものだがらね。"僕の"ウクライナはモチベーション高く挑んでくるだろう。このワールドカップの後にはユーロの開催国だからね。とはいえ、僕たちと戦うのは困難を伴うはずだ。ベラルーシとカザフスタンはアウェーで戦うには厄介な地雷みたいな存在だ。しかし、震える必要性はない。他の国々が僕たちのことを考えればいい。」

GKスティペ・プレティコサ (スパルタク・モスクワ所属・写真)
Spretikosa_2 「信じられない! またイングランドとかい? 第2ポットからイングランドを引くというのは、可能な限り最も難しい相手を引いたということだ。間違いなくきつい戦いとなるだろう。イングランドはあの敗北を忘れようと全てをやってくるだろうからね。ウェンブリーのあの一戦のあと、イングランドとの再戦はサッカー界でも最も興味深いものとなるだろう。きっと激しい戦いをしてくるだろうし、復讐を果たそうとしてくるだろう。復讐心は僕たちにとっても彼らにとっても危険なものとなるはずだ。
やりたくなかったけど、こうなってしまったからには仕方ない。イングランド人には僕たちを評価し、重要視しなければならないことを示すことができた。僕たちのモチベーションも欠けることはないだろうね。僕たちは小さな国だけど、ワールドカップ抽選会では世界の10本の指に入る国として迎えられた。残りの対戦国については? 抽選結果は悪くないと思う。ユーロ予選よりもまだましだ。」

MFイヴァン・ラキティッチ (シャルケ所属)
「相手チームとなる国々が危険で厄介なことに疑いはない。しかし、現在誰もがサッカーをプレーしているんだ。僕たちにはクオリティがあるし、本命であるだけに恐れるものはない。もしワールドカップに出場したいのならば、常に勝ち続けなければならないんだよ。」

MFデビッド・ベッカム
「非常に強いクロアチアと再び一緒のグループになった。これはとても難しいグループで、全ての代表チームをリスペクトしなくてはならない。同時に僕たちはポジティブに考えなければならないね。」

FWマイケル・オーウェン (ニューカッスル所属)
「クロアチアの一人の選手もクオリティ面でイングランドの選手と比較できない、と僕は絶対的に考えている。才能や知識がベースで僕たちはクロアチアに負けたのではない。自意識のせいだけで負けたと言いたいんだ。とても要求の多いサポーターと更に要求の多いメディアがイングランドにいる。代表には最高のものだけを要求されるのだよ。選手たちがプレッシャーに耐えられるかどうかなんて全く別の話になってしまっている。クロアチア戦を注意深く追っていたけど、試合中は不幸なプレッシャーだけが悪く働いてしまったのだと思っているよ。イングランドのチームにどんな選手がいるか、どれだけのタレントがいるかを見たならば、何も制覇できないと想像することはできないんだ。」

ブライアン・バーウィック (イングランド・サッカー協会会長)
「再びクロアチアを引いたことには驚いていない。むしろ、二つの敗北を仕返しする機会だと捉えている。このグループの問題は手強いクロアチアがいるだけではなく、遠いウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンまで行かねばならないという事実だ。それは決して容易いことでなすだろう。」

ベルント・シュタンゲ (ベラルーシ監督)
「非常に困難だ。グループにクロアチアとイングランドという二大本命がいることは興味深いが、私は他の国々があっさりと消去されるとは思いたくない。」

ジャンカルロ・アベーテ (イタリア・サッカー協会会長)
「私はイングランド代表団の隣に座っていたが、クロアチアが引かれた瞬間、彼らの目には恐怖心がありありだったよ。」

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クロアチア・リーグ第17節

24日、クロアチア・リーグ第17節が行われました。

首位ディナモ・ザグレブは、最下位メヂムリエとアウェーで対戦しました。15勝1敗というハイペースで勝ち進むディナモですが、唯一勝ちを逃したのは第9節のヴァルテクス・ヴァラジディン戦。その時はヴァルテクスが最下位だったわけですが、今回も最下位相手に苦しい戦いを強いられました。
司令塔のMFモドリッチは代表二連戦で疲労が溜まり、かつ固いピッチでは故障持ちの膝に負担が掛かるために休ませ、またMFマンジュキッチは累積警告のために欠場。ワントップには怪我から明けたバラバン、そしてトップ下にショコタを起用しました。一方のメヂムリエは、最下位とはいえ闘争心むき出しの今季最高といえる戦いぶりをみせます。
ディナモは18分、FWバラバンの縦パスから右サイドを抜けたMFグエラがシュートしますが、GKバノヴィッチが好セーブ。27分にはポクリヴァチュが左のサミールにパスを送り、マーカーを外してシュートを放つものの、右ポストを逸れてしまいます。
Svugrinec ひるまず攻撃を仕掛けたメヂムリエは30分、DFズラクからディナモ守備陣の頭上を越える縦パスが通ると、MFピシュコールが俊足を活かしてGKと一対一に。しかしながら、GKコッホかと一対一になるもののシュートは近過ぎて止められてしまいました。
とはいえ、先制点はホームのメヂムリエ。44分、DFチェリシュチャクの右CKにMFミラルドヴィッチが中央から飛び込んでヘディングシュートを決めます。
後半はメヂムリエが引いたところをディナモが攻め込む状況に。50分にはショコタ、58分にはバラバンがシュートしましたが、メヂムリエのGKバノヴィッチがセーブ。
イヴァンコヴィッチ監督は54分にFWタディッチ、59分にMFチャゴ、69分にFWヴグリネツとカードを次々と切っていきますが、幾ら攻めても相手ゴールが割れません。80分にはヴグリネツのグラウンダーのシュートが右ポストを叩きます。しかし、敗北から救ったのはそのヴグリネツ(写真左)でした。中央のMFサミールから左サイドでボールを貰うと、角度のないところからシュートを決めて同点に追いつきます。
スコアは1-1で、ディナモは今季初の引分け。今のディナモはモドリッチ抜きでは語れないことを証明してしまいました。

Sjarni 3位ハイドゥク・スプリトは10位ザグレブとアウェーで対戦しました。ハイドゥクは現在リーディングスコアラーのFWカリニッチが怪我のために欠場。U-21代表のギリシャ戦で爆発を見せたルカビナと、ボスニア代表FWのバルトゥロヴィッチのツートップで挑みました。一方のザグレブは審判の判定に泣かされ続け、10位まで転落。ちなみに今回が初対戦となるザグレブの監督ブラジェヴィッチとハイドゥクの監督ヤルニ(写真)は、かつてはワールドカップのクロアチア代表で監督-選手という師弟関係になります。
ハイドゥクの両センターバック、トゥドールとサブリッチは代表にも名を連ねてきた選手ですが、スピードの遅さをザグレブの選手に突かれます。
Sibricic 15分、右サイドのFWロヴレクからのボールをペナルティエリアで受けたボスニア代表MFイブリチッチは、トゥドールに押さえられながら上手く反転しシュートを決め、ザグレブが先制に成功します(写真)。
その2分後、ハイドゥクのMFリュビチッチが空中のボールを競り合う際に足を挙げてイブリチッチの胸を思い切りキックしてしまったため、レッドカードで一発退場となりました。
22分にはルカビナが太股を負傷したため交替を余儀なくされ、MFルビールが投入されます。
24分、ハイドゥクはバルトロヴィッチとのワンツーで左SBフルゴヴィッチが左からシュートしますが、これはGKストイキッチがセーブ。
ハイドゥクが更に苦境に立たされたのは45分、DFラブドヴィッチのロングボールをロヴレクがトゥドールとサブリッチの両者と競り合い、そのまま抜けてGKに向かうところをトゥドールが背後からユニフォームを引っ張りレッドカード(写真右下)。これでハイドゥクは後半を9人で戦うことになりました。
Studor 53分にはバルトゥロヴィッチが膝を蹴られて負傷退場。FWヴェルパコヴスキスはベンチに座ったものの、胃の調子が良くなく出場できず。とうとうFW抜きで戦うことになります。
ただし、ザグレブも2人の数的優位を活かすことができずに無駄に時間が過ぎていきます。逆にハイドゥクが61分、途中交替のMFガブリッチがルビールの縦パスから左サイドを抜けて一対一でシュートを放ったもののGKストイキッチがセーブ。このまま試合は終わり、ザグレブが1-0でハイドゥクを下しました。

今節の好カードは4位スラヴェン・ベルーポvs.2位リエカの対決。リエカはここのところ調子が悪く、リーディングスコアラーのFWヂャロヴィッチも累積警告で欠場。柔らかいピッチでの潰しあいとなりましたが、試合が動いたのは83分、リエカのU-21代表左SBパミッチがオーバーラップしたものの右SBユリッチにボールを奪われ、ユリッチが右サイドからクロス。これにFWシェーヒッチがヘディングで決めたのが決勝点となり、1-0でスラヴェンが勝利をもぎ取っています。

全試合の結果はこちら。

Zagreb - Hajduk Split 1:0
1:0 15' Ibricic

Varteks Varazdin - Sibenik 3:0
1:0 35' Brezovec
2:0 42' Mujanovic
3:0 90' Semler

Medimurje - Dinamo Zagreb 1:1
1:0 44' Milardovic
1:1 85' Vugrinec

Cibalia Vinkovci - Inter Zapresic 2:0
1:0 65' Bagaric (PK)
2:0 84' Malcic

Slaven Belupo - Rijeka 1:0
1:0 83' Sehic

Osijek - Zadar 1:0
1:0 23' Jukic

【順位】
1位…ディナモ・ザグレブ(勝点46)、2位…リエカ(33)、3位…スラヴェン・ベルーポ(30)、4位…ハイドゥク・スプリト(27)、5位…チバリア・ヴィンコヴチ(23)、6位…ザダール(22)、7位…オシエク(21)、8位…ザグレブ(19)、9位…シベニク(17)、10位…インテル・ザプレシッチ(17)、11位…ヴァルテクス・ヴァラジディン(17)、12位…メヂムリエ(11)

