ディナモ、欧州から敗退/UEFAカップ
20日、UEFAカップのリーグラウンドの最終節「レンヌvs.ディナモ・ザグレブ」がレンヌの本拠地、ルテ・ドゥ・ロリアンで行われました。
3試合を終えて勝点1しか取れていないディナモは、レンヌ相手に2点差以上の勝利を収めればグループリーグを3位で突破。一方のレンヌも勝点1しかなく、ディナモ相手に3点差以上の勝利を収めれば3位でグループリーグ突破。お互い厳しい条件であり、それ以外の結果ならば伏兵のブランが3位でグループリーグ突破となります。
これまでは週2試合ペースで試合をこなして疲れが顕著だったディナモも、今回は10日以上の準備期間がありました。失態続きのDFシルデンフェルドがスタメンから外され、センターバックにはカルロスが起用。またアヤックス戦の再現とばかりFWにはバラバンではなくてタディッチを起用してきました。システムはいつもの4-2-3-1です。
GKコッホ-(右から)DFエトー、ドゥルピッチ、カルロス、チャレ-MFヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュ-サミール、マンジュキッチ、モドリッチ-FWタディッチ
一方のレンヌは国内リーグで6連敗と低迷中。ドレオッシ監督が解任され、17日、昨季にはパリ・サンジェルマンを率いていたラコンブが新監督に就任しました。メンバーは以下のようです(4-2-3-1)。ちなみに元浦和のエメルソンは怪我でベンチにも入っていませんでした。
GKププラン-DFファンニ、ハンソン、メンサー、ソルラン-MFシェイル、エムビア-ルロワ、パジ、ヴィルトール-FWブリアン
氷点下まで気温が下がり、凍りついたピッチで足を滑らす選手が多い中で、より高いモチベーションを持ったディナモが相手へのプレッシングを強めながら主導権を握ります。3分にはヴコイェヴィッチ、7分にはモドリッチがミドルシュートで相手ゴールを脅かすものの、ゴールは枠を捕らえられず。今季のディナモは欧州の舞台となるとゲームを支配しながら決定力の低さを露呈してきたわけですが、この日も例に漏れずひたすらチャンスを台無しにしていきます。
この試合を最後にディナモを去るのが濃厚なモドリッチは前半に高いパフォーマンスを見せれど、前線で踏ん張れないタディッチ、一対一に脆いサミール、個人プレーに走りがちなマンジュキッチのせいでチャンスをモノにできません。30分にはセットプレーからドゥルピッチが押し込むだけの場面があったものの決められず。レンヌはピッチに適応できないばかりかパスやトラップなどの基本的ミスが目立ち、ロスタイムにヴィルトールが前半唯一のチャンスとばかりシュートを放つもののGKコッホがセービング。前半45分をお互いスコアレスで終えます。
後半に入ると直ぐ、応援に駆けつけた200人ほどのバッド・ブルー・ボーイズ(BBB)から発炎筒が次々と投げ込まれて試合が中断します。ほぼ恒例となった光景でして、またしてディナモはUEFAから罰金を払うことになりました。その後もディナモの優勢は続くものの得点には結びつきません。
50分にドリブルでファンニをかわしたモドリッチが左からシュートを放ちましたが、GKププランの正面。55分にはカウンターから3対1の形を作ったものの、マンジュキッチのお粗末なパスでチャンスを潰します。
しかし、先制点はディナモに転がり込みます。57分、右サイドのエトーがサイドラインで二人を引き付けた状態でマンジュキッチへパス。そのままペナルティエリアに入ったマンジュキッチが中央へと戻すと、そこにヴコイェヴィッチが飛び込んで右足でシュートを決めます。 あと1点で38年ぶりの欧州カップ戦の年越しを実現するディナモ。しかし、レンヌも諦めずに次々と攻撃のカードを切っていきます。ディナモは65分にサミールに代えてグエラ、77分にはタディッチに代えてバラバンを投入。お互いがあと一発で決まるグロッキー状態のボクサーであるかのように、危ういディフェンスを伴ったカウンター応酬合戦になっていきます。
