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2007年12月 7日 (金)

UEFAカップ/ディナモ、HSV相手に力尽きる

12月5日、UEFAカップのリーグラウンド第4節が行われました。
Van_der_vaart_i_carlosバーゼルに引分け、ブランにまさかの敗北と、最悪のスタートを切ったディナモ・ザグレブはグループ最強のハンブルガーSVとホームのマクシミール・スタディオンで対戦しました。これまでの揮わない結果と底冷えもあって観客は2万人に留まりました。

ディナモ・ザグレブは前節のブラン戦でDFシルデンフェルドがレッドカード。彼の穴をブラジル人のカルロスが埋め、システムはいつもの4-2-3-1で挑みました。
GKコッホ-DF(右から)エトー、ドゥルピッチ、カルロス、チャレ-MFヴコイェヴィッチ、ポクリヴァチュ-サミール、マンジュキッチ、モドリッチ-FWバラバン

一方のハンブルガーSVは残り2試合で勝点1を取ればグループリーグ突破。それでもエースのMFファン・デル・ファールト、そして元ディナモのFWオリッチを起用。ローテーションをしているとはいえ、各国の代表選手を揃えてきました(システムは4-2-3-1)。
GKロスト-ボアテング、ラインハルト、マタイセン、アトゥバ-MFコンパニ、デ・ヨング-カステーレン、ファン・デル・ファールト、ヤロリム-FWオリッチ

Van_der_vaart 個人能力の高さと組織力が融合したハンブルガーを相手にしては、これまでのようにディナモがゲームをコントロールすることはできません。爆発的なスプリント能力で攻守両面でかき回すオリッチは敵にすると非常に嫌な存在であり、同時に欧州屈指のセカンドトップであるファン・デル・ファールト(写真)も常にケアせねばなりません。またディフェンスも手堅く、ディナモのプレーメーカー、モドリッチがボールを持ったところでも素早く寄せられてしまいます。ディナモは引分けも視野に入れていたとはいえ、普段より守備的なプレーを強いられました。
試合の序盤はディナモが中盤でボールをあっさりと失うことで、ハンブルガーに攻撃を畳み掛けられる場面が見られます。最初のチャンスは18分、ハンブルガーのヤロリムが左サイドでアトゥバのパスを受けると、ペナルティエリア外から右足のミドルシュート。ドライブが掛かった弾道はクロスバーを叩き、ディナモは難を逃れます。23分にはボアテングのアーリークロスにオリッチがヘディングシュートを狙いますが、これはGKコッホがクリアします。
Modric チャンスを見出せないディナモでしたが、25分辺りから次第にモドリッチ(写真)を中心にボールが回るようになります。28分、左サイドからモドリッチが中央でフリーのヴコイェヴィッチにパスを送ると、ヴコイェヴィッチは得意のミドルシュートを放ちますが、ボールはポストの左に。1分後にもモドリッチがヒールでお膳立てしたところにポクリヴァチュがミドルシュートを狙ったものの、GKロストの正面を突いてしまいます。31分にはモドリッチの左FKがいい角度でゴール前に入りますが、バラバンに届く前にアドゥバがクリアしてしまいました。その1分後にはエトーが右サイドからシュートを放つものの、これもポストを逸れてしまいます。
ハンブルガーは38分にコンパニが中央からグラウンダーのミドルシュートを放ちますが、これはGKコッホが好反応でゴールを守ります。42分にはファン・デル・ファールトの左CKからオリッチがヘディングシュートを狙ったものの、これもGKコッホがキャッチ。
前半終了間際、ディナモは正面20mの位置で直接FKを得るものの、バラバンのグラウンダーのシュートは脅かすことなくGKロストにキャッチされました。

後半は前半と同じ戦いが続きます。ディナモは攻めに向かうものの、引分けでも望みがあることが頭にあるせいか無理なリスクを冒しません。そのような戦いではハンブルガーのディフェンスを打ち破るのは容易ではありませんでした。
Cale ハンブルガーは60分、ファン・デル・ファールトの鋭い右FKがGKコッホがセーブされ、その1分後にもファン・デル・ファールトの左FKからマタイセンが放ったヘディングシュートは左ポストを叩きます。
ディナモはバラバンに代えてタディッチを投入し、スピードアップを図りましたが、ハンブルガーの堅い守備を前に成す術はありません。それでも69分、マンジュキッチからペナルティエリアへと侵入するモドリッチにパスが通るものの、走りながらのシュートは力がなく、GKロストの正面を突いてしまいます。75分にはタディッチがバイタルエリアで反転してシュートを放つものの、シュートはわずかに左ポストを逸れてしまいます。76分、"攻撃においてモドリッチとマンジュキッチのスペースを広げるため"(イヴァンコヴィッチ監督談)、サミールに代えて守備的MFのヴルドリャクを投入。しかし、逆に相手にスペースを広げてしまい、カウンターで脅かされる場面が増えてきます。
欧州の舞台では常に試合終了間際に力尽きるディナモでありますが、この試合でも同じ光景が繰り返されてしまいました。87分、チャレ(写真上)が無駄なファウルでペナルティエリア左でFKを与えると、ファン・デル・ファールトの左足から繰り出されたボールは弧を描いてゴール前に。ぽっかり空いた中央でデ・ヨングが頭から飛び込んでゴール。集中力が切れたというには、立ち位置からしてお粗末なディフェンスでした。
Penar_hsvaイヴァンコヴィッチ監督は勝利を求めて、ポクリヴァチュに代えてFWショコタを投入。ロスタイム3分間に望みを託しますが、更にお粗末なプレーをチャレが犯します。ハンブルガーのデメルが左サイドをドリブルし、チャレがタックルに一度空振りに終わると、ペナルティエリアに入ったDFデメルに対してチャレが再びタックル。デメルを倒してしまってPKを与えてしまいます。ディナモは若い選手が多くて経験不足は仕方ないにしても、決勝トーナメント進出に得失点差が関連してくるだけに、全くもって有り得ないタックルでした(概して、チャレはサッカー脳が低いプレイヤーでありますが…)。PKを途中交替のMFトロコウスキに決められて0-2。そしてタイムアップ。失望感どころか絶望感が残る試合となってしまいした。