【得点】
12ゴール…カリニッチ(ハイドゥク)、ヂャロヴィッチ(リエカ)
9ゴール…モドリッチ(ディナモ)、ロヴレク(ザグレブ)
8ゴール…テルケシュ(ザダール)、マンジュキッチ(ディナモ)
7ゴール…シャラノヴィッチ(メヂムリエ)、ヴィタイッチ(シベニク)、ヴコイェヴィッチ(ディナモ)

【アシスト】
7アシスト…ムムレク(ヴァルテクス)
6アシスト…マンジュキッチ(ディナモ)、ブーレ(リエカ)、ツェルナト(ハイドゥク)
5アシスト…モドリッチ(ディナモ)、ジュパン(ザダール)、シャルビーニ(リエカ)、マルチッチ(チバリア)
4アシスト…クーケッツ(インテル)、ヴルチーナ(スラヴェン)、ケーリッチ(チバリア)、ムイジャ(ザグレブ)

2008年2月2~10日まで香港で行われるトーナメント大会に、ハイドゥク・スプリトが招待を受けているそうです。クロアチア・リーグは12月8日を最後にウインターブレークに入り、2月23日に再開予定です。香港での大会には地元クラブのほか、インデペンディエンテ(アルゼンチン)と浦和レッズが参加すると報じられています。

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クロアチア、またしてもイングランドと/ワールドカップ2010年欧州予選

25日、南アフリカのダーバンで、FIFAワールドカップ2010年大会の地区予選抽選会が行われました。
今大会で初めて第一シードとなったクロアチアはグループ6で、またしてイングランドとアンドラ、そして旧ソ連の三ヶ国ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンと同グループになりました。
イングランドはユーロ2008年予選に引き続いて二度目、アンドラはユーロ2004予選・ユーロ2008予選に引き続いて三度目。ウクライナはユーロ1996予選と1998年ワールドカップのプレーオフで対戦し、ベラルーシとカザフスタンは親善試合を含めても初めての対戦になります。

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2007年11月25日 (日)

クラスニッチ、ブンデス復帰/モドリッチ、チェルシー移籍決定?

ヴェルダー・ブレーメン所属の元代表FWイヴァン・クラスニッチ(27・写真)が、腎臓移植を乗り越えて342日ぶりにブンデス・リーガに出場しました。24日、エネルギー・コットブス戦に先発出場したクラスニッチは64分まで出場。得点に絡まなかったとはいえ、4本のシュートを放っており、試合は2-0でヴェルダーが勝利しています。
Klasnic 腎臓疾患が発見されたクラスニッチは今年1月下旬、母親の腎臓を移植したものの拒否反応を示したために失敗。しかし、3月中旬に弟の腎臓を移植して手術は成功。その後は長いリハビリ生活を送っていました。9月に医療チームからトレーニングの参加を認められると、10月25日にヴェルダーのセカンドチームの練習試合で初めて試合に出場。30日にはセカンドチームでドイツカップのザンクト・パウリ戦に出場していました。
試合後、クラスニッチは
「まるで生まれ変わったかのような最高の気分だ。今の気分を言葉で表現しようにも、何を言っても陳腐になるだけだろう。ほぼ一年前が僕にとっての最後の試合だった。この試合は僕にとって決定的なサッカー界への帰還だ。幸運に終わりはないよ。
このために僕は骨身を惜しまない努力をしてきた。サッカー界に戻れるものだと妥協なしに信じてきた。今はそれに成功したと言える。僕がサッカーを続けるためのモチベーションを内に秘めていることをシャーフ監督は知っていた。信じてくれた皆に感謝したい。世界でもっとも幸せな人間だと思っている。再びプロサッカー選手になったし、楽観的に将来を考える権利が自分にはあると見ているよ。
もちろん、クロアチア代表が欧州選手権予選を圧倒的に戦ったことは嬉しく思っている。この先何ヶ月間の調子にはよるだろうが、代表メンバーに入ることを期待しているよ。」
とコメントしています。

Modric3_3 25日、国内のスポーツ紙「スポルツケ・ノヴォスティ」が確実な筋からの情報として、ディナモ・ザグレブはルカ・モドリッチ(22・写真)の移籍に関してチェルシーと既に2008年1月の移籍に事前合意していると書きました。移籍金は2200万ユーロ(約35億円)とされています。これは今年のDFヴェドラン・チョルルカのマンチェスター・シティ移籍(1300万ユーロ)を越えるクロアチア史上最高の移籍金とされます。
土曜日の国内リーグ、メヂムリエ戦では大事を取って客席から観戦したモドリッチは、"チェルシーでプレーしたいか?"との質問に
「その質問は何なのだい? もちろん、チェルシーでプレーしてみたいよ。あのようなビッグクラブで誰がプレーしたくないというのかね。世界的なクラブだけに、あのユニフォームが着られるのならば素晴らしいね。」
と答えています。ちなみにディナモは23日、モドリッチに関する移籍交渉は2008年1月まで凍結すると述べており、事前合意したことはまだ認めていません。ただ、合意はしなかったとはいえマミッチ副会長はアブラモヴィッチ会長と接触したことを認めていますし、グラント監督はマケドニア戦とイングランド戦を視察、またアシスタントコーチのテン・カーテはアヤックスの監督として、実際にモドリッチと対戦しています。

それと関連するかのように、ディナモは元代表のMF/DFイゴール・ビシュツァン(29・写真)とこの冬に契約する可能性が高くなってきました。Biscanディナモから2001年にリバプールに移籍し、2005年にパナシナイコスに移籍した彼ですが、最後の契約年といった昨シーズンが終わると同時に理由を告げないまま、サッカー界から身を引いてしまいました。
既にディナモのコンディショニングコーチのもとスポーツジムで体力作りをしているそうで、来週辺りから契約の話合いが持たれるようです。ディナモにはユース時代からの親友であるFWトミスラフ・ショコタとMF/DFミハエル・ミキッチが戻ってきており、ビシュツァンが戻る可能性は低くないと見られています。
またディナモは代表に選出されているMFオグニェン・ヴコイェヴィッチ(24)と2013年までの契約延長を結び、更にFW/MFマリオ・マンジュキッチとも2012年までの契約延長を結ぶ予定です。

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2007年11月22日 (木)

クロアチア、ウェンブリーでイングランドに勝利/欧州選手権予選

Sproslava 21日、88,091人の観客が集まったサッカーの聖地「ウェンブリー」で、既に欧州選手権本大会の出場を決めているクロアチアがこの試合に最後の望みを託したイングランドを3-2と撃破。17日のマケドニア戦で初めて土がついたとはいえ、歴史的な勝利で予選を締めくくりました。

クロアチア代表は20日にチャーター機でロンドン入りしたわけですが、ガトウィック空港で事件が起こりました。
先にロンドン入りして出迎え役を務めたクロアチア・サッカー協会のスレブリッチ事務局長が空港内で新聞やペンなどを購入しようとした際、次第に旅行者がゲートから出てくるのを知り、支払いを忘れて代表チームが到着したかを確認するために店外へとつい出てしまいました。彼は店の人に万引きと判断されて通報。直ぐに警察に連行されて拘束された挙句、サン紙に世界的に泥棒扱いで報道されてしまいました。
また昨年10月のザグレブでのクロアチアvs.イングランド戦では、イングランド代表がザグレブ空港に到着する際は特別待遇を受け、パスポートコントロールはなく、チャーター機が停まる滑走路にバスをつけ、特別警護でホテルに移動したというのに、クロアチア代表は一般乗客と全く同じ扱いをされ、やたらと時間をロスしてしまいました。このようなイングランド人の無礼な扱いに選手たちは怒りを覚えたことで、試合へのモチベーションに繋がることになります(ただでさえ、イングランド人は傲慢だと欧州で嫌われる存在なわけですが)。

クロアチア代表は、マケドニア戦後に発熱したFWペトリッチに代わり、オリッチが先発起用。ペトリッチはベンチスタートになり、以下はベストメンバーを組みました。
GKプレティコサ-(右から)DFチョルルカ、シミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFスルナ、コヴァチ兄、モドリッチ、クラニチャール-FWオリッチ、エドゥアルド

一方のイングランド代表は、FWルーニー、FWヘスキー、FWオーウェン、DFテリーが怪我。DFファーデナンドは累積警告。また昨年のクロアチア戦で空振りオウンゴールを生んだGKロビンソンの代わりにカーソンが起用されました。一年前と同じスタメンはFWクラウチとMFランパードのみであり、クロアチアが昨年と11人中10人同じスタメンであることを比較すれば、いかにマクラーレン監督が迷走したかが分かります。今回は以下のメンバー(4-1-4-1)で挑んできました。
GKカーソン-DFリチャーズ、キャンベル、レスコット、ブリッジ-MFバリー-ライト・フィリップス、ジェラード、ランパード、コール-FWクラウチ