79分、決定的なカウンターから左サイドを切れ込むマンジュキッチ。正面にはバラバンが詰めていたものの、マンジュキッチはラストパスのタイミングが遅れ、バラバンまでボールが届かず。このチャンスを活かせなかったのが大きな痛手でした。
85分にペナルティエリアでカルロスがモレイラを倒したとしてレンヌがPKを獲得。これでディナモは終わりと思いきや、シェイルが右方向に蹴り込んだボールをGKコッホ(写真)が素晴らしいセーブを見せます。コッホはその2分後にもシェイルのミドルシュートをビッグセーブで止め、若い選手たちを鼓舞します。イヴァンコヴィッチ監督は最後のカードとしてFWショコタを投入。しかしその直後、トメールが左サイドからクロスボールを上げると、正面でエムビアがボレーシュートをゴール右上隅に放ち、これにはさすがのコッホも反応できずに1-1。このゴールがディナモの欧州での終焉を告げました。ロスタイムは5分あったとはいえ、またしてコッホが決定機をセーブした以外は見せ場がなくタイムアップを迎えました。
ディナモのイヴァンコヴィッチ監督は
「プレー条件が良くなかったとはいえ、私の選手たちは相手よりも上手く適応していた。レンヌは我々の手のひらにある状態で、こちらが多くの良いチャンスを作ったのにもかかわらず、ラストパスや速いリアクションが私たちには少し欠けていた。例えば1-0の状況でマンジュキッチはバラバンにラストパスする機会があった。あれで2-0になっていれば、試合は全く違うものになっていただろう。また審判も試合を通して相手ばかり優遇していたことを言わねばならない。
しかし、我々は欧州の舞台で12試合をこなした。これはチームにとって大きな学校だったよ。スタメンに名を連ねる選手たちが何歳かを見てくれ。彼らはチームにおける大きな資本だ。(リーグラウンドの)4試合全てで我々はクオリティを示したと思う。バーゼルやブランよりも我々の方が優れていただけに、2試合を終わって勝点6を得ていなくてはならなかったのだよ。ハンブルガーSV相手でも引分けにしなくてはならないのに試合の最後でミスをしてしまった。そしてレンヌ戦でも我々が優れていただけに勝利せねばならなかった。経験不足だと言うことはできるだろうが、今はそうは言いたくない。」
とコメントしています。
ディナモの多くの選手はノーコメントを貫く中、キャプテンのモドリッチ(写真)は
「80分間は僕たちの方が良かった。しかし、チャンスを決められないまま、またして最後にゴールを食らい崩れてしまった。ピッチは非常に硬く凍っていただけにしっかりと立つことすら難しかった。運が足りなかったかもしれないが、僕は運ばかりを引き合いに出したくはない。なぜなら、相手がノックダウンの状態だったケースが幾らでもあったからだ。集中力もしくは運の欠如かもしれないが、僕にはよく分からない。残念ながら、グループリーグを通過でなきかったということだけが記憶に残るだろう。」
と口にしています。
これで今季のディナモに対して欧州の門は閉ざされました。「あの場面で決めていれば…」「あのミスをしなければ…」と悔やむシーンは幾つも浮かんできます。もし決定力に優れたエドゥアルドが移籍せずにディナモに残っていたのならば、UEFAカップでの年越しどころかチャンピオンズリーグ本戦も夢でなかったかもしれません。
「チョルルカが残っていたら…」「ロベルト・コヴァチが獲得できていたら…」などタラレバは尽きないわけですけど、それほど今季は期待が持てるチームだったのも事実です。これでチームの至宝であるモドリッチが離れれば、来年以降にディナモが欧州で活躍するチャンスはより小さくなるかもしれません。
[最終順位]
1位…ハンブルガーSV (勝点10)
2位…バーゼル (勝点8)
3位…ブラン (勝点4)
4位…ディナモ・ザグレブ(勝点2)
5位…レンヌ (勝点2)
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