試合後、ディナモのイヴァンコヴィッチ監督は暗い表情で以下のように語りました。
「この試合から多くを期待していただけに失望は理解できる。ハンブルガーの実力は知っていたし、彼らはザグレブでもその実力を見せつけた。けれども我々は敗北に値しなかったと思う。多くの時間帯では互角に戦ったし、前半の終盤は我々の方が良かった。バーゼル戦やブラン戦ほどチャンスがないことは分かっていたし、一つのチャンス、一つのセットプレーで決めなければならない試合だったのだよ。しかし、上手くはいかず、最後には集中力の欠如で敗れてしまった。
グループリーグを勝ち抜けるチャンスがある以上は諦めることはしない。レンヌで奇跡を起こしに行くのだよ。勝利を求めて戦うし、必要な2ゴール差で勝利できるようトライするつもりだ。」
ハンブルガーのスティーブンス監督は
「ディナモのような強いチーム相手に戦うのは非常に難しかった。だから我々はこの勝利に満足しているよ。我々が国際レベルで戦えることを証明した。次のバーゼル戦はプレッシャーがないことから、サポーターのために試合を楽しもうと思う。
ディナモは自分の可能性をかけて戦うと予想していたし、実際そのようにプレーしてきた。こちらがしっかりと組織立てば、彼らがディフェンスを破るのが難しいと分かっていた。ディナモに勝利が必要なのは分かっていただけに、我々は自分のチャンスを待っていた。幸運にもそのチャンスがやってきた、ということだ。」
とコメント。またこれがディナモのユニフォームを着て最後のマクシミールの試合と予想されるモドリッチは
「本当に失望している。僕たちが試合に負けることに値しなかったと思うだけに……。しかし、負けてしまったんだ。セットプレーで失点するまではポジティブな結果だったのに、いつも同じことが起こってしまう。ハンブルガーが特別なチャンスを作れなかったのにね。まだレンヌ戦が残っているけど、2-0で勝利するのは難しいだろう。けれども、僕たちはアヤックス戦を再現したい。あの時だって誰もが僕たちが終わったと考えていた。決してどうなるかは分からないんだ。チャンスがある限りは諦める必要はない。」
Olic_bjezi_od_etta84分にピッチを去る際には拍手で送られたオリッチ(写真)は
「ディナモはセットプレーに対して非常に弱かった。相手選手と離れて立っていたしね。ファン・デル・ファールトは素晴らしいクロスボールがあるし、チームには跳躍に優れた選手が何人もいる。その一つのセットプレーでボールがネットに収まったということだ。僕は嬉しいけど、ディナモには気の毒だよ。ハンブルガーのようなチーム相手に勝利を期待するのは難しかったとはいえね。今日の僕たちは高いリズムでプレーしなかったけれども問題なく勝利できた。ディナモはバーゼル戦とブラン戦で自ら勝ち抜けるチャンスを失ったんだよ。」
とコメントしています。

同日に行われたバーゼルvs.ブラン戦はバーゼルが1-0で勝利し、バーゼルも決勝トーナメント進出を決めました。残り3チームとも決勝トーナメント進出の可能性が残っているとはいえ、ディナモにとってはかなり厳しい条件です。ちなみに勝ち点が並んだ場合は直接対決の結果は加味されず、①得失点差②ゴール数③アウェーゴール数という優先順で順位が決められます。最終節はレンヌとのアウェーマッチですが、ディナモが3位に入るためには2点差以上の勝利が必要。レンヌにも3位の可能性があり、ディナモ相手に3点以上の勝利が必要となります。それ以外の結果ならば、既に4試合を終えているブランが3位に入ることになります。試合は12月20日に予定されています。

1位…ハンブルガーSV(勝点9/3試合)
2位…バーゼル(勝点7/3試合)
3位…ブラン(勝点4/4試合/得点:失点 3:4/アウェーゴール 1)
4位…ディナモ・ザグレブ(勝点1/3試合/得点:失点 1:4/アウェーゴール 1)
5位…レンヌ(勝点1/3試合/得点:失点 1:5/アウェーゴール 0)

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