ロンドンはここ最近の雨で、聖地とはいえピッチコンデションは良くありませんでした。それでもマケドニア戦のスコピエのピッチと比べれば雲泥の差。重馬場で足は取られるとはいえ、パスが繋がるだけマシでした。
Skranjcarmodric ゲームの序盤は早い先制点を望むイングランドが押し込みます。右から俊足を活かしたライト・フィリップスがかき回し、長身のクラウチがワントップのポスト役を務めたのですが、クロアチアはこの二人のケアに最初は手こずります。6分にジェラードからアーリークロスが入り、コールがニアでヘディングシュートを試みるもののGKプレティコサの正面を突きました。
守勢に回るクロアチアでしたが、先制点は意外な形で生まれます。8分、スルナからの横パスをもらったクラニチャールは中央へとスライドし、シュートコースがあると見るや25mのミドルシュートを放ちます。回転が少ないボールはGKカーソンの手前で落ちたこともあってキャッチミス。手を弾いてネットにボールが吸い込まれます。マクラーレン監督にとっては、大舞台の経験が少ないカーソンを起用したことが裏目に出てしまいました。
負けては本大会出場の望みが絶たれるイングランドは猛攻を仕掛けます。10分、コールが左サイドのドリブルで何人も引き連れながら、ペナルティ中央のクラウチへパス。クラウチは右でフリーのライト・フィリップスにボールを繋げ、近距離から右足でシュート。これにはGKプレティコサが素早く反応し、ゴールを防ぎます。
13分には中央のライト・フィリップスから右サイドをオーバーラップするリチャーズへ。折り返しにクラウチが滑り込んで合わせようとしますが、これはシミッチがクリアします。
その一分後、またしてあっさりとクロアチアに得点が転がります。クラウチがポストで落としたボールをコヴァチ兄が前線へと送ると、エドゥアルドがオリッチとヘディングを使ってのワンツーに成功。エドゥアルドが右サイドを上がり、相手3人を引き付けたところで最後はキャンベルの股下を通すスルーパス。ブリッジが残ったためにオフサイドにはならず、最後はオリッチが冷静にGKカーソンをかわしてシュート。クロアチアが2-0とリードを伸ばします。
それからはイングランドがボールを持つとはいえ、クラウチ任せのクロス攻撃に対する処法を既にわきまえたクロアチアがゲームを落ち着かせていきます。26分にはモドリッチから右サイドでボールを受けたエドゥアルドがクロスボールを入れると、ファーサイドにクラニチャールが頭から滑り込みますが、ヘディングシュートは左ポストを逸れてしまいました。
イングランドは32分、33分とセットプレーから好機を見出そうとしますが、GKプレティコサがいずれもパンチングで逃れます。
クロアチアも42分、早いパス交換のあとモドリッチが右サイドからミドルシュート。しかし、ボールはGKカーソンの正面を突いてしまい、弾かれてしまいます。
前半を終わって2-0。ボール支配率はイングランドが上回ったものの(54%)、シュート数ではクロアチアが5本(イングランド3本)と上回りました。

後半に入って直ぐにマクラーレン監督はライト・フィリップスに代えてMFベッカム、バリーに代えてFWデフォーを入れてツートップの形をとり、ベッカムの正確なクロスからチャンスを伺おうとします。イングランドは前方へのプレッシャーを高めた反面、背後にカウンターのスペースを作ることになりました。53分にはコヴァチ兄からスルーパスが通り、オフサイドラインを抜けたエドゥアルドがゴールに一直線で向かいますが、レスコットが追いついてクリアします。
Sgerrard 単純なクロス攻撃では埒が開かないイングランドでしたが、56分、コールの何でもない放り込みにGKプレティコサがキャッチしたものの、ボールに向かったデフォーをシムニッチがユニフォームを引っ張り、デフォーが倒れたことでPKがプレゼントされます。普通ならば審判がそうそう取らないPK判定ではありましたが、これをランパードが左下にきっちりと決めて点差を縮めます。
しかし、クロアチアは58分、中央のモドリッチから右サイドのオリッチにタイミング良くスルーパスが出され、オリッチと併走してクリアを試みたブリッジの足にボールが当たり、GKカーソンの伸ばした手を越えてボールはイングランド・ゴールの方向へ。しかしながら、ボールはクロスバー左に弾かれてしまいます。その直後、スルナの鋭い左CKからのボールにオリッチがヘディングでピタリと合わせたものの、GKカーソンの正面のため弾かれてしまいます。更に63分、スルナの縦パスをブリッジがカットしたものの、それをオリッチが奪い返してGKと一対一のシュート。しかし、これもカーソンにキャッチされてしまいました。
ビッグチャンスを立て続けに逃したツケは65分に訪れます。リチャーズから右サイドでボールをもらったベッカムが、ノートップからゴール中央へと走り込むクラウチに完璧な軌道のクロスボールを送ると、クラウチは胸トラップしたまま長い右足を伸ばしてシュートを叩き込み、イングランドがとうとう同点に追いつきます。
ドラマチックな展開にウェンブリーはお祭り騒ぎになりますが、ここから新たなドラマが待っていました。ビリッチ監督は69分、エドゥアルドに代えてペトリッチをピッチに送り、75分にはクラニチャールに代えて俊足のサイドアタッカー、プラニッチを投入します。攻撃の手を緩めなかったビリッチ采配がずばりと当たります。77分、プラニッチが左サイドからペトリッチに横パスを通すと、ペトリッチはペナルティエリアの外から左足を一閃。シュートはGKカーソンの手を弾いて右ネットに突き刺さり、3-2と勝ち越します。
Sproslava イングランドは86分、途中交替で入ったFWベントがシミッチに寄せられながらもシュートを放ちますが、ボールは枠をそれて万事休す。クロアチアもチャンスとあらば攻め続け、ロスタイムには同じく途中交替のラキティッチが抜け出しますが、シュートを打ち切れず。3分のロスタイムを終えてタイムアップ。落ち込むイングランドの選手たちとは対照的に、クロアチアの選手たちとコーチ陣は熱いサポートを繰り返したサポーターの元に駆けつけ、歓喜の歌を歌い続けました。
グループリーグ3位だったロシアがアウェーのアンドラ戦をシチェフのゴールで辛くも1-0と勝利したことで、同時にイングランドが予選敗退となりました。

(以上の写真はSport-netより)

試合後、記者会見でビリッチ監督は、これまでクロアチアをないがしろにした報道を続けたイングランドの報道陣に以下のように言い放ちました。
Sbilic 「我々はハイレベルなプレー、チームワーク、個々の能力とキャラクターを素晴らしい形で見せつけた。このように追いつかれた後で再び突き放すのは非常に難しいことだよ。勝利はまったくもって我々に値するものだ。イングランド・サッカーに何か特別なことが起こったとは思わない。これは最も困難なグループだったし、3チームが通過すべきものだった。しかし、ピッチ上でのプレーではクロアチアがグループ最高のチームであったのだ、と君たちは自分たちで納得しなければならないのだよ。
個人的にはイングランドのサッカーが好きだし、優れた選手たちが揃っている。しかし、小国にも優秀な選手はたくさんいるのだ。彼らのことを貴方たちは知らないだろうが、彼らだって素晴らしいサッカーができるのだ。目を覚ましてくれ。戦術のせいで君たちは負けたのではない。単に我々の方が優れたチームだったのだ。チームや選手たちは素晴らしいが、私のチームのの方がもっと優れているのだよ。メディアの君たちが"クロアチアの選手は誰一人、イングランド代表ではプレーできないだろう"と書いたと聞いた。それが我々にとって更にモチベーションとなったのだ。クラウチは素晴らしい選手だが、彼にはスピードが足りない。私たちはイングランドの二人のセンターバックにボールを持たせることを許したが、この状況下でワントップでプレーしてくるのはこちらにとってずっと楽だったのだよ。
ヒディンク監督はきっと私を祝福してくれるだろう。でも、スパルタク・モスクワの会長からはメルセデスを送ってもらわなくていいよ。車を持っているのだから。我々はロシアのためにプレーしたわけではなく、イングランドを困らせるためにプレーしたわけでもない。我々はクロアチア代表とクロアチア国民のため、スタジアムにやってきた6~7000人のサポーターのためにプレーしたのだ。それを君たちは知らねばならない。」

ワールドカップを含めたら14年ぶりに大きな大会出場を逃した失意のマクラーレン監督は
「進退問題は聞かないでくれ。そのテーマについて話し合いたくはない。責任を感じているかって? もちろん。私は12試合が終わってから判断してくれ、と言ってきたはずだ。今のポジションが我々の現実だ。順位表は嘘をつくことがない。我々が本大会出場するチームとして相応ではなかったというのが唯一の事実だ。全てが手中にあったのに、それを活かすことができなかった。しかし、辞表を出すつもりはない。」
とコメント。ビリッチ監督の50倍近い報酬を貰うマクラーレンでありましたが、2年以上の契約を残しながらアシスタントのテリー・ヴェナブルズと共に解雇されることが決まっています。

選手たちのコメントを集めてみます。

MFニコ・コヴァチ (キャプテン)
「これはファンタスティックな雰囲気の中での歴史的な勝利だ。チームメイトを祝福したいし、いつでも力を与えてくれる素晴らしいサポーターにも感謝している。ウェンブリーで3点を奪うなんて、今夜はまるでおとぎ話のようだ。イングランド人は傲慢だったし、僕たちを過小評価していた。けれども、贈り物だったPKの後でさえも、僕たちはどっちが良いチームが示すことができたのだよ。」

DFヴェドラン・チョルルカ
「なぜだかは分からないが、イングランド人は傲慢で自信過剰だった。僕たちはグループリーグ1位のチームであり、ザグレブでは彼らを圧倒し、一年間は最高のサッカーをやってきたというのに。彼らはもっと敬意を払わなければならなかった。空港で起きた全てのこと、とりわけスレブリッチ事務局長の事件が新たなモチベーションとなった。マンチェスター・シティでプレーしているけど、イングランドの世論は恐怖ではないよ。クラブに戻ったら誰もが僕を祝福してくれると期待しているよ。」

DFヨシップ・シムニッチ
「イングランド人は本当に傲慢なやり方でクロアチアを出迎えた。この試合の後では、もう僕たちのことをあんな風に考えることがないと願っているよ。(PKの場面では)デフォーに触っただけで、あれがPKになるのだったら、試合ではPKが少なくとも10回は発生する。しかし、どうでもいいことだ。重要なのは、イングランド人にサッカーのレッスンと振舞い方のレッスンをやらせたことだ。」

GKスティペ・プレティコサ
「メルセデスの話題はほっといてくれ(彼はスパルタク・モスクワ所属)。この勝利と経験を物質的な尺度で図ることはできないのだから。まだ僕には全てが夢のようだ。イングランドは歴史上でこれほど辛い敗北を喫したことはなかっただろう。それは小さなクロアチア、彼らの目には小さな国が成し遂げたのだよ。僕たちが現代的なサッカーをやることを彼らに見せつけたんだ。」

FWイヴィツァ・オリッチ
「チームメイト全員と同様、僕も恐るべきモチベーションを持って挑んだ。イングランドの新聞を読めば、試合前のテキストには僕たちの写真が一枚も添えられなかっただから。彼らにとってみれば、僕たちは存在しないかのようだった。でも今夜からはまったく違うだろうよ。
試合後は40分で110通もの携帯メールが届き、その半分以上がロシアの友人からだ(一年前までCSKAモスクワでプレー)。しかし、僕たちはまず何より自分たちのため、クロアチアの誇りのために勝利したんだ。スパルタク会長から連絡があったんだけど、金額の部分が空欄の小切手を渡すから、好きな額を書いていいと言っていたね。」

FWムラデン・ペトリッチ
「僕自身は、イングランドが最終的に欧州選手権に出場できないことを残念に思う数少ない一人だ。イングランド人とサッカーとの関係が好きなのだから。しかし今夜の彼らには、僕たちの素晴らしいプレーを埋め合わせるほどの力もなければ運もなかった。率直に言えば、2-2になった後はチャンスはあったとはいえ、僕たちが勝利できるとは信じていなかったんだ。今日のゴールはもちろんキャリアで最愛かつ最重要なゴールだよ。」

クロアチアはグループリーグ1位で通過しただけでなく、抽選会(12月2日)で使用される欧州ランクを上げました。スイス&オーストリアの開催国、前回優勝国のギリシャ、ランク1位のオランダがポット1となり、強国を抑えてランク2位のクロアチアはそれに続くポット2に入ります。またワールドカップ予選の組み合わせでも第1シードに上がる可能性が大で、そういう意味合いでもイングランド戦は偉大な勝利でありました。

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2007年11月21日 (水)

イングランドvs.クロアチア戦・事前情報

Simgp6917 いよいよ今夜、欧州選手権予選の最終試合となるイングランドvs.クロアチアが、サッカーの聖地「ウェンブリー」で行われます(現地時間20時キックオフ、日本時間22日5時)。

FWペトリッチがマケドニア戦後に発熱してしまい、チームには同行したものの出場は微妙。代わりにオリッチが先発し、スタメンは以下となる予定です。
GKプレティコサ-(右から)DFチョルルカ、シミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFスルナ、コヴァチ兄、モドリッチ、クラニチャール-FWオリッチ、エドゥアルド
スラヴェン・ビリッチ監督は試合前日、
「最初から分かり切った我々の目標は本大会出場であった。そのプレッシャーから逃げはしなかったし、立派な形で目標を実現したんだよ。選手たち、スタッフ、協会幹部、メディアには感謝しているし、そしてサポーターに感謝している。いつも我々を信じてサポータとてくれるサポーターがいなくては何もできなかった。この本当に素晴らしいストーリーを、最後の試合も成功という形で終わらせたい。このビッグマッチに勝利するため、持てる力の全てを出すつもりだ。イングランドが有利とはいえ、私が話していることが弾を詰めていない銃で打つようなことではないと断言しよう。」
とコメントしています。既に本大会出場を決めているとはいえ、イングランドに負けた場合は本大会でのシードのグループが3番目に落ちてしまいます。

一方のイングランドは、ロシアがイスラエルで敗北したことでいきなり本大会出場の道が見えてきました。引分け以上で本大会出場となるわけですが、FWルーニー、FWヘスキー、DFテリーが怪我で欠場の上、16日のオーストリアとの親善試合でFWオーウェンも怪我。DFファーデナンドは累積警告と厳しい状況です。
Robinsonザグレブの試合でクリアを空振りして世紀のオウンゴールを生んだGKロビンソン(写真)の代わりにカーソンの起用が濃厚。また怪我からMFハーグリーブスが復帰予定です。スティーブ・マクラーレン監督は引分けに持ち込むような守備的な戦術を敷いてくると考えられ、以下のメンバー(4-1-4-1)で挑むと予想されています。
GKカーソン-DFリチャーズ、キャンベル、レスコット、ブリッジ-MFハーグリーブス-ライト・フィリップス(ベッカム)、ジェラード、ランパード、コール-FWクラウチ

ちなみに過去の対戦成績はクロアチアの1勝1分2敗。ウェンブリーでは1996年4月に親善試合で対戦しており、結果は0-0でありました。その時にはビリッチも出場しています。

またイングランドではモドリッチ獲得レースが加熱しています。これまではアーセナルとバイエルンが濃厚とされていましたが、ここに来てチェルシーが接近。マケドニア戦にはグラント監督が訪れ、既に先週にはディナモの副会長ズドラヴコ・マミッチがアブラモヴィッチ所有のプライベート機でロンドンに渡り、彼の別荘で話合いを持ちました。まず提示されたのは彼の事前交渉権として350万ポンド、と言われていわれていますが、これにマミッチは拒否したとのこと。ちなみに移籍金は3000万ポンド(約67億円)まで跳ね上がっていると報じられています。

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2007年11月20日 (火)

クロアチア、マケドニアに敗れるもユーロ本大会出場決定

11月17日、欧州選手権予選「マケドニアvs.クロアチア」戦がスコピエで行われ、泥んこのピッチの中、マケドニアに2点を奪われ、予選で初めての敗北。しかしながら、グループリーグ3位のロシアがアウェーのイスラエル戦に1-2と負けたことでクロアチアを勝点で追い越すことができず、クロアチアが最終節のイングランド戦を残して欧州選手権本大会出場を決めました。クロアチアは独立以降、3度目となる本大会出場となります。

Snaumoski スコピエは雪に続いて雨が降り、また会場となったグラツキ・スタディオンは3日前にヴァルダル・スコピエvs.パルチザン・ベオグラードのベテラン選手によるエキジビジョンマッチ(ヴァルダルのユーゴリーグ優勝20周年記念)が行われたことで最悪のピッチコンデション。試合開始1時間前になっても試合が開始されるかはっきりせず、審判団と両チームの監督らとの話合いが行われ、クロアチアのビリッチ監督は試合開催に反対、マケドニアのカタネッツ監督は試合開催に賛成。しかし、UEFAの圧力もあって最終的に試合開催が決定しました。

クロアチアはこの試合で引分け以上ならば、ロシアやイングランドの結果に関係なく本大会出場となります。ビリッチ監督は9月のエストニア戦以来、二度目となるベストメンバーを組むことができました。スタメン(4-4-2)は以下になります。
GKプレティコサ-(右から)DFチョルルカ、シミッチ、コヴァチ弟、シムニッチ-MFスルナ、コヴァチ兄、モドリッチ、クラニチャール-FWペトリッチ、エドゥアルド

一方のマケドニアは、エースのパンデフが負傷のため欠場。代わりにトップ下に入るはずのトラヤノフまで合宿中に負傷してしまったため、以下のメンバーで構成してきました(3-5-2)。
GKミロシェフスキ-DFセドロスキ、ミトレスキ、ノヴェスキ-MFラザレフスキ、シュムリコスキ、グロズダノスキ、ポポフ-タセフスキ-FWマズノフ、ナウモスキ

時間が経過すればするほど田んぼのように化していくピッチでは、パスとコンビネーションを重視したクロアチアのサッカーを表現できません。それでもいつものスタイルで通そうとするクロアチアに対し、中盤により枚数を掛け、アグレッシブにボールを奪いに来るマケドニアに押されてしまいます。ただマケドニアもこの状況下ではフィニッシュに持ち込めず、両イレブンが泥にまみれての肉弾戦となり、サッカーとは程遠いスポーツが行われているかのようでした。
前半の最初で最初のゴールチャンスは33分、右からマズノフから左足でクロスボールが入った瞬間、ゴール前にナウモスキがDFのマークから抜けましたが、頭一つ届かずにボールはGKプレティコサに。プレティコサは反応できずにキャッチミスをしますが、ナウモスキが詰め寄る前に掴み直します。
クロアチアは42分、一週間前に脳震盪を起こしたペトリッチを下げ、機動力に優れたFWマンジュキッチをピッチに投入。マンジュキッチにとっては代表デビュー戦となりました。

両チームにシュートが一本もないままハーフタイムになったのですが、1時間早くキックオフしていたイスラエルvs.ロシア戦が2-1で終わり、クロアチアのコーチ陣や選手たちは本大会出場が決定することを知ります。試合後にビリッチ監督は
「結果を知って、気分がかなり楽になった。試合に勝とうと話し合ったものの、あの試合結果が私たちに良いものと悪いものをもたらした。オフェンスではよりリラックスして入れたものの、ディフェンスにおけるリラックスは良いことではなく、集中が切れてミスに繋がってしまった。」
と語ったように、後半のクロアチアはゲームを優勢に進めながらも致命的な失点をしてしまいます。
とはいえ、クロアチアのビッグチャンスは53分にありました。スルナからの縦ロングパスがエドゥアルドに通ると、巧みなトラップとワンタッチからGKミロシェフスキをかわし、左に回ってシュートを放ちますが、ゴール前にカバーいたミトレスキがクリアしてしまいます。
ビリッチ監督はその1分後にエドゥアルドをイングランド戦に温存するためベンチへと下げ、足首の負傷から癒えたオリッチを投入。これで先発したツートップが入れ替わることになりました。
マケドニアは57分、右サイドのラザレフスキからエリア内左のマウモスキにロングパスを通すと、中央へ走り込んだマズノフにヘディングで折り返し。しかしながら、マズノフのシュートはシミッチに止められます。
マケドニアの攻撃が実を結んだのは70分、左サイドでマズノフがボールを受けると、チョルルカとスルナの寄せを避けてからゴール前のタセフスキに一度預け、フリーのスペースへ。ゴール正面でボールを貰い返すと、そのままゴール右下隅に狙い済ましたシュートを放ち、マケドニアが先制に成功します。
クロアチアも72分、オリッチが左スペース前方に蹴り込み、俊足を活かして自らボールに追いつくと、そのままフェイントでDFをかわしてペナルティエリアに侵入。しかし、死角から放ったシュートはサイドネットに収まってしまいます。
決定打となったのは79分、タセフスキがクリアボールを拾ってグラウンダーのミドルシュートを放つと、ボールはゴール前のナウモスキの足元に。ナウモスキが左に蹴り込んで、2-0とリードを広げます。
クロアチアの選手たちも必死に戦ったとはいえ、リードを縮めることすらできず。本大会出場が決まったとはいえ、苦い敗北を喫してしまいました。
(写真はSport-netより)

A代表の監督に就任して以来、15試合目にして初めて敗北を経験したビリッチ監督(写真)は試合後の記者会見にて
Sbilic_2 「条件はサッカーには本当に適さないものだった。このようなピッチでプレーするのは不可能だ。マケドニアがよく適応したとは言いたくない。私たちがゲームを支配した時間帯に、相手の2本のシュートが2点に繋がったのだから。この90分間が私たちの運命を決めるというのに、これまで一年半辛抱強く、かつ素晴らしく築いてきたものが全て壊されるところだったのだよ! 
このようなピッチなのにマケドニアは試合をやろうと主張し、審判もプレーすることを決め、私はそれを受け入れた。選手たちは自分の持てる全てを出してくれたし、英雄らしく戦ってくれた。私は唯一、よくやったと褒めるだけだ。イスラエルには本当に感謝しているよ。」
とコメント。またクロアチアテレビ(HRT)のインタビューでは
「私たちはロンドンでのイングランド戦で全力を出すつもりだ。イスラエルの誠実さを私が褒めるのならば、ロンドンで我々が全力を戦わないとしたら愚かな存在に過ぎない。今夜のお祝いはちょっとだけだ。水曜日にイングランドと素晴らしい戦いをし、クロアチア国民が我々のことを誇りに思うよう全てをやるよ。」
と述べています。
幸い、スコピエでの試合でクロアチアに怪我人はなく、21日のウェンブリーの決戦では手を抜くことなくイングランドを叩きに行くことになります(宗教的・歴史的にイングランドはクロアチアにとって好ましくない国であることもありますが……)。ちなみにイングランドは本大会出場するためには、クロアチアに引分けか勝利することが必要です。
クロアチア代表はイングランド戦に合わせてアウェーのナイキのユニフォームも新調。国内におけるイングランド戦の注目度は高く、クロアチアからは実に15台のチャーター便が飛び、6000人近いサポーターが集結することになります。
クロアチアは1996年イングランド大会、2004年ポルトガル大会に次いで三度目の本大会出場。ワールドカップを含めれば、独立以後に予選を戦った7大会中、実に6大会目の本大会出場になります。

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クロアチアU-21代表は、U-21欧州選手権予選で鍵を握るアウェーのギリシャ戦を17日、アテネのパニオニオス・スタジアムを戦いました。
怪我人続出とマンジュキッチのA代表召集のため(ちなみにA代表のチョルルカもラキティッチも出場可能)、ラディッチ監督は理想のスタメンを築くことから程遠く、初召集のMFクレショ・リュビチッチ(フランクフルト所属)すら先発させたほど。スタメン(4-2-3-1)は以下のようになりました。
GKヴァルギッチ-DFヴィーダ、バコヴィッチ、ロヴレン、パミッチ-MFディニャール、ヤヤロ-タディッチ、K.リュビチッチ、トマソフ-ブシッチ
逆境に強いのがクロアチアのスポーツ選手の特徴でもあったりするのですが、初めて一緒にプレーするイレブンはモチベーションを高く持って試合に入ります。前半はU-21現代表において過去最高の出来だったほど。クロアチアは5分、タディッチがサイドを破り、クロスボールにリュビチッチが合わせ、早くも先制点を奪います。
その後も完全に主導権を握りますが、計4度に渡って連続して決定機を逃します。すると28分、GKヴァルギッチとDFロヴレンがお見合いしてボールを奪われ、ペテロポウロスに同点ゴールを奪われてしまいます。これがギリシャの最初のシュートでありました。しかし、43分、パミッチのクロスにブシッチが足で合わせ、クロアチアが2-1と勝ち越しに成功します。
Srukavina とはいえ、後半直ぐにギリシャはCKからファーポストのテリポステリスにヘディングシュートを決められると、66分にはカウンターからディモウトソスに追加点を奪われ、2-3と再逆転。
これまではミスからズルズルと失点を許す傾向にあった現U-21代表でしたが、救世主はハイドゥクでもベンチに甘んじるFWルカビナ(写真)でした。残り15分でピッチに送られると、82分にM.リュビチッチのパスを貰い、斜めの角度から同点ゴール。更にその2分後、ペナルティエリアで4人をドリブルでかわして逆転のゴール。クロアチアは4-3で貴重な勝利を収めました。
ルカビナは乗り換えのウィーン空港でシューズを置き忘れ、DFイプシャからシューズを借りたのですが、「常にこのシューズを履いて試合に出なくちゃいけないね」と試合後はご機嫌でした。
これでクロアチアは1試合多いとはいえ、3位ギリシャと勝点5差で2位につけ、プレーオフ進出に大きな望みを繋ぎました。

【順位】
1位…イタリア(勝点16/6試合)、2位…クロアチア(勝点15/7試合)、3位…ギリシャ(勝点10/6試合)、4位…アルバニア(勝点10/6試合)、5位…フェロー諸島(勝点3/7試合)、6位…アゼルバイジャン(勝点1/6試合)

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2007年11月16日 (金)

NE DAJ SE SVABO!

こちらの今朝、「オシムが急性脳梗塞で倒れた」というニュースを耳にし、今でも信じられずにいます。今年初め、本制作もあって集中的にオシムと会ってきたわけですが、熱くサッカーを語る姿が今でも忘れられません。
Sosim サッカーと共に生き、サッカーのために生きてきたオシムは、日本サッカーに自らを捧げながらも、故郷サラエボを大事にしてきました。サラエボで会った時のオシムは「これを機に会いたがる人が多くてね」と忙しそうにしつつも、嬉しそうな眼をしていたものです。あれだけのサッカー人間ですから、日本代表で遣り残した仕事があるのは不本意でしょうが、せめて命だけは取り留めて、最後には愛するサラエボに戻って欲しいと願っています。

2005年9月のクロアチアのスポーツ紙"Sportske Novosti"で、彼が懇意にしているジャーナリスト、アントン・サモヴォイスカ氏が「故郷に戻ることをしばしば考えたりするか?」と質問した際、彼は「ああ、私の戻る家がどこか判ったならばね....」と答えました。これに関して、今年初め、オシム本人に問いただしたところ、少し黙り込んだ後で、真のプロフェッショナルらしく、このように語ってくれました。

『故郷に戻るのを待っている間も人生は過ぎていく。私は人生の大部分を「外」で生きてきた。「外」とはどんな意味か? 「世界」に住んでいるということだよ。「世界」---私が自惚れているとか、自分を世界的人間と見なしている、とは解釈しないでくれ。そうじゃない。人生がそうさせるものだ。

あちこちに住むと、最後には「何なのか?」と自問するものだ。自分に最も固く結びついたもの。それは、私が生まれ育ったサラエボの一地区である。それに次ぐ残りが、私が働いた場所であり、プレーした場所だ。いつもそうして私は人生を思い巡らせている。

概して人間は、窮屈な事柄や手に負えない事柄に繋がれることなく、動き回り、人生を生き、それから多くを知るべき生き物だ。故郷はどこか、ルーツはどこかを知るのは素晴らしいことである。一方で、いわゆるコスモポリタンであることも素晴らしい。だから「いつ祖国に戻るのか?」との質問を受けた瞬間、何を考えているか答えることが難しかった。唯一言えるとしたら、戻るかもしれないし、私が生まれた場所で死ぬかもしれない、ということだ。しかし、サラエボで死ぬことと、人生を生きることは同じではないのだよ。

人生で何が起こるかなんて誰が知るものか。とりわけサッカー界で、ここやそこ、もしくは違う土地にどれぐらい留まるか、なんて誰が予想できるのかね。全ては状況次第だ。何をするのか、どこへ行くのかを選ぶ機会がいつでもあるわけではない。時には様々な環境が人々を動かし、思ってもいなかった場所に生きさせられることがある。それがより良い可能性もあれば、より悪い可能性もあるのだよ。マジョルカ島で余生を過ごすことを選べるような人々は少しだけだ。しかし、そこに住んだとしても、それも退屈なものだ。』

NE DAJ SE SVABO! (諦めるな、シュワーボ!)

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2007年11月15日 (木)

クロアチア・リーグ第16節

11月10日・11日にクロアチア・リーグ第16節が行われました。

首位ディナモ・ザグレブはホームでオシエクと対戦。この日はスタンドが無料開放されたこともあり、1万人の観客がマクシミール・スタディオンに集まりました。
3日前のバーゼル戦で心身ともに疲労しているとはいえ、イヴァンコヴィッチ監督は同じスターティングメンバーでゲームをスタート。プレーテンポがバーゼル戦とは遅いとはいえ、国内水準では十分な戦いをしました。
Svukojevic 24分、MFモドリッチのFKがクリアされたボールをエリア外のMFヴコイェヴィッチ(写真)が拾い、エリア内へと持ち込んで左足でシュートを放ちますが、ボールは右ポストをわずかに逸れます。
とはいえ、33分、MFグエラが倒されて得たゴール正面での直接FKを、FWショコタがグラウンダーで狙ったところ、ボールはオシエクの選手の壁で止まってヴコイェヴィッチの足元に。A代表のメンバーに定着しつつあるヴコイェヴィッチが右足で決めてディナモが先制します。
この1点で勝ち切れてしまうのが今季のディナモ。その後はチャンスが生まれず、58分にモドリッチがベンチに下がったのちはチャンスを演出できません。オシエクは81分、FWフルンチェヴィッチがエリア内でフリーでシュートを狙ったものの、ボールは枠を外れてしまいます。
ルーティンワークでディナモが勝利を飾り、第9節にヴァルテクスに1敗した以外は15試合全勝しています。

3位ハイドゥク・スプリトは最下位メヂュムリエとホームのポリュウド・スタディオンで対戦しました。
Scernat ゲーム序盤はメヂュムリエが優勢だったものの、17分、クロアチアの水にも慣れ、本領を発揮しつつある元ルーマニア代表MFチェルナト(写真)がFWカリニッチとのワンツーを決め、最後はGKとの一対一を冷静に決め、ハイドゥクが先制します。
メヂムリエも28分、MFダルモビルがミドルシュートを試みると、ボールはDFトゥドールの足に当たって弾道が変わり、ネットへと突き刺さって同点に追いつきます。
しかし、ハイドゥクは40分、チェルナトが3人を引きつけてからスルーパスをFWヴェルパコヴスキスに通すと、自らシュートを打てる立場ながら左にいるカリニッチにアシストし、カリニッチがしっかりと決めて2-1と勝ち越します。
後半50分にはチェルナトの左FKにヴァルパコヴスキスが滑り込みながらヘディングシュートを決め、3-1とリードを広げます。
昨季までのハイドゥクならばこのまま勝てたのですが、シーズン前の体力作りに失敗したせいか、ゲーム後半にあっさりと失点を許してしまいます。54分、メヂムリエのMFピシュコールに25mのミドルシュートを決められて1点差に縮められると、62分、DFチェリシュチャクの右クロスにFWペライッツァにヘディングシュートを決められて同点。更に67分には先ほどと同様にチェリシュチャクの右クロスにFWエリオマールがヘディングシュート。これはハイドゥクのGKトミッチが好反応で逆転ゴールを逃れます。
その後はハイドゥクが総攻撃を掛けるも、シュートはことごとくGKバノヴィッチの正面か、枠を捕らえきれずに3-3のドローで終了。82分にDFフルゴヴィッチが負傷退場したのですが、まだ交替枠が一人余っているというのにヤルニ監督はフルゴヴィッチが戻ると考えて誰もピッチに送らず、終了まで一人少ない状態で戦い続けるというお粗末な采配を見せています。

今節で問題になったのは、テレビ放映もされた2位リエカvs.8位ザグレブの対戦でした。
Sciro 試合は7分、MFムイジャからの縦パスを受けたMFブルクリャチャが決めて先制し、その後はリエカの反撃を食い止め続けたものの、75分、リエカのクロスボールにザグレブのDFイヴァンコヴィッチがハンドを取られてしまいます。映像では手ではなく身体にボールが当たっている上、ハンドを取るにしてもFWヂャロヴィッチがヘディングを空振りしたボールが、手を下げた状態のイヴァンコヴィッチに当たっただけであり、到底ハンドにはならない場面。PKをヂャロヴィッチが決めて同点に追いつかれると、ロスタイムにはゴール前に放り込まれたボールをザグレブGKストイキッチがキャッチミス。ヂャロヴィッチにバイシクルで逆転ゴールを決められ、ザグレブはリエカに1-2と敗れてしましました。
降格ゾーンが近づいてきたザグレブにとっては死活問題であるため、ブラジェヴィッチ監督(写真)やメディッチ会長は黙っておらず、ヴチェミロヴィッチ主審を公に批判。背後に犯罪グループの存在すら指摘しました。今季はやたらと誤審が多く、その誤審が試合結果に大きく左右しているため、クロアチア・サッカー協会の審判委員会のディドヴィッチ会長が辞任を提出するまでに至っています。

全試合の結果はこちら。

Zadar - Cibalia Vinkovci 1:1
0:1  7' Bagaric (PK)
1:1 37' Tomasov

Varteks Varazdin - Slaven Belupo 1:1
1:0 22' Mumlek (PK)
1:1 78' Vrucina

Sibenik - Inter Zapresic 1:1
1:0  6' Vitaic
1:1 42' Gulic

Hajduk Split - Medimurje 3:3
1:0 17' Cernat
1:1 28' Darmopil
2:1 40' Kalinic
3:1 50' Verpakovskis
3:2 54' Piskor
3:3 62' Peraica

Rijeka - Zagreb 2:1
0:1  7' Brkljaca
1:1 75' Dalovic (PK)
2:1 90' Dalovic

Dinamo Zagreb - Osijek
1:0 33' Ognjenovic

【順位】
1位…ディナモ・ザグレブ(勝点45)、2位…リエカ(33)、3位…ハイドゥク・スプリト(27)、4位…スラヴェン・ベルーポ(27)、5位…ザダール(22)、6位…チバリア・ヴィンコヴチ(20)、7位…オシエク(18)、8位…シベニク(17)、9位…インテル・ザプレシッチ(17)、10位…ザグレブ(16)、11位…ヴァルテクス・ヴァラジディン(14)、12位…メヂムリエ(10)

【得点】
12ゴール…カリニッチ(ハイドゥク)、ヂャロヴィッチ(リエカ)
9ゴール…モドリッチ(ディナモ)、ロヴレク(ザグレブ)
8ゴール…テルケシュ(ザダール)、マンジュキッチ(ディナモ)
7ゴール…シャラノヴィッチ(メヂムリエ)、ヴィタイッチ(シベニク)、ヴコイェヴィッチ(ディナモ)

【アシスト】
6アシスト…マンジュキッチ(ディナモ)、ムムレク(ヴァルテクス)、ブーレ(リエカ)、ツェルナト(ハイドゥク)
5アシスト…モドリッチ(ディナモ)、ジュパン(ザダール)、シャルビーニ(リエカ)、マルチッチ(チバリア)
4アシスト…クーケッツ(インテル)、ヴルチーナ(スラヴェン)、ケーリッチ(チバリア)、ムイジャ(ザグレブ)

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更に前になりますが、11月7日にはクロアチア・カップ準々決勝第1戦が行われています。
インテル・ザプレシッチとホームで対戦したハイドゥク・スプリトは、FWカリニッチのPKとDFペライッチのヘディングシュートで前半2-0とリードしたものの、後半72分にFWシヴォニッチがMFグルグロヴィッチのアシストからシュートを決めて2-1。最小リードで第2戦を迎えることになりました。
ヴァルテクス・ヴァラジディンはホームでチバリア・ヴィンコヴチを4-0と一蹴。
唯一2部でベスト8まで勝ち上がったセゲスタは、ザグレブに押されながらもスコアレスドローに終わっています。

Hajduk Split - Inter Zapresic 2:1
1:0  3' Kalinic (PK)
2:0 42' Pelaic
2:1 72' Sivonic

Varteks Varazidin - Cibalia Vinkovci 4:0
1:0  5' Mumlek (PK)
2:0 19' Prahic
3:0 37' Mujanovic
4:0 67' Semler

Segesta - Zagreb 0:0

Slaven Belupo - Dinamo Zagreb (12月12日か16日or17日に延期)

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クロアチア代表は11日からスロベニアのチャティジュにて合宿をスタート。ハイドゥクのFWカリニッチが怪我のため、ディナモからFWマンジュキッチが代わりに選出されました。しかし、マンジュキッチは寝違えて首を痛め、ペトリッチは前節の試合で脳震盪を起こしているため、100%計算できるのはエドゥアルドとオリッチのみという状況です。
もっと深刻なのはU-21代表。カリニッチとマンジュキッチが上記の理由で計算できず、怪我のためMFイリチェヴィッチ、MFシャルビーニ、MFケーリッチも召集されず。合宿に参加しているFWタディッチ、FWプラヒッチも怪我。U-21欧州選手権予選突破の鍵を握るギリシャ戦が控えているだけにラディッチ監督も頭が痛いところです。

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2007年11月14日 (水)

UEFAカップ/ディナモ、バーゼル相手に悔しいドロー

対バーゼル戦は撮影取材をしたものの、仕事の関係で更新が遅れてしまいました。遡って報告します。

11月8日、UEFAカップのリーグ・ラウンド第2節が行われました。第1節は休みだったディナモは、バーゼルとホームで対戦。満員までいかないものの、25000人の観客がマクシミール・スタディオンを埋め尽くしました。

Smodric ディナモはFWバラバンとMF/DFミキッチが怪我のために欠場したものの、固定化されつつあるメンバーで挑みます。右MFは好調のグエラがサミールに代わって先発出場しました。システムはいつもの4-2-3-1です。
GKコッホ-DF(右から)エトー、ドゥルピッチ、シルデンフェルド、チャレ-MFヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュ-グエラ、マンジュキッチ、モドリッチ-FWショコタ

一方のバーゼル。グロス監督はグラスホッパーを指揮していた1997年にチャンピオンズ・リーグ予備戦でディナモと対戦しており、ザグレブでは4-4で引き分けたものの、チューリヒでは0-5と完敗しています。そのグロス監督が「時代が変わり比較するのは難しいが、プロシネチュキがいた1997年のディナモよりも今のディナモの方が強い」と評価していました。台所事情は明るくなく、DF中田、MFカルリトスを怪我で欠き、MFフッケルは前節のヤングボーイズ戦で肘打ちを受けて欠場。以下のメンバーでスタメン(4-1-4-1)を構築してきました。
GKコスタンツォ-DFザンニ、マイストロヴィッチ、マルク、ホデル-MFエルギッチ-デゲン、チッパーフィールド、エドゥアルド、カイセド-FWシュトレラー

ヴェルダー・ブレーメンと互角に戦い、アヤックスを延長で下してきたディナモは、これまで欧州カップ戦で染み付いたコンプレックスを払拭するような攻撃サッカーを展開します。左サイドからモドリッチが組み立て、アグレッシブな動きが持ち味のマンジュキッチもDF陣を撹乱。ボランチのポクリヴァチュとヴコイェヴィッチも前線へと積極的に攻め上がります。
Setto 最初のチャンスは8分、ポクリヴァチュが中央から鋭いミドルシュートを放ち、GKコンスタンツォが辛うじてセーブ。弾かれたところをショコタが詰めますが、オフサイドを取られます。
10分にはモドリッチがDFラインの背後のスペースを突く右サイドのエトーにパスを通すと、エトーは追いかけるホデルを背にしながら対角線にシュート(写真)。しかし、ボールはポストを逸れ、ファーに突っ込んだヴコイェヴィッチもボールに届かきません。
更には13分、ポクリヴァチュから縦のロングパスが二人のストッパーを追い抜いたマンジュキッチに通り、GKと一対一になるものの、頭上を狙ったループシュートはクロスバーを越えてしまいました。その1分後にもモドリッチからスルーパスがエトーに通り、完璧なセンタリングが中央でフリーのショコタに通るもののボレーシュートに失敗。ディナモは立て続けに決定機を逃し、スタンドからも溜息が漏れます。
Smandzkic 攻め込まれっ放しだったバーゼルも17分、フリースローをヘディングで繋ぎ、中央からカイセドが強烈なボレーシュート。ボールはGKコッホの正面で難を逃れます。バーゼルはこのシーンで息を吹き返し、組織立った守備で体勢を整えはじめ、セットプレーやカウンターから好機を見出します。
しかしピッチ上でのディナモの優勢は変わらず、35分にはカウンターから4対3の形を作るものの、マンジュキッチ(写真)があっさりとシュートを打ってしまい、得点に繋がりません。
ロスタイムにはモドリッチから右サイドのエトーに再びパスが通り、エンドラインからのマイナスの折り返しが中央でフリーのマンジュキッチに。普段ならば決められるシュートをまたしてクロスバーの上へと吹かしてしまいました。更にモドリッチからのピンポイントのロングパスがグエラに通り、彼もループシュートを狙ったもののクロスバーの上に。前半だけで12本のシュートを放ち、うち枠内シュートが6本あったのにもかかわらず、ディナモは得点を奪えないまま前半を終えます。

後半も前半と同じくバーゼルが自陣に引き、ディナモが押し込む展開に。52分にグエラからの浮き球のパスがDFの背後に入ったマンジュキッチに通るものの、今度はマンジュキッチは打ちに行かずに左のショコタにパスを試み、失敗してしまいます。
Svukojevic 57分にはモドリッチの右CKからショコタがヘディングで繋ぎ、ニアポストでヴコイェヴィッチが合わせるものの、ボールは左ポストをわずかに逸れていきます(写真)。
63分にディナモはグエラに代えてサミール、75分にはショコタに代えてタディッチを入れましたが、二人ともジョーカーになれるタイプの選手ではなく、バーゼルの堅い守備を破ることはできません。
78分、左サイドのモドリッチから逆サイドの裏へ走り込むマンジュキッチにパスが通り、DFを背にしながらエリア内に入ると同時にシュートするものの、ボールはGKコンスタンツォの足に。アヤックス戦ではヒーローだったマンジュキッチのブレーキがこの試合の誤算でした。
ゴールに嫌われ続けたディナモを象徴するシーンはロスタイム、カルロスの右クロスにファーポストでヴコイェヴィッチがフリーの状態で合わせたものの、ボールは右ポストを叩いてしまいます。全ての面においてバーゼルを凌駕しながらも、ディナモはスコアレスドローに終わりました。

試合後、ディナモのイヴァンコヴィッチ監督は
「バーゼル相手に素晴らしい試合をし、多くのチャンスを作り、完全にゲームをコントロールした。しかし、残念ながら運がなかった。運はスポーツを構成する一部分とはいえね。これだけのチャンスを失敗するのは不可能に近いよ。勝点3を奪えなかったのは残念だが、プレーそのものや試合内容から次のラウンドに私たちが勝ち進む根拠が十分にあることを示唆するものだった。もちろん今日勝利していれば楽だったわけだが、勝ち進むほどの実力があることを十分に見せ付けられたと思う。」
Sergic バーゼルのグロス監督は
「勝点1を得るまでには多くの運が必要だった。最後の15分は組織立った守備で良いプレーができ、ディナモのプレッシャーに良く耐えた。攻撃面では創造性を余り見せられなかったが、怪我人の多さを考えれば仕方のないことだ。この勝点はとても重要だよ。」
とコメントしています。
またバーゼルのキャプテンであり、この日はフッケルに代わってボランチを任されたエルギッチ(写真右)は
「これだけのプレーを今夜のディナモはしたというのに、ディナモはアウェーの方が良いプレーをすると聞いている。もし本当にアウェーの方が良いのならば、相手チームには"幸運を祈る"としか言えないね。」
と印象深いコメントを残しています。

同グループではレンヌ(フランス)とブラン(ノルウェー)が1-1のドロー。試合数の差はあるとはいえ、ディナモは3位につけています。
1位…バーゼル(勝点4/2試合)、2位…ハンブルガーSV(勝点3/1試合)、3位…ディナモ・ザグレブ(勝点1/1試合)、4位…レンヌ(勝点1/2試合)、5位…ブラン(勝点1/2試合)

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2007年11月 5日 (月)

クロアチア・リーグ第15節

11月3日、クロアチア・リーグ第15節が行われました。

Simgp7501 木曜日にUEFAカップのバーゼル戦を控えるディナモ・ザグレブは、6位チバリア・ヴィンコヴチとアウェーにて対戦しました。
チバリアは第13節にリエカを2-0で倒し、前節はハイドゥクとアウェーで引き分け。両サイドのMFバガリッチとケーリッチのU-21代表コンビ、5部リーグのクラブから発掘されたFWマルチッチ、スラヴェン・ベルーポから今季に移籍したベテランFWドディクらが中心の手堅いチームです。
7分、バガリッチのCKにペナルティエリア中央のMFスティデノヴィッチがヘディングシュートをしますが、左ポスト際に立っていたディナモDFのエトーがラインを割らせずクリアします。
ディナモも負けじと15分、サミールが放ったミドルシュートは枠を捕らえますが、GKブルツサがパンチングで逃れます。
先制点は21分、MFモドリッチの左CKのニアにいたFWショコタが触ると、ボールはゴール前で跳ね上がり、最後はMFヴコイェヴィッチがヘディングで押し込んでディナモが先制します。
しかしチバリアも44分、MFメドヴィドの左クロスボールがDFシルデンフェルドの頭上を越え、ファーの位置にて頭から飛び込んだマルチッチがヘディングシュートを決めて同点に追いつきます。
後半に入り、イヴァンコヴィッチはサミールに代え、先の試合で活躍したMFグエラを投入。その采配がスバリと当たります。50分、メドヴィドがルーズボールを誤って自陣ゴールの方向に蹴り込んでしまったところをグエラが奪い、そのままドリブルでシュートを決めて2-1とリードします。
ゲームの分かれ目となったのは77分、ディナモのGKコッホがDFラドティッチをペナルティエリアで倒してPKとなります。キッカーのバガリッチは左下隅を狙ったものの、コッホがコースを読んでセーブ。このままディナモが逃げ切り、難敵を退けています。

3位ハイドゥク・スプリトはアウェーで7位オシエクと対戦しています。
ピッチの状態が悪く、ボールの流れが滞る中で、前半はハイドゥクがペースを握ります。最初のチャンスは5分、FWカリニッチが3人に囲まれながらも右へと突破し、最後はペナルティエリアでシュートしますが、GKスケンデルが足でクリアします。
オシエクも9分、FWプリモラッツが18mの位置から直接FKを狙ったものの、ハイドゥクGKトミッチが好セーブでゴールを割らせません。
前半最後のハイドゥクのチャンスは44分、MFチェルナトのゴール前に落ちる鋭い右FKにFWヴェルパコブスキスが突っ込んだものの、再びスケンデルが好反応でセーブします。
後半に入り、オシエクも攻勢を見せましたが、お互いが大きなチャンスを作ることはできず。74分、ハイドゥクのDFフルゴヴィッチが25mの強烈な直接FKを放ったものの、これまたスケンデルがセーブ。
このままスコアレスドローと思いきや、試合が動いたのは後半ロスタイム。MFルビールの前線へのロングボールに、スクランブルで上がったDFトゥドールがエリア内にて左のサブリッチにヘディングで繋ぐと、そのまま折り返しでもらったボールをトゥドールがゴール右へと蹴り込みます。これが決勝点となり、ハイドゥクが1-0と貴重な勝利を収めました。
復帰したトゥドール、ディナモ・キエフからレンタルされたサブリッチ、ツェルナト、ヴェルパコブスキスの3人といったタレントが活躍したことで、ハイドゥクも上昇気流に乗れていけそうです。

全試合の結果はこちらです。

Zagreb - Varteks Varazdin 0:0

Medimurje - Rijeka 0:1
0:1 48' Dalovic

Cibalia Vinkovci - Dinamo Zagreb 1:2
0:1 20' Vukojevic
1:1 44' Malcic
1:2 50' Guela

Slaven Belupo - Sibenik 1:0
1:0 63' Poljak

Inter Zapresic - Zadar 2:1
0:1 36' Mitrovic
1:1 61' Gulic
2:1 65' Sivonjic

Osijek - Hajduk Split 0:1
0:1 Tudor 90'

【順位】
1位…ディナモ・ザグレブ(勝点42)、2位…リエカ(30)、3位…ハイドゥク・スプリト(26)、4位…スラヴェン・ベルーポ(26)、5位…ザダール(21)、6位…チバリア・ヴィンコヴチ(19)、7位…オシエク(18)、8位…ザグレブ(16)、9位…シベニク(16)、10位…インテル・ザプレシッチ(16)、11位…ヴァルテクス・ヴァラジディン(13)、12位…メヂムリエ(9)

【得点】
11ゴール…カリニッチ(ハイドゥク)
10ゴール…ヂャロヴィッチ(リエカ)
9ゴール…モドリッチ(ディナモ)、ロヴレク(ザグレブ)
8ゴール…テルケシュ(ザダール)、マンジュキッチ(ディナモ)
7ゴール…シャラノヴィッチ(メヂムリエ)

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2007年11月 3日 (土)

クロアチア・リーグ第14節/クロアチア代表メンバー発表

10月31日、クロアチア・リーグ第14節が行われました。

首位を独走するディナモ・ザグレブは、10位インテル・ザプレシッチとホームで対戦しました。
MFモドリッチは前節のザダール戦で蹴られた際の足の腫れが残るために欠場。代わりにコートジボアール人のグエラが左MFとして先発出場しました。
開始から15分間は攻撃の組立てに工夫が見られないディナモでしたが、モドリッチに代わる司令塔としてサミールやグエラがゲームを演出。先制点は19分、DFカルロスが左サイドをペナルティエリアを切り裂き、エンドラインから中央に折り返したところにサミールが押し込みます。
Sguela その3分後にはグエラ(写真左)がバイタルエリアから左足を振り抜くと、ボールはゴール右下隅に突き刺さり、グエラにとっての公式戦初ゴールとなります。
更に2分後、MFポクリヴァチュから左サイドでボールを受けたMFマンジュキッチが、ペナルティエリア外の位置からボールを内側に巻いての爽快なシュートを決め、早くも3-0とリードを広げます。
ディナモの猛攻は留まらず、33分、グエラの左からのアーリークロスにFWショコタがボレーシュートを叩き込んで4-0。ショコタは復帰して以来、4試合連発と絶好調をキープしています。
後半は交替もあってテンポが落ちたとはいえ、61分にMFチャゴとのワンツーで中央を抜けたポクリヴァチュがグラウンダーでのミドルシュートを放って5-0。エースのモドリッチ抜きとはいえ、選手層の厚さと、国内リーグでは無敵な強さを誇ることを見せつけました。

3位ハイドゥク・スプリトは6位チバリア・ヴィンコヴチとホームで対戦しました。
監督デビューを勝利で収めたヤルニ新監督ですが、現在国内でトップスコアラーのカリニッチが累積警告のため計算に入れられず。代わりにルカビナを先発出場させ、また怪我から復帰したDFトゥドールもピッチに送りました。
試合は開始8分、DFフルゴヴィッチが左サイドを突破し、中央へ折り返したところをMFルビールが倒れ込みながらGKの左脇を抜けるシュートを決め、ハイドゥクが先制します。
ハイドゥクがゲームのイニシアティブを握りましたが、チバリアも16分、FWマルチッチがスルーパスを送ったところに、飛び込んだMFケーリッチがトゥドールをフェイントでかわし、GKとの一対一に持ち込んだものの、シュートを吹かしてしまいます。
35分にはルビールから理想的な縦パスがルカビナに通るものの、ルカビナは飛び出したGKの頭上を遥かに越えるシュートを打ってしまいました。
Sverpakovskis 雨中の低調な試合だったとはいえ、再び試合が動いたのは57分、MFラダスからノートラップで右クロスが入るとハイドゥクDFは誰もクリアに行くことはなく、ボールはケーリッチの足に触れ、方向が少し変わったところに併走したマルチッチが押し込んでチバリアが同点に追いつきます。
その後はお互いが好機を潰していきますが、76分、チバリアはDFメドヴェドの左クロスに中央に飛び込んだマルチッチが合わせて逆転に成功。この日2ゴールのFWマルチッチは昨季まで5部リーグでプレーしていところを、チバリアのスカウトが発掘した26歳の選手です。
しかしながらハイドゥクも86分、DFペライッチの右クロスが相手DFに当たったところに途中交替のFWヴェルパコヴスキス(写真)がニアにヘディングで飛び込み、彼自身のハイドゥク初ゴールが貴重な同点ゴールとなります。試合はそのまま2-2で終了。ハイドゥクにとってはカリニッチ欠場が大きな痛手となりました。

全試合の結果はこちら。

Sibenik - Zadar 0:0

Dinamo Zagreb - Inter Zapresic 5:0
1:0 19' Sammir
2:0 22' Guela
3:0 24' Mandzukic
4:0 33' Sokota
5:0 61' Pokrivac

Hajduk Split - Cibalia Vinkovci 2:2
1:0 8' Rubil
1:1 57' Malcic
1:2 76' Malcic
2:2 83' Verpakovskis

Varteks Varazdin - Medimurje 2:0
1:0 39' Mujanovic
2:0 88' Papa

Slaven Belupo - Zagreb 1:0
1:0  1' Jajalo

Rijeka - Osijek 1:1
0:1 14' Hrncevic
1:1 45' Dalovic

【順位】
1位…ディナモ・ザグレブ(勝点39)、2位…リエカ(27)、3位…ハイドゥク・スプリト(23)、4位…スラヴェン・ベルーポ(23)、5位…ザダール(21)、6位…チバリア・ヴィンコヴチ(19)、7位…オシエク(18)、8位…シベニク(16)、9位…ザグレブ(15)、10位…インテル・ザプレシッチ(13)、11位…ヴァルテクス・ヴァラジディン(12)、12位…メヂムリエ(9)

【得点】
11ゴール…カリニッチ(ハイドゥク)
9ゴール…モドリッチ(ディナモ)、ロヴレク(ザグレブ)、ヂャロヴィッチ(リエカ)
8ゴール…テルケシュ(ザダール)、マンジュキッチ(ディナモ)
7ゴール…シャラノヴィッチ(メヂムリエ)、
6ゴール…ジュパン(ザダール)

【アシスト】
6アシスト…マンジュキッチ(ディナモ)、ムムレク(ヴァルテクス)
5アシスト…モドリッチ(ディナモ)、ツェルナト(ハイドゥク)、ジュパン(ザダール)、シャルビーニ(リエカ)
4アシスト…ブーレ(リエカ)、クーケッツ(インテル)、マルチッチ(チバリア)、ヴルチーナ(スラヴェン)、ケーリッチ(チバリア)

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11月2日、クロアチア代表監督のスラヴェン・ビリッチが、マケドニア戦(11月17日・スコピエ)、イングランド戦(11月21日・ロンドン)における代表メンバー23名を発表しました。
イゴール・ブダンとボシュコ・バラバンの二人のFWが怪我していることもあり、国内リーグ得点王のニコラ・カリニッチを再び召集。バラバンは復帰の目処が立てば代表に加わり、マケドニア戦で本大会出場が決まればカリニッチはU-21代表に帰される可能性があるようです。また累積警告でマケドニア戦に出場できないMFイェルコ・レコが外れ、怪我のためしばらく外れていたDFフルヴォイエ・ヴェイッチが召集されています。

GK:
スティペ・プレティコサ (スパルタク・モスクワ)
ヴェドラン・ルニェ    (ランス)
マリオ・ガリノヴィッチ  (パナシナイコス)
DF:
ダリオ・シミッチ     (ACミラン)
ロベルト・コヴァチ    (ボルシア・ドルトムント)
ヨシップ・シムニッチ   (ヘルタ・ベルリン)
ヴェドラン・チョルルカ  (マンチェスター・シティ)
ダリオ・クネジェヴィッチ (リボルノ)
ディノ・ドゥルピッチ    (ディナモ・ザグレブ)
フルヴォイエ・ヴェイッチ (トムスク)
MF:
ニコ・コヴァチ           (レッドブル・ザルツブルク)
ダリヨ・スルナ         (シャフタール・ドネツク)
マルコ・バビッチ        (レアル・ベティス)
ニコ・クラニチャール     (ポーツマス)
ユーリツァ・ヴラニェシュ   (ヴェルダー・ブレーメン)
ルカ・モドリッチ       (ディナモ・ザグレブ)
ダニエル・プラニッチ     (ヘーレンフェーン)
イヴァン・ラキティッチ    (シャルケ04)
オグニェン・ヴコイェヴィッチ(ディナモ・ザグレブ)
FW:
ムラデン・ペトリッチ     (ボルシア・ドルトムント)
イヴィツァ・オリッチ     (ハンブルガーSV)
エドゥアルド・ダ・シルヴァ  (アーセナル)
ニコラ・カリニッチ     (ハイドゥク・スプリト)

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